Wonder Life-BOX × SPECIALIST インタビュー

「私が思う豊かなくらしは"能動的"に"集団"で楽しめるもの それが『Wonder Life-BOX』の土間にあると感じました」

コミュニティデザイナーとして町おこしや地域のブランディング、公共機関のデザインや運営などを手掛ける山崎亮さん。コミュニティデザインとは建築物、つまり「ハード」部分ではなく、人とのつながりや人の気持ちによる「ソフト」な部分を重視して作られるデザインのことだ。日本全国を飛び回り、多くの町や人々のくらしを見てきた山崎さんに、未来のくらしのこと、そして『Wonder Life-BOX』の印象をうかがった。

時代がどんなに便利になっても人は簡単に集まらない だからこそ土間のように人を呼ぶ仕掛けが大切

――山崎さんはコミュニティデザインという、人と人がつながることで暮らしやすくなる環境をデザインしています。『Wonder Life-BOX』の中で、その考えが顕著に現れているのが土間をイメージしたエントランスですが、率直な感想としていかがでしたか?

山崎さん 自分が家を建てるときは土間を必ず作りたいと思っているんですよ。ですから、『Wonder Life-BOX』のエントランスは非常に興味を持ちました。ただ、僕が考えているのは、子どもが泥だらけで帰ってきてもいいとか、近隣ファミリーとパーティをするなどの若い世代の使い方ではなく、年齢を重ねたときにこそ使える土間。

例えば、我々が90歳まで生きたとすると60歳から30年もあるわけです。つまり現役でバリバリ働いていた時と同じぐらいの時間がある。でも、体は若い頃よりは確実に動かなくなっていて、家で過ごすことが多くなるでしょう。そこで誰とも会わずに家でこもっていると老化は進む一方です。しかし、土間という空間にみんなが遊びに来てくれたら元気になるし、生きがいになると思うんですよね。

山崎さんも強い関心を示したエントランス。コミュニティが生まれる仕掛けが随所にある

――土間はこれからの超高齢化社会にこそ必要とされるスペースだと。

山崎さん まさにそう思います。さらに注目したのが、土間に置かれていたお酒をパネルにかざすと商品や作り手の情報などがサイネージに映し出されて、みんなで共有できるというシステム。いくら社会が便利になったとしても、土間に集まる仲間はボタンひとつで呼ぶことはできず、自分がコミュニティを築いていかないといけません。何かを共有できたり、ほんの少しのもてなしがあると人は集まりやすいですから、あのシステムはとても有効ですね。

極端な例かもしれませんが、老後、1カ月何十万というお金を支払って施設に入り誰も会いにきてくれない生活よりも、お菓子やお酒を用意してみんなが集まってくれるくらしのほうが確実に楽しく長生きできますよ。

"あかりちゃん"の笑顔で 寿命がどんどん延びていく!?

――先ほど、老後のくらしについて話されていましたが、『Wonder Life-BOX』では、映像と音声で家屋環境や日常生活をサポートしくてれるパートナー・ロボティクス"あかりちゃん"を採用しています。今後の高齢化社会では、このような存在が必要だと思われますか?

山崎さん 必要になってくるでしょうね。高齢者だけでなく、子どもの安全も見守るロボットは今後増えるのではないでしょうか。"あかりちゃん"のいいところは表情があるところですね。キッチンでもあかりちゃんがオススメしたレシピを選択したら笑顔になったり、選ばないと少し悲し気な表情になったり。

とある研究機関が発表した結果によると、作り笑いでも人間の寿命は2年延びるらしいです。ちなみに本当の笑顔だと7年。人間は笑顔を見るとつられて笑顔になりますから、あかりちゃんのようなAI機能を持ったロボットがくらしをサポートするだけでなく笑顔を引き出してくれれば、気持ちも前向きになれるのではないでしょうか。

表情豊かな"あかりちゃん"がキッチンでも家事をサポート

ただ、その反面、ロボットとコミュニケーションをとっているほうが楽になってしまって、人とコミュニティを築くことを面倒だと思い始めてしまうと怖いけれど。

――手取り足取りのサポートは便利な反面、危険性もあると考えますか?

