「ビジネスプロセス変革ソリューション」の導入事例 パナソニック株式会社 アプライアンス社

QRコード付き“スマート金型”による今どき棚卸し術
~高付加価値家電・住宅向け設備機器の工場が取り組むIoT革新~

導入後の効果

  • スマホをかざすだけで棚卸し完了 金型捜索・手書きの負担を軽減
  • 自動認識コード&クラウドプラットフォームでつながる工場
  • 情報・仕事の流れを寸断する障害物をICT・IoTの力で排除

かつては、数多くの総合電機メーカーが商品開発にしのぎを削り、市場を盛り上げてきた家電業界。しかし、ライフスタイルの多様化、消費者嗜好(しこう)の細分化により状況は様変わり。得意分野への選択と集中、高価格帯・低価格帯商品への二極化など、すみ分けが進んでいる。そんな家電業界にあって、パナソニック株式会社 アプライアンス社(以下、同社)の草津工場(滋賀県)が製造する、高機能・高付加価値のエアコンや冷蔵庫などは、消費者から高い支持を得ている。また、草津工場は、家庭向け給湯設備、ビルトイン食器洗い乾燥機、燃料電池、真空断熱材など、あこがれのライフスタイルを支える住宅向け設備機器の製造拠点でもある。このたび草津工場では、金型棚卸し業務の合理化に着手。複数の工場をつなぎ、金型の情報を集約・共有するプラットフォームには、パナソニック ソリューションテクノロジーのICT・IoT技術が活きている。

“あこがれのライフスタイル”を支える商品の製造現場で求められるIoT

あこがれのライフスタイルを提案――。これは、同社が提唱するメッセージの一部である。同社 柏木氏は、同社が生み出す高付加価値家電や、住宅向け設備機器についてこのように語った。

「消費者一人ひとりのライフスタイルに合った商品の使われ方を徹底的に調べ、開発にこだわっています。私たちは、“持っていると自慢できる”そんな商品を目指しています」

機能だけではなく、空間と調和するデザイン性や使用感・・・消費者が望む価値を追求し、それをかなえる商品を製造している草津工場は、いわば同社にとって技術の発信拠点であると同時に、製造の旗艦拠点でもある。

草津工場が製造している高付加価値家電・住宅向け設備機器

草津工場が製造している高付加価値家電・住宅向け設備機器

    左から順番に、

  • 世界初、温度の異なる2つの温風を作り、同時に吹き分けるルームエアコン「Eolia(エオリア)」WXシリーズ / Xシリーズ
  • 寒冷地向け製品にも業界初「温浴セレクト」機能搭載、家庭用自然冷媒(CO2)ヒートポンプ給湯機「エコキュート」FPシリーズ
  • 約マイナス3℃で保存する「微凍結パーシャル」で、肉や魚、常備菜も約1週間鮮度が長持ち パーシャル搭載冷蔵庫 [NR-F672WPV]
  • システムキッチンに溶け込む新デザインのビルトイン食器洗い乾燥機「Kシリーズ」
  • 戸建住宅向け家庭用燃料電池「エネファーム」

今回インタビューを行った、グローバル調達センター 草津購買部のミッションについて伺った。

「私たち調達・購買部門は、お客様からの需要変動に合わせ、現場に必要な資材を常に安定供給することが求められています。パナソニックグループの事業再編に伴い、一時期は購買機能が分散していましたが、2015年に統合。それを機に業務の高位平準化やスピードアップを図り、安定供給だけではなく調達に関わるあらゆるコストを極小化することで利益を生み、経営貢献するのが私たちのミッションである、という共通意識を高めました」(柏木氏)

昨今、業務プロセス変革の手段としてICT・IoTが不可欠であることについては論をまたないが、草津購買部でも、常に新しい技術をリサーチ し、積極的に取り込んでいる。

柏木 盛男 氏

パナソニック株式会社 アプライアンス社
グローバル調達センター 所次長
草津購買部 部長 柏木 盛男 氏

棚卸し業務における「人手」「紙」からの脱却

モノづくりの生命線ともいえる金型。同社の金型の多くは、2,500を超える国内の協力会社に貸与され、量産を支えている。

渡辺 浩幸 氏

パナソニック株式会社 アプライアンス社
グローバル調達センター 草津購買部
購買ソリューション課 主務 渡辺 浩幸 氏

「資産管理上、1年に1回以上すべての金型を棚卸しする必要があります。以前は、金型コードが記載されたアルミ銘板を頼りに、目視によって1面ごとに棚卸しを実施していました。中には2,000面もの金型を管理いただいている工場や、大きいものはバスタブぐらいのサイズ、2~5トンの重さがある金型も数多く存在するため、実際には負担の大きい作業でした。また、量産終了後も、商品供給期間である7~12年もの間は、メーカーの責任として管理を行う必要があります」

と、同社 渡辺氏は語る。

国内だけで約6万面の金型

国内だけで約6万面の金型

プレス用、樹脂成型用、アルミダイカスト用など、大中小さまざまな金型がある。年間3,000面の新しい金型が生まれる一方で、量産を終えた製品の金型は、一定期間の保管を経て、廃棄される。

