150. 創業60周年を迎える 1978年(昭和53年)

経営新体制の布石により、全従業員に刷新の気風が興こり、長期不況にも希望をもって挑戦する姿が見られるようになった。その中で迎えた昭和53年は、松下電器の創業60周年に当たり、相談役は、病気静養中を押して、1月の経営方針発表会に出席し、あいさつに立った。

「今から60年前に、松下電器を創立した時はわずか3人だった。60年後の今日では、松下電器は、6万人を越える人数になっている。関係会社を入れると15万人に達している。そういう人たちがみんな松下電器で仕事をしていると思うと、私としては夢のようである。ゼロからこれだけのことができたのである。60年というと、個人であれば、“還暦”とか“本卦がえり”ということで、また元へ返って1からやり直すという習わしがある。松下電器も、本日、もう一度元に返って、15万人から再出発するのである。この次の60年には、私はもちろん、皆さんもおらないかもわからないが、とにかく発展したその巨大な姿は、想像もつかないほどになっていると思う」と言い、演壇から歩み出て、深々と3度頭を下げ、「どうも皆さんありがとう」とつけ加えた。相談役が頭を下げるたびに、大きな拍手が起こった。