山崎さん テクノロジーを考える人たちは、ひとつでも多くの便利を増やしていきたい欲求が強い。もちろん、求められていることではありますが、あまりに走りすぎてしまって人間が頭や心で考えることをやめてしまったり、意思を持たずに楽なほうに流れてしまったりする反作用が出てきてしまうのは危険だと思いますね。

とはいえ、リビングでテーブルに本を置くと自動的に感知して明かりがつくのはすごく便利だと感じました(笑)。

テーブルに本や物を置くと自動的に照明がつくシステム

日本の医療の未来を考えると ヘルスケアの分野こそ、パナソニックのテクノロジーが必要

――便利といえば、サニタリー&ベッドルームの機能に興味を持たれていましたね。

山崎さん サニタリーでは鏡の前に立つだけで脈拍や心拍数が分かり、ベッドルームでは睡眠に入りやすく起床しやすい照度になるのは単純に便利だけでなく、人間にとって健康に直結しますからとても必要な機能。このようなヘルスケアの分野にこそテクノロジーを使うべきだと思います。

現在、日本の医療費はパンク寸前で、疾患にかかる前に自らで予防しなくてはいけない未来です。だからこそ、日常生活にヘルスケアが組み込まれ、自分の身体を知ることはとても重要。日常的な健康づくり、介護予防はこれからの日本に確実に必要とされる要素ですから、サニタリー&ベッドルームでのテクノロジーは国が助成金を出して各家庭で積極的に取り入れるようにすればいいと思いますね。

就寝中の心拍数や体温の数値が表示され、自分の健康状態を把握できるベッドルーム

自分にとっての豊かなくらしを知り テクノロジーから選択することが重要

――山崎さんは全国各地で、よい環境づくりに従事されていますよね。その中でご自身が考える「未来の豊かなくらし」とはどのようなものか教えてください。

山崎さん 私たちの活動の中でよく考えるのが何を楽しいと思うか。まず、楽しさには受動的と能動的なものがあります。受動的な楽しさは何かを買ったりとか、テレビを観たりとか、ゲームをしたりとか受け身のもの。能動的な楽しさは釣りに行くとか、野菜をつくるとか、スポーツをするとか自分が主体となって動くものです。そして、この2つの楽しみを個人で行うか、集団で行うかの要素も加わります。

私が考える豊さとは「能動的」で「集団」で行う楽しみ。お金を出して受動的に楽しませてもらうのは工夫の余地がないので長続きしなくて飽きやすい。そして個人だと楽しさが共有できず楽しみが小さくなってしまいます。

私にとって「楽しさ」は賞味期限が長く、大きく感じられるほうがいい。自分で主体的に動いて、みんなで楽しさの自給率を高められるくらしが豊かなのだと感じます。

こう言ってしまうとテクノロジーを批判しているように聞こえるかもしれませんが、すべてを頼ってしまう"テクノロジーの全部入り"はあまりいいものではないと思います。しかし、自分にとっての豊かさを理解して、必要なものだけを選択すればよりよいくらしを築けるのではないでしょうか。

ただ、自分にとって何が豊かなのかは人それぞれ。だからこそ、学校教育の一環で「豊かさとは何か」という授業を設けて、自分の意思決定がしやすくなればいいですよね。これからの未来のくらしを考えることは、自分の生き方でもありますから。

Profile

コミュニティデザイナー

山崎亮さん

株式会社studio-L代表取締役。メルボルン工科大学でランドスケープデザインを学び、SEN環境計画室に勤務。2005年にstudio-Lを立ち上げ、コミュニティデザインに携わる。まちづくりのワークショップや住民参加型の総合計画づくり、建築やランドスケープのデザインなど活動は多岐に渡る。

山崎亮さん