26. 歩一会を結成 1920年(大正9年)

大正7年11月に第1次世界大戦が終結すると、経済界は反動不況に陥った。その後、一時的に景気は好転したものの、不況はさらに深刻化の様相を呈し始めた。そこに、大正9年3月、株式市場の大暴落が起こり、戦後恐慌が突発した。企業倒産が続発し、街に失業者があふれ、労働組合運動は次第に過激になり、社会不安が一挙に高まった。

その中で、松下電気器具製作所はむしろ順調に販売を伸ばし、一見何事もなく推移していた。だが、所主は、この激動期に臨み、「松下電器が将来発展していくためには、全員が心を1つにしなければならない」と考えた。そこで、自分をも含めた全従業員28名を会員とする「歩一会」を結成した。名称は「全員が歩みを1つにして、1歩1歩着実に進もう」との思いからつけられたものである。

その後、歩一会は従業員の精神指導、福祉増進、親睦慰安などを目的に、運動会や演芸会などの行事を催して、全員の一致団結を一層強固にする上で大きな役割を果たした。