最先端の車載テクノロジーを支える受動部品

オートモーティブ&インダストリアルシステムズ社(車載用二次電池)

技術者自ら顧客のもとに足を運びニーズをキャッチ
競争が激しい車載市場を切り拓く

ハイブリット車(HV)や電気自動車(EV)、自動車の安全技術の普及とともに自動車の電装化が加速している。パナソニックオートモーティブ&インダストリアルシステムズ社(以下、AIS社)は、ICT分野で培った電子制御ソリューション、熱ノイズソリューション、センサソリューションを成長著しい自動車分野に展開。年々その売上比率を高めている。今回は同社のデバイスソリューション事業部で、角チップ抵抗器やコモンモードノイズフィルタの開発・生産を担う森田工場を率いる工場長と技術責任者の2人に、AIS社デバイスソリューション事業部の取り組みや今後の展望、求める人材像などについて訊いた。

「2000年代に入ってから徐々に、AV機器や家電中心だった用途からパソコンやスマートフォンなどのICT分野へと需要が拡大していきました。現在では車載分野を中心に新規の引き合いが増えています」。AIS社デバイスソリューション事業部の蒲原清隆氏は、自社を取り巻くビジネス環境をそう話す。蒲原氏が工場長を務めている福井県の森田工場は、多様な電子デバイスを開発する同事業部のなかでも、角チップ抵抗器やコモンモードノイズフィルタなど、エレクトロニクス機器に欠かせない受動部品の開発・生産を担う一大拠点だ。その生産能力は月産で数十億個にものぼる。

「森田工場の主力商品のひとつである角チップ抵抗器は、スマートフォンの高機能・多機能化や、電装化が進む自動車の高性能・高精度化が需要を後押ししています。もう一方の主力商品であるコモンモードノイズフィルタは、スマートフォンの通信速度の高速化や高画質化といったニーズを汲むことで需要を増やしてきました。」

とくに普及が進むハイブリット車(HV)、電気自動車(EV)、さらに実用化が待たれる自動運転車(UGV)のバッテリーマネジメントやモータ駆動制御回路、また衝突回避や車線逸脱防止、電子ミラーといった先進のカーテクノロジーの背後には、角チップ抵抗器やコモンモードノイズフィルタの需要拡大が控えている。だからこそ車載分野への期待が大きいのだと蒲原氏は話す。

「顧客第一、品質第一を旗印に、電子制御、熱ノイズ、センサの先進デバイスを融合した複合的ソリューションでお客様のお困りごとに応えるのがわれわれの使命。高信頼性や小型・薄型、省エネといった我々の強みを武器にお客様のお困りごとに応えていきます。車載分野はICTに次ぐ前途有望な市場ですから、現在、事業部を挙げて拡販活動に力を入れています。」

技術者が顧客と向き合い、顧客ニーズを具現化する

だが、車載分野への拡販活動は言葉でいうほど容易ではない。顧客から寄せられる高度な要求に応えるのはもちろん、国内外に競合メーカーがひしめいているため、価格競争にも勝ち抜かなければならないからだ。しかも、その準備に費やせる期間は年々短くなっている。森田工場で技術部門を統括する星徳聖治氏は、その苦労を次のように打ち明ける。

「以前は、ひとつの強いデバイスを開発すれば、あとは自然と他のお客様にも使っていただけるような時代もありましたが、今は違います。われわれのお客様は、独自の戦略をもとに過酷な開発競争にしのぎを削っておられますから、他のお客様で実績があるからといって、おいそれと採用を検討いただけるほど甘くありません。われわれも一社一社、異なるご要望にお応えした上で、海外の競合メーカーとの価格競争にも勝たなければならないという難しさを乗り越えなければならないのです」

蒲原氏もいう。「数年前、欧米メーカーで採用実績がある商品を中国のメーカーに提案したところ、けんもほろろにハネ返されてしまったことがありました。お客様の要望を正しく掴めていなかったからです。この時は技術陣を中心に森田工場全体が一丸となって、開発期間を従来の半分まで圧縮して受注を獲得することができましたが、あのときほどお客さまのニーズを正しく理解することの大切さを痛感したことはありませんでした」

