熱・ノイズソリューションの車載展開を北海道からグローバルに推し進める

家電のDNAを継承しつつ、収益性の高いBtoB分野への事業拡大を進めるパナソニック。その大きなターゲットとなるのが、ハイブリッド車や電気自動車(EV)の登場でエレクトロニクスの重要性が飛躍的に高まりつつある車載分野だ。同社ではオートモーティブ&インダストリアルシステムズ社(以下、AIS社)を中心に、2018年までに車載事業の売上を現在の2倍以上の2兆円にまで高めるという目標を設定。それに伴い、AIS社回路部品事業部 熱・ノイズソリューションディビジョンの主力製造拠点である北海道工場でも、車載に向けた製品ラインナップの拡充を急いでいる。その取り組みと求める人材像について、同工場の工場長と技術責任者に話を訊いた。

車載市場攻略に向けどのような製品開発が求められるか

札幌への玄関口・新千歳空港から車で約20分という交通至便な場所にあるパナソニックの北海道工場。東京ドーム2個分にあたる約3万坪の広大な敷地の中に、低層の建物が整然と立ち並ぶ。

この工場は、パナソニックAIS社回路部品事業部 熱・ノイズソリューションディビジョンの主力製造拠点。主な生産製品はPGSグラファイトシートおよび、バリスタ、サーミスタ、パワーインダクタといったセラミック電子部品だ。PGSグラファイトシートは近年、スマートフォンやタブレットなどの熱対策に不可欠のものとして需要が高い。セラミック電子部品も発電所や変電所などの大規模施設からテレビ・冷蔵庫などの家電製品、通信機器、パソコン、自動車など極めて幅広い分野で電源電圧や温度の制御に用いられている。

もともとPGSグラファイトシートは、パナソニックが世界に先駆けて生み出したものだ。樹脂材料を高温で焼成することで人造グラファイトを造る技術を確立。今や薄さ10ミクロンから100ミクロンまで幅広い品揃えを誇り、全世界の市場シェアの約40%を握る。一方、セラミック電子部品においても、特に酸化亜鉛を主原料にしたバリスタはパナソニックが世界で初めて発明した製品だ。
「PGSグラファイトシートは数千度の高温で熱処理を行います。その際、温度のバラツキをいかに小さくするかが極めて重要になる。炉を常時同じ状態に保つメンテナンスも難しい。セラミック電子部品においても、主原料(無機材料)の粉に種々の添加物を混ぜて特性を出す訳ですが、ただ混ぜるだけではもちろんダメで、そのための粉体処理のプロセスがキーになります。また、特性を出すには焼成の際にどういう温度の上げ方にするかも考えねばならず、製品によって焼き方も違う。当工場では長年に渡りこうした点で独自のノウハウを確立してきました」と工場長の山下修氏は自信を見せる。

PGSグラファイトシート、セラミック電子部品のいずれも、同工場の製品は従来、家電など民生向けのものが中心だった。今後目指すのは自動車向けのラインナップを増やし、車載市場を攻略していくことだ。
「自動車の電子化が進む中で、搭載されるECU(電子制御ユニット)の数が激増し、それに用いられるセラミック電子部品の需要が急拡大しています。当然、当工場もそこを狙っていきたい。車の中でECUが増えるとそれだけたくさんの空間を使うことになる。自動車メーカーにとってはECUの小型化が大きな命題になっており、当社は小型でも従来と同等以上の性能を出せるセラミック電子部品を創り出すことで、自動車の電子化に貢献できます」と、同工場の技術責任者を務める大宮磨人氏は強調する。

PGSグラファイトシートについても、車載分野における熱対策の需要の高まりが期待されており、車載向け新規商品開発に取り組んでいる。
「こうしたソリューション提案・商品開発に注力し、当工場として車載部品の売上比率を30~40%にまで高めていきたい。パナソニック全体として車載事業を大きく伸ばしていこうとしている中で、我々に対する期待もひしひしと感じています」と山下氏は前を見据える。

顧客の要望を直接聞けることがやりがいにつながる

とはいえ車載部品のラインナップを拡充していく上では、乗り越えなくてはならない壁も多い。製品開発上、まず出てくるのが耐熱性の問題。民生用途なら85℃程度の熱に耐えられれば充分だが、自動車では搭載場所によっては150~170℃まで耐えられなくてはならない。そのための材料・素材開発が必須となる。

そして何より厳しいのが「品質」の問題だ。自動車の場合、1つの部品の故障が直接、人命に関わるため、民生向けと比べて桁外れに高い品質が求められる。
「不良品を1つも出さないために、今まで以上の設計段階からの品質の作り込みが必要。品質管理の考え方も大きく変えていかなくてはなりません」と大宮氏は表情を引き締める。

こうした課題をクリアしていくためにも、パナソニックの北海道工場では現在、車載分野で経験を積んだ人材の積極採用に動いている。セラミック電子部品の商品開発や生産プロセス技術の開発に携わっていた人はもちろん、車載メーカーなどで品質管理に携わっていた人も大歓迎だ。

工場というとものをつくるだけと思われがちだが、同社の場合、エンジニアが自ら顧客企業に出向き、性能のすり合わせや採用交渉まで行う。「お客様の要望を直接聞けるからこそ、『よし! 何とかしよう!』と強く思える。それが大きなやりがいにつながっていますね」と大宮氏。また、同社の場合、国内だけでなく、海外のお客様からも高い評価を有しているため、世界中を飛び回りながら仕事をする機会も豊富にある。
「車載事業に注力していくことから、今後はアメリカや欧州の自動車メーカーなどもターゲットになっていくでしょう。自然に恵まれ住み心地のいい北海道の地を活動の主要拠点にして、グローバルな車載市場に向けて一緒に挑んでいきたいという方に、ぜひともいらしてほしいですね」と語る山下氏。エンジニアとしてひと回り大きく成長できるチャンスが待っていそうだ。

パナソニック株式会社 オートモーティブ&インダストリアルシステムズ社
回路部品事業部 熱・ノイズソリューションディビジョン
北海道工場 工場長
山下 修 氏(写真左)

1979年、パナソニック(当時は北海道松下電器)入社。以来、北海道工場にてエンジニアとしてセラミック電子部品の製品開発および品質管理に携わるほか、調達、施設環境管理といった工場管理部門でも要職を歴任。2010年より現職。

パナソニック株式会社 オートモーティブ&インダストリアルシステムズ社
回路部品事業部 熱・ノイズソリューションディビジョン
北海道工場 チームリーダー
大宮 磨人 氏(写真右)

1989年、パナソニック(当時は北海道松下電器)入社。以来、一貫してセラミック電子部品の設計開発業務に従事。現在、チームリーダーとして同工場のセラミック電子部品開発を率いる。