人手だけの金型棚卸しは「精度と管理労力」にも問題

人手だけの金型棚卸しは「精度と管理労力」にも問題

従来の棚卸しでは、紙の帳票(金型預かり確認書)を協力会社の各工場に配布。必ずしも視認性が高いとはいえないアルミ銘板に記載された金型コードを一つひとつ確認しながら、金型の「あり/なし」をチェック、手書きで記入し、社判を押して、同社に返信するというフローだった。しかし、実際には、帳票の記載内容とは別の場所に金型がある、あるいは協力会社が間違った記載をしてしまう、など正確性にも問題があり、仕方なく再確認することも多かった。

金型管理の課題は、人手だけに頼っている間は解決できない、と考えた同社。

「ならば、人手を介さず、さらに草津工場にいながらにして、遠隔地にある全ての金型の所在把握とチェックを自動で実施できないか?と考え、ICT・IoTを活用した仕組みによって、根本から解決を図ろうとしました」(渡辺氏)

ただし、仕組み化には二つの条件をクリアーすることが必須であった。

「一つは世の中に広く普及しているインフラを利用すること。もう一つは、金型の情報をアプリで簡単に送信し、ログが生成できること。この二つは譲れない条件でした。ただし、いずれもパナソニックグループが保有する技術を使えば実現できるはず。そこで、情報部門担当である当社の業務プロセス革新センター、およびパナソニック ソリューションテクノロジーに提案し、一緒に取り組むことにしました。」(藤井氏)

藤井 博樹 氏

パナソニック株式会社 アプライアンス社
グローバル調達センター 草津購買部
購買ソリューション課 課長 藤井 博樹 氏

身近な技術・デバイスで始めるIoT

仕組みはとても簡単。まず、あらゆるスマホで棚卸しが実施できるようにAndoroid、iOSに対応する専用アプリを開発し、同社が協力会社に無償で提供した。このアプリはQRコードの読み取りのほか、金型の情報を送信する機能を備えている。
次に金型の位置情報を検出するため、QRコードを印字したラベルを発行し、金型のある工場に郵送して現地で金型に貼付してもらう。
そして、作業員がQRコードをアプリで読み取り、金型の画像を登録すると、位置情報と合わせて画像がクラウドにあるサーバーに送信されることで棚卸しは完了する。このとき、金型の登録情報に相違があればエラー情報として検出される。また、会社別に棚卸しの状況を確認することもできる。
このように同社では、簡単でありながら、とてもスマートな棚卸しの仕組みを作ることができた。

自動認識・クラウド技術をテコに業務プロセスを変革

自動認識・クラウド技術をテコに業務プロセスを変革

三好 方士 氏

パナソニック株式会社 アプライアンス社
グローバル調達センター 草津購買部
エアコン購買課 課長 三好 方士 氏

先に藤井氏は、仕組み化するうえでの二つの必須条件を述べていたが、最終的にQRコードを選んだ理由について、次のようにまとめた。

「スマホの規格とQRコードの汎用性という点で条件を満たしました。たとえば、NFCリーダー方式の場合、海外やSIMフリー形式のスマホでは使えないなど、機種が限定されますが、QRコードなら、認識用のアプリが無償で提供されるほど世界中に普及しています。加えて、固定資産である金型の情報は、書き換えができないQRコードが好都合です」

当初は、金型の位置情報の照合はQRコードでは難しいのではないか?と考えていた藤井氏であるが、画像を送信した瞬間の端末の位置情報を送信し、データベースの情報と照合することで、この心配も解消できた。

「そして、金型ならではの条件としてあげられるのが耐熱性。樹脂やアルミダイカストの金型は高温になるため、ICチップでは無理でした」(藤井氏)

草津工場の製造ライン

草津工場の製造ライン

「たとえばエアコンの場合は、一つあたり約500~600面の金型が使われています」(三好氏)

協力会社の工場における棚卸しの様子

協力会社の工場における棚卸しの様子

「最近は、『画像送ったけど、届いてますか?』といった連絡をよくいただきますね」(藤井氏)「皆さんの協力のおかげで、金型の所在が確実につかめるようになって、BCP対策としても効果的です」(渡辺氏)

金型によっては350℃の高温に

金型によっては350℃の高温に

草津購買部の机上に置かれたコンパクトな感熱プリンター(サトープリンティング株式会社製)でラベルを印刷。ラベルのサイズは、縦30mm×横70mmほど。導入当初は、一つの金型の複数箇所にラベルを貼付して耐熱性をテストした。

藤井氏によると、

「現在は、アプリの使い方に関する質問や戸惑いの声も減り、毎日400~600面の金型の画像と位置情報が送られてきます。また国内だけでなく、海外に所在のある金型の棚卸しも実施されています」

とのこと。統一されたプラットフォームのもと、草津工場と協力会社の工場がつながり、金型棚卸しの仕組みが実現できた。そして、この仕組みによって、管理労力の大幅な低減はもとより、不要になった金型廃棄の促進や有事の対策としても、同社は効果を期待している。

