アルミ電解コンデンサの性能を突き詰めシェア拡大と環境貢献を目指す

電子回路を構成する主要電子部品であるコンデンサ。その中でも今、改めてニーズが高まっているのがアルミ電解コンデンサだ。パナソニックのデバイス開発の中核部門であるデバイス社でも、このアルミ電解コンデンサを重点商品の1つと位置づけ、市場シェア拡大に向けて技術開発を加速。その性能向上はパナソニックが至上命題とする「環境負荷低減」にも大きな意味を持つことから、グループ内からも熱い期待が寄せられている。取り組みの現況と仕事のやりがい、さらに求める人材像について、デバイス社でアルミ電解コンデンサ開発を担当する栗本浩氏に聞いた。

「顧客であるセットメーカーがグループ内にいる」ことが最大のアドバンテージ

アルミ電解コンデンサは、比較的安価で、幅広いアプリケーションに用いられるコンデンサだ。家電・AV機器からパソコン、携帯電話、車載機器、産業用機器に至るまで、ありとあらゆる電子機器に必ず搭載されているといっても過言ではない。

このアルミ電解コンデンサのニーズが、ここにきていちだんと高まっている理由について、栗本氏は次のように説明する。
「まず、先進国に続いて、今後BRICs諸国でも、薄型・省エネのLEDバックライト搭載の液晶テレビ向けのアルミ電解コンデンサの需要が増加していくことが挙げられます。各社とも現在、増産に次ぐ増産を行っている状況です。また、近年普及が進んでいる太陽光発電や、スマートグリッドの担い手となるスマートメータ(通信機能や機器の管理機能を備えた高機能な電力およびガスメータ等)にも、多数のアルミ電解コンデンサが必要となります。パナソニックがグループをあげて注力する『環境』という切り口で考えても、アルミ電解コンデンサは非常に重要な電子部品なのです」

パナソニックは、カーナビやカーオーディオ、エンジンECUといった車載電子機器に用いられる低圧のアルミ電解コンデンサについては業界トップクラスのシェアを握っているものの、薄型液晶テレビや太陽光発電などに用いられる中高圧のアルミ電解コンデンサについてはトップクラスとは言えない。
「市場が急激に拡大しているにも関わらず、充分なシェアが獲れていない。この中高圧アルミ電解コンデンサ事業を強化することが我々の大きな課題になります」と栗本氏は力を込める。

アルミ電解コンデンサの開発にあたっては、コンデンサの限られた体積の中にいかにして大容量の電荷を詰め込められるかが勝負になる。コンデンサ1つあたりの容量が増え、使用数を減らせられれば、当然、消費電力も減少し、環境負荷の低減にもつながるのだ。
「アルミ電解コンデンサの開発にはいくつかのポイントがあります。大容量を実現するためには、アルミニウム電極箔の表面を粗面化(エッチング)して表面積を拡大するわけですが、粗面化を進めるにつれアルミ箔が薄くなり、商品として組み立てる際に構造的に脆くなりかねない。それを避けるためには、工法の工夫が必要です。また、ミクロン単位で粗面化した電極箔をバラツキなく量産するプロセス技術も不可欠です。

また、小さな体積に大容量を詰め込むうえでは、等価直列抵抗を低減するために許容リプル電流を上げなくてはならない。要するに、従来3つのコンデンサで行っていたことを2つのコンデンサで行えるように容量を詰め込んだとしたら、2つで3つ分のノイズをしっかり除去できるようにコンデンサ1つあたりのリプル耐量を上げる必要があるわけです。これには電解液の開発がキーになります」

こうした課題の解決を目指し、現在、コンデンサメーカ各社間では熾烈な開発競争が行われている。その中でパナソニックグループならではのアドバンテージを、栗本氏は次のように語る。
「何より大きいのは『お客様であるセットメーカーがグループ内にいる』ことです。家電からAV機器、車載機器まで同じグループの中で手掛けており、存分に情報を取りながら開発を進められる。また、技術的な壁にぶつかった際、グループ内にいる様々な分野の専門家に相談して解を求めることも可能です。このあたりはコンデンサ専業メーカーにはない利点でしょう」

従来、アルミ電解コンデンサの開発は、PEDのキャパシタビジネスユニットを中心に進められてきたが、最近はPEDのR&D部門などの知見も積極的に借り、これまでの延長線ではない非連続の開発に着手している。「今後は、オールパナソニックの力を結集して飛躍的な性能向上を実現し、シェア拡大および環境貢献を実現したいですね」と栗本氏は前を見据える。

ともに変革を志し、新技術開発の起爆剤になってくれる人材を求める

アルミ電解コンデンサは、幅広い製品に用いられるため汎用部品としてとらえられがちだが、「実際はカスタム開発の要素が強い」と栗本氏は言う。例えば自動車向けの製品だと、お客様であるカーメーカー様から車の進化を見据えた長期的なロードマップが提示され、“この時期にこのような性能の製品が欲しい”という要望に沿って3年から5年程度の長期スパンで開発を進めていく。
「こうした場合、我々だけのシングルソースでの納入となるケースがあるので、万一開発に失敗するようなことがあれば、車自体の開発がストップしてお客様に多大なご迷惑をかけてしまいます。一方で、最近増えているデジタル家電向けアルミ電解コンデンサは、開発期間が短く、スピード感が強く求められる。いずれにせよ責任重大でプレッシャーもありますが、その分、お客様の商品力向上に直接貢献できているという満足感を得られます」

また、前述のように、開発に際してはグループ内の多様な分野のエンジニアと密に連携する。「そうした中で各分野の先端の技術・知識を吸収し、エンジニアとしての幅を拡げられるのも、やりがいにつながっていますね」と栗本氏は強調する。

アルミ電解コンデンサ事業の拡大に向け、デバイス社ではキャリア人材の積極採用を進めている。特に急募するのは、重点強化製品である中高圧アルミ電解コンデンサの開発スキルを備えた技術者。電極や電解液などの材料開発や機構設計、工法開発など必要とされる技術の幅は広い。
「我々は今、ボリュームゾーンである中高圧アルミ電解コンデンサでシェアを奪還するために、あらゆる意味で本気で変わりたいと思っています。今後開発に加わって頂く方にも“一緒になって変えていくんだ!”という気概を求めたい。新しい風を吹き込み、新技術開発の起爆剤になってくれるような方に、ぜひともいらしてほしいですね」と期待を込めて語る栗本氏。挑戦のしがいは、間違いなくあるはずだ。

デバイス社
栗本 浩

1963年生まれ。1989年大学院修了後、松下電器産業(現パナソニック)に入社。以後、一貫してアルミ電解コンデンサの設計開発を担当。現在、電源一次側平滑用の中高圧アルミ電解コンデンサの開発およびアルミ電解コンデンサ全般の商品技術を担当する。