グループ再編のシナジー効果で大型空調機器の世界展開を加速

2012年1月、パナソニックはパナソニック電工・三洋電機を含めたグループ全体で事業の再編を実施した。「新生パナソニック」としてこれからの戦略を描く中で、とりわけ大きな期待が寄せられているのが、店舗やビル、大規模施設などに使われる大型空調機器の分野だ。大型空調機器についてはもともと三洋電機が長年に渡り技術を蓄積。パナソニックと三洋の強みの融合によりシナジー効果を発揮することで、「BtoB事業の成長エンジン」となる可能性を秘めている。このパナソニックの大型空調機器事業の現状と将来展望、そして求める人材像について、三洋電機時代から引き続き開発をリードするエンジニアに話を訊いた。

あらゆる空調をパナソニックがまるごとまかなえるように

大型空調機器には、店舗や事務所、ビルなどに広く用いられる電気式のPAC(パッケージエアコン)、ガスエンジンで駆動し、電気式よりも大きなパワーで広範囲を空調できるGHP(ガスヒートポンプエアコン)、大規模施設や地域冷暖房などに活用される吸収式冷凍機の3つがある。パナソニックではこれら3つを全て自社で製造・販売。特にGHPと吸収式冷凍機については業界トップクラスのシェアを誇る。

パナソニックの大型空調機器事業は、もともとグループ会社である三洋電機が行なっていたものだ。三洋電機では1960年代から大型空調機器の開発を手掛け、世界初の製品を次々と生み出していた。東京ドームの空調に利用されている吸収式冷凍機も同社の手によるものだ。2012年1月にパナソニックが行なったグループ事業の再編に伴い、三洋電機の大型空調機器事業はパナソニックのアプライアンス社に合流。グループ一体となって開発が進められることとなった。

この新体制によるメリットを、三洋電機出身で、現在パナソニックの大型空調開発グループに所属する金井弘氏は次のように指摘する。
「パナソニックでは従来から家庭用ルームエアコンの分野で高いシェアを有しています。そこに三洋の大型空調機器事業が合流したことで、ホームから大型まで、あらゆる空調機器をパナソニックだけでまかなえるようになりました。これだけのラインナップを全て自社で揃えているメーカーは他には存在しない。電気・ガスとエネルギーを使い分けながら、『家まるごと』『ビルまるごと』『街まるごと』、最適な空調を提案していけます。また、パナソニックはグローバルも含め強力な販売網を有しており、これを活用することで大型空調機器事業をより広く展開していくことも可能。シナジー効果は大きいですね」

こうした中、金井氏は三洋電機時代から引き続き、GHPの開発を中心メンバーとして率いている。「GHPの室外機・室内機を両方とも自社で造っているのはパナソニックだけ。エンジンも電気も知り尽くしており、開発をスピーディーに進められます」と金井氏は強調。この高い技術力を活かし、同社では今年2月、停電が起きた際もガスが供給されていれば自ら発電し、空調と照明を使い続けることを可能にする日本初の電源自立型GHP「エクセルプラス」を発表。業界を驚かせた。

「GHPは現状、日本需要中心であるため、今後はさらに海外に拡販していきたい。パナソニックのグローバル販売網をもってすれば必ず実現できると考えています」と金井氏は展望を語る。

人材に最も強く求めるのは自ら考え、決断してきた経験

パナソニック アプライアンス社の製品といえば、誰もが冷蔵庫や洗濯機などBtoCの白物家電を思い浮かべるだろう。しかし実は大型空調機器、コールドチェーン、デバイスなどのBtoB製品も全売上高の41%という高い割合を占めている。BtoB事業の拡大が同社の重点取組みの1つになっている中、市場開拓の余地がまだ充分ある大型空調機器事業にはとりわけ熱い注目が集まっており、2012年度は売上高前年比120%増という明確な目標が掲げられている。

「期待の大きさはひしひしと感じています。市場に新製品を送り出しながら、常に並行して数年先を見据えた開発も推進中。やるべきことが多く大変ではありますが、新しいことに次々と挑戦でき、やりがいは大きいですね」

一方で、パナソニックと三洋電機の一体化による事業基盤の強化も、金井氏らエンジニアのモチベーションをいっそうかきたてる要因となっている。

「パナソニックでルームエアコンの開発に携わっていたエンジニアが大型空調機器の開発に加わるケースも出てきており、意見を交わすことで新しい刺激を得られます。パナソニックの研究所に解析を依頼できるなど、活用できるリソースの幅が広がったのも利点。また、組織改編の結果、それまで製品ごとにあったエンジニア同士の意識の壁が除かれ、連携や情報共有をスムーズに進められるようにもなりました」

今後の事業拡大を見据えて、パナソニックの大型空調機器部門ではキャリア人材の採用にも積極的だ。「求めるのは構造設計と機能設計のエンジニアです。いずれも技術的なベースはしっかりと持っていてほしいですが、それよりも重視するのは、ただ人に言われたことをやってきたのではなく、『自ら考え、自ら決断してきた』経験。加えて、何としても開発をやりきるんだという強い意志も必要です」と金井氏。こうしたマインドを備えている人であれば、必ずしも大型空調機器に限らず、自動車やコンプレッサー、ルームエアコンなど様々な製品の開発経験を活かして活躍できるという。

「パナソニックの大型空調機器部門には、蓄積されている要素技術がたくさんあり、それらを組み合わせながら自らの手で新しいものを生み出せます。製品的にもダイナミックで成果が見えやすく、世の中に対するインパクトも大きい。仕事は絶対に面白いと思いますよ」と笑顔で語る金井氏。飛び込んで見る価値は充分ありそうだ。

アプライアンス社
エアコン・コールドチェーン事業
グループ
エアコンビジネスユニット
大型空調開発グループ 主幹技師
金井 弘

1982年、大学の工学部電気工学科を卒業し、三洋電機に入社。ルームエアコンのコントローラー開発などを経て、2002年から大型空調機部門でGHP(ガスヒートポンプエアコン)開発を担当。現在、パナソニックの大型空調開発グループにて、主幹技師としてGHPの開発を統括している。