Wonder Life-BOX × SPECIALIST インタビュー

「ロボットが人と人をつなげ コミュニケーションを生む時代はそこまできている」

「ロボティクスで世の中をユカイにする」をテーマにしたユカイ工学株式会社でロボット開発に携わる青木俊介さん。人とロボットが共にくらす未来に向けて研究開発を行っている青木さんに『Wonder Life-BOX』を体験した印象を聞いてみました。

家族を見守る“あかりちゃん”の存在は これからの未来に必要不可欠

――青木さんは「人と一緒にくらすロボット」の研究・開発をしていますが、『Wonder Life-BOX』でも、映像と対話で家族のくらしをサポートする"あかりちゃん"と名付けたパートナーを提案しています。実際に体験されていかがでしたか?

青木さん あかりちゃんはキッチンで料理のレシピを教えたり、リビングで屋内の空気環境や太陽光パネルの汚れなど家屋の状況を教えてくれますよね。それも便利なのですが、僕がいいなと思ったのは「子どもが何時に帰ってくる」など家族の情報を与えてくれること。

例えば、アニメの『ちびまる子ちゃん』でお父さんが「まる子はどこへ行った?」と聞いたらおばあちゃんが「学校へ行ったよ」と答えるシーンがよくありますよね。昔は当たり前のことでしたが、今は核家族化が進んで家族間の情報共有ができにくくなっています。だからこそ、あかりちゃんのように家族を見守って状況を把握してくれる存在は必要ですし、いることで家庭が楽しくなると思うんですよ。

今後、あかりちゃんのようなパートナーは家庭だけでなく、学校や職場、公共施設などでも活用されるのではないでしょうか。

新エネルギーとなる住宅水素インフラは 製品化も含めて注目の技術

――その他の施設でパナソニックの技術が未来のくらしを牽引できそうだと感じたところはありましたか?

青木さん 『住宅水素インフラ』のシステムは非常に興味を持ちました。水素を自宅で作って貯蓄し電気などのエネルギーとして使用する、いわば太陽光の代わりとなる新エネルギーですよね。この水素エネルギーを使ってこれからどんな製品が生まれるのかワクワクします。パナソニックは開発力や製品において未来を示すことができるメーカーのひとつだと考えていますから、ぜひ、水素エネルギーを用いた製品を生み出してほしい。

住宅で水素を発生させることができるのなら、キッチンやバスルームと連動させたり、美容製品に応用させたりと生活の中にいろいろと取り入れることができますよね。

柔らかな光のプロジェクターは目への刺激も軽減される

そして、リビングやベッドルームで使用されていたプロジェクターにも注目しています。今はスマートフォンやタブレット、パソコンなど家の中が液晶パネルだらけで目に相当な負担がかかっている時代。しかし、プロジェクターは間接光ですから、人に与えるストレスは少なく健康面でもいい影響が期待できます。

ベッドルームで星空や木漏れ日の光を天井にプロジェクターで投影してリラックス効果を計る演出がありましたが、これは非常にいいと感じました。液晶パネルのようなシャープすぎる光よりも、プロジェクターの柔らかな光が日常生活にあふれているほうが心身ともにリラックスできますからね。

もともとプロジェクターを作っているメーカーという強みもありますし、この技術はさまざまな方面で役立てられるのではと思います。

反面、気になったのは『Wonder Life-BOX』内に和室がなかったこと。昨今の住宅環境では和室が減りつつあるからこそ「未来では和室はこんな風になります」という提案が欲しかった。やはり和室があることで、日本人独自の文化が生まれたわけですし。ですからパナソニックの考える"日本人の未来の生活"を見たい気はありますね。

――和室ではありませんが、エントランスでは日本ならではの特性である土間をイメージしています。日本家屋における土間の役割は作業場であると同時に、井戸端会議的に人が集まるスペースでもありました。そんな、人が集まれる場所を意図的に残したのが『Wonder Life-BOX』のエントランスです。

