「Location Data Analyzer」の導入事例 株式会社三松様

280個のビーコンでネック工程まで見える化
~小ロット製造代行、三松流IoT活用術 モデル工場から広がる共創の輪~

  • 台車の動き=モノの流れ 多品種微量生産に必要な工程管理の仕組みとは?
  • マイスターの手を止めるな!現場にしっくりくるデジタル革新
  • 工場全体がショールーム “手が届くIoT”公開中

福岡を拠点に、コア技術である金属加工を軸にした小ロット製造代行サービスを展開している株式会社三松(以下、同社)。「1個からでもお作りする」「品質にこだわる」「納期をきちんと守る」をモットーに、多種多様な業界から700社を超える顧客を開拓してきた。同社では、工場で使用している台車の位置情報管理の仕組みに、パナソニックの在席・所在管理システム「Location Data Analyzer」を採用。そこで、本社工場を訪れ、代表取締役 田名部氏、システム企画担当 中村氏にインタビューした。

◆ビーコンの電波を使って、台車の動きを追跡。台車の動き=モノの流れ=工程を見える化

ビーコンの電波を使って、台車の動きを追跡。台車の動き=モノの流れ=工程を見える化

台車捜索“うろうろタイム”削減

多品種少量型生産形態が注目されている製造業の世界。葉たばこ乾燥機の製造からスタートした同社は、産業構造・市場ニーズの変化をいち早く先取りし、「小ロット製造代行」というビジネスモデルを確立してきた。

株式会社三松 代表取締役 田名部 徹朗氏

株式会社三松
代表取締役 田名部 徹朗氏

「月に約1万件のオーダーをいただいていますが、これは、20年前に比べ30倍の伸び。製品加工では、8~9千種類、部品加工では10万個を生産しています。お客様の業種も大型の半導体装置や通信用基地局ボックスから住宅建材、小さな電子部品のパーツなど多岐にわたります」(田名部氏)

もともとは、金属素材を使った筐体の加工・組立に強みを持っていた同社であるが、筐体の中身の製造やOEM製造代行、設計・意匠分野まで業務を拡大し、顧客の開拓・深耕に成功。さらに、異業種間の技術の媒介を通じて、顧客からの信頼を獲得してきた。たとえば、建材では一般的に使用されている雨仕舞という仕組みを半導体装置メーカーにも提案し、構造強化につながった、といった技術の横展開である。

熱気が立ち込め、金属の打抜音が響き渡る本社工場。ここでは、9つの生産ラインに各技術者が配置され、最新の工作機械によるレーザーカット・プレスや人の手による溶接・塗装などの作業が進行している。

「製品同様、それを運搬する台車も大中小さまざま。今回、台車管理のシステム化に踏み切ったのは、台車に載っているモノの所在をリアルタイムで知りたかったからです。これまでは、『多分このへんにあるだろう』と勘で探していたので、工場内をうろうろする時間のロスが気になっていました」(田名部氏)

◆同社、設計部門の仕事風景

同社、設計部門の仕事風景

一般機械のほか、ロボットやFAシステムなどの設計にも対応。

◆工場内にはさまざまな種類の台車が往来

工場内にはさまざまな種類の台車が往来

工場内の台車は同社のオリジナル。さまざまな大きさ・形状の製品・部品の運搬がしやすいように、工夫されている。

そこで同社は、パナソニックの「Location Data Analyzer」を台車管理システムとして採用。台車に取り付けたビーコンの電波で、台車の位置情報が見える化できるようになった。

「場所によって違いはあるものの、いい線で台車の位置情報を拾えている」

という田名部氏。ただし、同社にとって、現段階の取り組みは、決して最終ゴールではない。

◆「Location Data Analyzer」を用いた台車管理システム

「Location Data Analyzer」を用いた台車管理システム

280の台車に取り付けたビーコンの電波を工場内60箇所に設置された受信機で検知。A1~M5まで区分されたエリアのどの位置に台車があるか、マップ上に表示。また、一日の台車の位置情報を日報(ジャーナル)で提供。使用しているビーコン(プラスチックケース含む)は軽量(約5g)・コンパクト設計(37mm×37mm)のため、台車本体への影響、台車を運搬する人への負担もない。