この時の反省が森田工場を変えるきっかけになったと蒲原氏はいう。技術者自身が積極的に顧客のもとに足を運び、ニーズを持ち帰ることでカスタマイズ要件をスムーズに具現化。次世代品のプラットフォーム開発にも活かすようになったのだ。現場の責任者を務める星徳氏もその当時をこう振り返る。

 「ニーズの『又聞き』や仕事の『バトンリレー』では商売を取りこぼしてしまうことがあります。ですから、かつてのように設計は設計、プロセスはプロセスという仕事の進め方は改めました。技術者が目と耳と脚を使って吸収したニーズをもとに、ごく早い段階から材料開発、製品開発、プロセス開発、設備開発のメンバーが集まり、源流から互いに知恵を出し合うようにしたことで、お客様が求めるスピーディーな開発が実現できるようになりました」

優れた商品を提供するため、顧客志向を持つ技術者に期待

今後もさらなる成長が期待される車載市場。この成長力を自社に取り込み社業の発展へとつなげるためには、開発をリードする技術者の獲得が欠かせない。人員の増強は急務だと蒲原氏は語る。

「『車載品質』という言葉があるように、車載向け機器に自社のデバイスを採用してもらうためには、極めて高度な技術要求に応えなければなりません。しかもスピーディーな開発が前提となると、優秀な人員の確保はとても重要な課題だと認識しています」

森田工場には、コア技術やキー工程に関わるプロセスや生産設備を自社の技術者が設計、カスタマイズするなど、技術に対して並々ならぬ意欲を持つ技術者が多い。それは顧客のために少しでもいい商品を提供したいという意識があるからだ。求める人材にも顧客志向を強く持っていてほしいと両氏は口を揃える。

「過去の経験の積み重ねやグループ内の豊富な知見も活かせるので、お客様に対して高度なソリューションを提供することが可能です。自ら開発した商品を自らの手で売ることにやりがいを感じる技術者には特に期待しています」(蒲原氏)

「抵抗器は、最先端のテクノロジーを下支えするという一面をもつ一方、過去に開発した商品が全く別の用途で使い続けていただくこともある息が長い商品です。そんな商品を通じて社会のお役に立ちたいという方、また、お客様の顔が見えず閉塞感を感じておられるような方にとって、やりがいのある職場だと思います。そんな技術者のみなさんと一緒に世界一のデバイスを作りたいですね」(星徳氏)

エレクトロニクス製品に欠かせない角チップ抵抗器やコモンモードノイズフィルタ。研究室や実験室に閉じこもるのではなく、顧客と向き合い、広い視野を持って開発に取り組みたい技術者にとって、やりがいがある環境がここ福井の地にある。

パナソニック株式会社 オートモーティブ&インダストリアルシステムズ社 二次電池事業部 車載電池ビジネスユニット ビジネスユニット長 ビジネスユニット長 花田 浩一氏

パナソニック株式会社 オートモーティブ&インダストリアルシステムズ社
デバイスソリューション事業部 電子制御ソリューションビジネスユニット
森田工場 工場長  蒲原 清隆 氏 (写真左)

1993年、旧松下電子部品(現パナソニック)に入社。生産技術センターに配属後、エンジニアとしてグループ内の生産設備設計に従事。2010年、抵抗器やノイズ対策部品の生産拠点である森田工場に異動。生産技術、製造の責任者などを経て、2014年、工場長に就任。現在に至る。

パナソニック株式会社 オートモーティブ&インダストリアルシステムズ社
デバイスソリューション事業部 電子制御ソリューションビジネスユニット
森田工場 技術部 部長  星徳 聖治 氏 (写真右)

1981年、旧松下電子部品(現パナソニック)に入社。以来、一貫して抵抗器の設計開発に従事。2004年からは技術部部長として、抵抗器やノイズ対策部品など、森田工場で生産されるすべての製品の技術部隊を率いている。