青木さん あれは面白いと思いました。これからローカルなコミュニティが減っていく中で、人と人との関係性に重点を置く考えや、場所を作ったことはとても意味があること。こういう考えがないと日本はますます少子化が進みますよ。

我が家も共働きなんですが、子どもが鍵をなくして家に入れなかったときは近所の人が預かってくれていた、なんてことが日常的に起きていて。地域のコミュニティにサポートされながら子育てをしている感覚はとても強いんです。やはり、共働きで子育てをするのは大変なことですから、地域の人とのシェアリングはすごく大切。家の前で泣いている子どもに声をかけてくれるご近所さんがいるといないでは大違いですから。コミュニティのサポートがないと子どもは減っていく一方になると思います。

土間をイメージしたエントランスは人がコミュニティを育める空間

――それを防ぐためにもコミュニティを育める住宅は必要だと。

青木さん その通りですね。コミュニティースペースとして土間を持ってくるあたりがテクノロジーだけでなく、住宅も手掛けているパナソニックならではの「未来のくらし」なのでしょうね。

プライベートよりもシェアに重点を置いたくらしが 未来のスタンダードになる

――青木さんが考える、これからの「未来のくらし」とはどのようなものだと思いますか?

青木さん きっとワンルームマンションのような個の住宅が減り、シェアハウスのようなつながりを感じられるくらしにシフトしていくのではと思います。日本が豊かになる以前は長屋があり、テレビも近所の人たちとみんなで観ていた。それが豊かになることで面倒くさい人付き合いを避けたり、一人暮らし用の住宅や家電製品が生まれたわけです。

でも、一人暮らしは、それなりに収入がないとできないし、エネルギー面でも不経済。プライバシーを守るくらしよりも、もっと人とつながりたいとか、誰かと一緒に過ごしたいと考える人が増えてくるのではないでしょうか。ですから、住宅でも個室は狭くなっていき、先程話した土間のような共用の部分が広がっていく流れを感じますね。

シェア空間を安全で快適にするために必要なのはテクノロジー。『Wonder Life-BOX』のエントランスでも、顔認証システムを採用してセキュリティを強化していましたが、テクノロジーによって安全に人がつながりあえると考えています。それが『Wonder Life-BOX』でのあかりちゃんであり、僕たちが開発しているロボットなんですよ。

確かにFacebookやLINEで人とつながることは容易になりましたが、正直、知り合いや友人が食べているものや出かけたところの情報に大した価値はないわけですよ(笑)。それよりも知りたいのはスマートフォンを持っていなかったり、パソコンが苦手だったりする非デジタルな子どもや実家の両親たちの情報。その情報をロボットやパートナーが媒介してくれればと考えています。

――「未来のくらし」はロボットがいるくらしになるのでしょうか。

青木さん それを目指しています。特に、子どもや高齢者の生活にロボットやパートナーがいることで、より楽しいくらしが実現すると思うんですよ。事実、僕の知り合いに寝たきりになってしまった祖父にロボットを買ったら、ベッドから出て歩くようになったというケースがありました。ロボットが歩くことで、自分も歩きたいと思うようになったそうです。こんな風に、人の生活に喜びや楽しみを与えてくれるパートナーロボットがいる未来は、すぐそこまできていると思いますよ。

Profile

ロボットクリエイター

青木俊介さん

東京大学在学中に、チームラボを設立、CTOに就任。その後、ピクシブのCTOを務めたのち、ロボティクスベンチャー「ユカイ工学」を設立。ソーシャルロボット「ココナッチ」や、フィジカルコンピューティングキット「konashi」などIoTデバイスの製品化を多く手がける。2015年、家族をつなぐコミュニケーションロボット「BOCCO」をDMM.make ROBOTSより発売開始。2015年度グッドデザイン賞審査委員。

青木俊介さん