◆ビーコン受信機の設置に、三松の技術・ノウハウを活用

ビーコン受信機の設置に、三松の技術・ノウハウを活用

軽量のアルミ素材を使用し、同社が製作したビーコン受信機の取り付け台。電波障害を最小限に抑え、高い位置への取り付けやケーブルの取り回しをしやすくするための工夫がされている。

台車の動きで今の工程をつかむ

同社では、1997年に独自開発の生産管理システム「SINS」(Sanmatsu Integrated Network System)を導入。「工番」ごとに、工程や納期などが瞬時に検索できるようになり、生産工程の見える化に大きく貢献した。また、横串検索で、同じ素材を使用する工番を複数抽出し、加工などの作業をまとめて行うなど、効率化にもつながったという。そして現在、生産管理と台車管理システム連携の取り組みがすでに始まっている。

「基本は、工程完了の都度、システムに入力するのですが、リードタイムの長短や技術者の判断によってそのタイミングはまちまち。昨日までの工程であれば、確実に把握できますが、その日、その時間の工程については、システムでは追いきれていませんでした」(中村氏)

しかし今後は、工番と台車ナンバーの紐付けによって、モノの流れ=工程がリアルタイムで把握できるようになる。

「工場は、スムーズにモノが流れていることが大事。滞留しているということは、工場の運営管理に改善すべき点があるということです」(田名部氏)

小ロット製造に対応している同社では、生産管理システムを導入する前は、納期やその時点での工程など、顧客からの問い合わせに対し、工場内を1時間以上走 り回ることもあった。近年、急なオーダーや1個だけの製造が増え、また、ジャストインタイム生産方式をとる顧客からは細かい時間指定や分納など、納期の要求レベルがさらに高くなっているなかで、今回のシステム連携によって、よりタイムリーな対応やロスの削減ができると期待されている。

株式会社三松 企画管理部 システム企画課 課長 兼 金属王事業部 マネージャー 中村 文隆氏

株式会社三松
企画管理部
システム企画課 課長 兼
金属王事業部 マネージャー
中村 文隆氏

◆リアルタイムで工程を見える化し、ネック工程を特定するための仕組み

リアルタイムで工程を見える化し、ネック工程を特定するための仕組み

同社の「超特急=短納期サービス Super Express」では、注文から最短1日で納品を行うため、各工程の作業時間を分刻みで細かく把握する必要がある。現在進めている、台車管理システムと生産管理システムの連携により、リアルタイムで工程進捗状況を見える化することができる。さらに、エリア(工程)ごとの台車の滞留時間から、ネックとなっている工程の特定にもつながり、リードタイムの短縮が期待できる。

デジタルの押し付けで仕事の邪魔をしない

同社では、技術者が数箇所に設置された共有端末で工程完了の報告を行っている。ウェアラブルやタブレット端末を一人一台配布するという方法もあるが、今のところ、その予定はないそうだ。

「操作に不慣れな技術者もいるので、現場になじまないやり方は避けています。それぞれの仕事に集中してもらいたいので、データを取るためのアクションで負荷をかけたくありません」(中村氏)

ICT・IoTシステムを上手に取り込んだ業務改革を推進中の同社だが、やみくもにデジタル化を押し付けることは絶対にしない。技術者が持ち場に専念し、高品質の製品を顧客に提供するための環境を、なによりも重視している。

◆技術者の肌に合わないことは避ける

技術者の肌に合わないことは避ける

技術者は、立ったり、座ったり、しゃがんだり、いろいろな姿勢で作業を行う。「お尻や胸のポケットに端末を入れると、落としたり、壊れたりする危険が」と田名部氏。「以前、ハンディターミナルを使ったこともあったのですが、どうもなじまなかった・・・」と中村氏。台車管理システムの場合は、台車にビーコンを取り付けるため、技術者が違和感やストレスを感じる心配はもちろんない。

◆台車ナンバーの視認性向上、ナンバー入力方法の改善についても現在検討中

台車ナンバーの視認性向上、ナンバー入力方法の改善についても現在検討中

常時たくさんの台車が配置されている台車倉庫。探している台車がすぐに見分けられるように、「自動車のナンバープレートのように台車ナンバーを目立たせる工夫が必要」と田名部氏。また、「キーボードのテンキーだけで入力できるように、台車ナンバーは数字だけにしたほうがいいかもしれない」と中村氏。

