60. 正価販売運動を推進 1935年(昭和10年)

昭和8年ごろから価格競争のため、市場は混乱し、代理店、販売店の経営は悪化した。早くから「不当に高い利益も、少なすぎる利益も、ともに商売の正道からはずれている」との信念をもっていた所主は、この状況を憂慮した。

当時、ごく一部の大メーカーを除き、ほとんどの商品には「定価」がついていず、販売店が自由に値段を決めて売っていた。そのため、販売競争の激化とともに、値引きも極端になり、経営混乱を招いたのである。

所主は、適正な利潤に基づく価格で販売することこそ、メーカー、代理店、販売店3者の経営安定のためのみならず、需要者の不信一掃のためにも必要であると確信した。

そこで、昭和10年7月、所主は、共存共栄の理念に基づいて、正価販売運動を実施することを決意し、関係先にあいさつ状を送った。その中で、正価販売は業者のみならず、需要家にも益するものであり、社会生活向上の道も開かれると強調した。

この年11月、連盟店制度を開始したが、この制度と関連して、この正価販売運動は急速に浸透し始めた。需要家に歓迎されただけでなく、業界全体の経営正常化に貢献するものとして、各方面から注目された。