天候や設定によって変わる
コースの状況を把握

千葉カントリークラブ梅郷コース2番ホール。517ヤードと、距離の長いパー4に設定されるこのホールは、実際、同コースで行われた2016年大会でも、最も難易度(全選手の平均ストローク数)が高いホールだった。ティーグラウンドに立つと、左手の松林が迫ってくるように見える。右にはバンカー。選手には怖い景色だ。

プロキャディの小岸秀行さんは、ゴルフ場に勤めるハウスキャディとは異なり選手専属。選手に代わってコースの状況を把握し、戦略を立てて助言する役割を務める。事前の情報収集だけでなく、大会当日も風の状況やグリーンの固さに注意を払い、選手の調子や順位などさまざまな状況を頭に入れておく。
「選手とキャディが『これでいける』と確信をもった上でのミスショットなら挽回の可能性はある。だが、キャディが的確なアドバイスができず、選手も曖昧なイメージのまま打ってしまったミスショットは後に引きずってしまう。その差は大きい」
小岸さんが手にするヤーデージ・ブックには、コースの距離や高低が掲載されている。そこにさらに小岸さん自身の感覚をもとにした細かい分析をどんどん書き込んでいく。
「選手は誰もが皆、もがき苦しんでいます。“普通の状態”であれば、こちらの働きかけがなくても選手は自然と集中できる。ただその“普通の状態”をつくることが難しいんです」

選手でなくキャディに憧れて
この世界に飛び込んだ

小岸さんがゴルフと出会ったのは幼少期。大伯父は兵庫県にある名門ゴルフ倶楽部の理事長。祖父も父もゴルフ好き。
「当時はそのおもしろさがよくわからなかった。本格的に目覚めたのは、大学生のころ。1993年、父と日本オープンを見に行き、ジャンボ尾崎選手(尾崎将司)のオーラに圧倒され、さらに、尾崎選手の気持ちを推し量るように先手先手に行動する佐野木計至(さのき かずし)キャディに目を奪われた。佐野木さんに憧れて大会の学生アルバイトを始めたんです」
1ラウンドで7〜8キロも歩く。しかし構えてから打つのは数秒。クラブを持つよりも考える時間のほうがずっと長い。私生活の悩みなどの邪念が入り、思った成績が出せない選手も少なくない。
「選手が人生を歩む中に試合があり、僕はそこに並走させてもらっているという感覚。選手としっかり信頼関係を築き、私生活がプレーに影響しているならばなんらかのサポートができる存在でありたい」

もちろんそれは小岸さんのスタイル。選手とキャディ、その関係性は十人十色。ピンチのとき、チャンスのとき、キャディがどうサポートしているのか。そのコンビネーションからどのようなショットが生まれるのか。そこにぜひ注目してほしいと語る。
「歩きながらずっと試合の話をしているわけではなく『今晩どこにご飯に行く?』なんて会話をすることもあるんですよ」
と小岸さんは明かす。会場で観戦するとそんな意外な和やかさも感じ取ることができる。

掛け声をかけて
もっと気軽にゴルフを楽しんで

「もっと気軽にゴルフ観戦が楽しめるようになればと願っています。家族やカップルで、ビールやコーヒー片手に楽しんでいただけたら嬉しいですね。スタート前にサインを求めたり、打つ瞬間に声を上げたりするのは控えていただきたいのですが、それ以外は声援も大歓迎。実際、海外のトーナメントなどではとても騒がしい。こんな広々とした緑の中で、ボールを打ったときのあの音、雰囲気を体験していただくだけでも来てもらう価値があると思います」

加えて「業界側の人間としては選手の魅力をもっと伝えていきたい」とも語る。「これから育っていく若手選手もいれば、苦労して家族を養い遠征費用を捻出して参加している選手もいる。その人生模様がプレーに表れる。一部の有名選手だけでなく、いろいろな選手を知っていただけるよう、男子プロとファンがコミュニケーションを取れる場が増えてほしい」休日は、妻でプロゴルファーの小野香子さんと9歳と5歳のお子さん、家族で練習場に行くこともあれば、74歳の父親とプレーすることもあるという。

「ゴルフは年齢、性別関係なく誰でも楽しめて上達できるスポーツ。まずは試合を見に来ていただき、興味をもっていただいたらぜひプレーしていただきたいと思います」

写真:小岸 秀行(おぎしひでゆき)

PROFILE
小岸 秀行(おぎしひでゆき)

1973年11月8日生まれ、兵庫県出身。1995年からツアーキャディとして活躍。細川和彦選手や矢野東選手の専属キャディを経て、現在、川村昌弘選手とコンビを組む。プロキャディによるゴルフ情報サイト「スポともGC通信」の編集長を務める。
スポともGC通信>http://gc.supotomo.com/