◆三松品質を支えるマイスターの手

三松品質を支えるマイスターの手

赤のユニフォームはマイスターの証し。スピーディーかつ、繊細な手作業でバリ取りを行う女性技術者(中央)。激しい火花が散る中、冷静沈着に溶接を行う男性技術者(右)。

モノづくりの現場では職能工の高齢化が進み、技術伝承が難局を迎えているというが、同社では、熟練者による講習会などに力を入れ、技術の向上、後継者の育成につなげている。また、優れた技術者を認定する「三松マイスター」という制度を設け、技能を含む総合評価で、その年のマイスターを決定。マイスターは、技術者たちの憧れの存在である。

このように、マイスターをはじめとする優れた技術者が、遺憾なく力を発揮できるように、同社では、システムと制度や教育の両面でバックアップする体制を敷いている。

お客様のモデル工場に。“手が届くIoT”公開中

製造業における生産性向上の手段として期待が集まるIoT。しかしながら、多くの企業は、まだ瀬踏み状態で、マスメディアなどから連日発信されている一部の情報と現場の実態には温度差がにじむ。

「最終目標に到達するために、まずは一つ試してみないとわからない。今回のシステム導入は、『我々の手が届く、我々なりのIoTって何かな?』と考えた結果、モノの動きを俯瞰することから始めてみることにしました」(田名部氏)

工場全体をショールーム化し、最新の工作機械の稼働状況なども公開している同社では、“三松流IoT活用術”についても顧客に知ってもらおうと考えている。

「我々は自分たちを『小ロット製造代行サービス会社』と呼んでいますが、我々の工場は、アウトプット(製品)を出す場であると同時に、その工程や業務改善の取り組みを見てもらう場でもあると考えています。だから、お客様に代わって、我々自身が実験台になり、システムを使ってみる。我々の工場をお客様にとってのモデル工場にしてほしいのです」(田名部氏)

まさにガラス張りの工場。同社が自身の取り組みを公開することで、多くの企業が貴重なサンプルを手に入れ、一歩を踏み出すことができるのだ。そして、この “共創” の考え方が共感を呼び、三松ファン、パートナーを拡大中だ。

現在進行形の同社の取り組み。パナソニックでも、共創パートナーとして、業務改革、ビジネスの成長のために何ができるのか一緒に考え、ICT・IoTの新しい使い方の提案を続けていく。

◆本社工場にて

株式会社三松 中村氏(左)、株式会社三松 田名部氏(中央)、パナソニック ソリューションテクノロジー株式会社 担当営業(右)

◆チャンピオンデータではなく、普段のデータを

チャンピオンデータではなく、普段のデータを

最新のプレスブレーキ、アマダ社「HG-5020」(左)。ファイバーレーザー、トルンプ社「TruLaser 3030 fiber」(右)。同社では、工作機械メーカーと協業関係を築き、プロット版の段階から最新機器を積極的に使っている。良い所取りの“チャンピオンデータ”ではなく、山あり谷ありの、“普段の使い方”で出るデータをパートナーに開示している。

新工場「SIDセンター」(Sanmatsu Incubation & Development Center)

新工場「SIDセンター」(Sanmatsu Incubation & Development Center)

ビジネスの成長に伴い、設備・人員も増強。インタビュー当時は、新工場「SIDセンター」の建設工事中(竣工予定:2016年11月)だった。SIDセンターでは、設計事務所と製造工場を近接させた工房をイメージしているという。また、ロボットのトレーニングルームや、セミナーなどを行うスペースも用意される予定。

【お客様プロフィール】株式会社三松様

株式会社三松様ロゴ

福岡のほか、ベトナム、中国にも生産ラインを有し、半導体装置、車両部品、医療機器、住宅建材など、さまざまな業界の「モノづくり」を代行。高い技術力と最新のFA・ICTシステムを融合し、金属製品の設計・開発から制御、加工、外注購買、アッセンブリ、品質管理、生産管理まで、一貫生産体制を敷く。さらに、福岡のデザイナーチームとのコラボレーションプロジェクト「金属王」を立ち上げ、文房具や家具、カトラリーなど、コンシューマー向けにデザイン性の高い金属加工製品を提供している。

本社:福岡県筑紫野市
URL:http://sanmatsu.com/
創業:1972年
従業員数:144名(2016年1月時点)

※本文中に記載されている内容は、2016年7月の取材時点での情報です。

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