身近な技術・デバイスを使って、IoTを実装した同社。先進技術だからといって、必ずしも現場業務に適応できるとも限らず、技術の鑑識眼が必要だ。また、せっかくシステム化しても、障害が原因で現場の業務を停滞させては逆効果なので、不測の事態も想定し、あらゆる状況に備えておきたい。たとえば、急に金型の画像データが一斉に送信されても遅延なく受信し、セキュアに管理できる安定性の高いクラウド・サーバー環境を用意しておくことは大前提である。

事業部ごとに異なる業務フローを統一

続いて同社が取り組んだのは、金型が資産登録される際に金型メーカーから発行される納品書の記載内容の入力・照合業務の合理化。組織変更の都度、業務プロセス・ルールにばらつきが発生していたので、OCRを使ったシステムを軸に統制を図った。

「当社で毎月受領する金型の納品書(新規・改造・版管理含む)は、約8,000件。以前の資産登録は、付与された金型コードに紐づく納品書の記載情報をシステムに追加入力することで『登録完了』とみなしており、各事業部で紙とデータを見比べながら、正誤チェックをしていましたが、この情報を機械的にチェックしてシステムに一括で取り込み、登録まで同時に済ませることができれば、属人性の排除と、スタート時点から資産管理のルーティーンが構築できると考えました」(同社 山下氏)

仕組みは図の通り。指定のファイルサーバーに各事業部からアップされた納品書のPDFデータを、草津購買部でOCR認識してCSV(テキスト)データに一括変換。CSVデータは、伝票管理システムのデータと自動的に照合され、間違っている場合はエラー表示されるという仕組みになっている。これにより、人が作業するうえでどうしても避けることが難しい入力ミスや確認漏れのリスクを最小限に抑え、なおかつ、業務プロセスの統制を図ることができる。

山下 初美 氏

パナソニック株式会社 アプライアンス社
グローバル調達センター 草津購買部
購買ソリューション課 山下 初美 氏

一括OCR処理・チェックを業務プロセスに組み込み、属人性を排除

一括OCR処理・チェックを業務プロセスに組み込み、属人性を排除

システム化により事業部ごとにばらつきのあった業務プロセスの統一が可能になった。なお、同社では、見積・発注・納品・貸与・廃棄まで、終始、同一の金型コードで管理しているが、今回、アナログからデジタルへの変換スピード・正確性が向上したことで、金型情報の鮮度・精度も、より一層高まることが期待されている。

手書きにも強い『帳票OCR』

『帳票OCR』は、活字に加え手書き文字も高精度で認識できる。また、表示されている画像を対象に自動的に傾斜角度を検出して傾き補正を行う機能や、ノイズを除去する機能などもあり、低解像度のスキャン画像の認識にも対応できる。

人手による作業の負荷を軽減

人手による作業の負荷を軽減

「以前は、手元に紙の納品書を置いて、PCの画面を見ながら、データが合っているかどうか、一つひとつ確認・修正していましたが、『帳票OCR』を使うことで、紙と画面の往復運動が無くなり、精度も上がりました」(山下氏)

現在は、山下氏が中心となり、事業部単位で新しい業務プロセスへの移行をアシストしながら、他事業部への水平展開を加速させている。こうして、同社では、人手・紙が介在することで発生してしまう業務プロセス・情報のばらつきを、また一つ解消することができた。
そして、草津購買部では、すでに次の改革に向けた検討を開始している。

「NFCなどの短距離無線通信を使ってトレーサビリティーができないか」(柏木氏)

「今、工場では資材の時間帯指定納入や、多品種生産に伴う多数の部品切り替えを行っていて、物品の移動や管理が非常にタイト。そこで、通信技術を用いて動態を収集、ビッグデータ分析し、生産発注システムと連携させればジャスト・イン・タイムでの調達も実現できそう」(藤井氏)

次々と構想が広がっている同社。

パナソニック ソリューションテクノロジーでは、業務プロセスを細分化してそれぞれの課題解決策を形にしているが、同時に業務全体を俯瞰(ふかん)し各ソリューションを有機的につないで、大きな変革につなげるための絵をお客様と一緒に描いている。今後も、同社の変革の歩みを支えるために、顧客価値創造を中心にしたソリューションを展開していく。

【納入企業プロフィール】パナソニック株式会社 アプライアンス社

パナソニック株式会社 アプライアンス社

国内18、海外14カ国47の生産拠点を有し、空調・調理・家事・美容家電から、店舗向けショーケースや自動販売機、燃料電池などの業務用デバイスまで、幅広い空間に対応した商品を提供。世界中の多種多様なお客様の声に耳を傾け、それぞれの国や地域の特性にあった商品・サービスを提供することで、人々の豊かで快適なくらし、快適な社会に貢献する、グローバルトップクラスのアプライアンスカンパニーを目指している。

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※ 本文中に記載されている内容は、2016年9月の取材時点での情報です。