45. 不況下に自動車を購入 1930年(昭和5年)

世界恐慌が勃発し、日本経済は危機に直面しているにもかかわらず、昭和5年1月、予定通り金輪出解禁が行われた。そのために、物価の下落、株式や商品市場の暴落が起こり、不況は一層深刻化した。前年からの極端な緊縮政策の浸透もあって、消費は一段と冷え込み、物は余る、仕事は減る、失業者は増えるという惨状となった。

所主は「物が余って、みなが困っているときだ。今こそ需要を喚起するために、分に応じて物を買うべきではないか。それによって新たな生産も起こり、不況も解消されるはずだ」と考えた。

たまたまそのとき、所主は自家用車にと大型のスチュードベーカーを勧められたのである。自家用車に乗ることなど考えてもいなかったが、日ごろ緊縮ムードヘの憤りを感じていたときでもあり、思い切って購入した。車のナンバーは59である。思わぬことから、大阪でも数少ない自家用車の所有者となった。