家庭用燃料電池で環境エネルギー分野の未来を切り拓く

「環境共存」をコーポレートビジョンの1つに掲げるパナソニックでは、環境エネルギー分野においても新技術開発を加速している。
とりわけ最重点テーマとしているのが、「21世紀の発電装置の本命」とされる燃料電池だ。その取り組みは2009年5月に一般販売が開始された家庭用燃料電池「エネファーム」に結実。これを世の中に広く普及させていくため、さらなる挑戦が続けられている。同社のR&D部門で燃料電池の研究開発をリードするエンジニアに、開発の現状や仕事のやりがい、求める人材像について聞いた。

キーデバイスを全て自社開発しているのがパナソニックの家庭用燃料電池の強み

酸素と水素の電気的な化学反応により電気エネルギーを生み出す燃料電池は、エネルギー変換効率が高く、廃棄物が排出されないことから、クリーンな次世代エネルギーとして大きな注目を集めている。

なかでも現在、パナソニックが開発ターゲットとしているのが、作り出したエネルギーを家庭の暖房や給湯に利用する家庭用燃料電池だ。同社では1960年代からすでに燃料電池の基礎研究を始めていたが、1999年からは家庭用燃料電池に絞って本格的な技術開発を推進。昨年5月には、大手ガス会社が世界で初めて一般販売を開始した家庭用燃料電池「エネファーム」にパナソニック製品が採用された。既存インフラにより供給される天然ガスから水素を生成して発電し、暖房や給湯を行うのがエネファームの仕組みだ。
エネファームには他社製の製品もあるが、パナソニック製品は発電効率35%とトップ性能を実現している。

「これは、発電を行う部分であるスタックと、天然ガスから水素を取り出す燃料処理機という2つのキーデバイスを両方とも自社開発しており、性能向上が自らの手の内にあるのが要因と考えます。また、長年の研究開発で基礎技術を積み上げてきたことや、熱応力解析などのシミュレーション技術で高度な実力を備えているのもアドバンテージになっています」と、同社R&D部門で家庭用燃料電池開発を担当する小原英夫氏は自信を見せる。

次なる目標は、この家庭用燃料電池を広く普及させることだ。小原氏らR&D部門のエンジニアたちはそれに向け、次世代の家庭用燃料電池の材料、デバイス、システムの研究開発を進め、要素技術を確立することをミッションとしている。普及を進める上で、最大の課題となるのが低コスト化だ。現状、エネファームの価格は1台200万円から300万円程度。これをより安価にし導入のハードルを下げることが求められる。それにはシステムをいかに簡素化するかが重要だ。
「キーとなるのは、やはりスタックと燃料処理機。従来はかなり精密な制御をしなくては性能が出せませんでしたが、これをある程度ラフな制御でも同じ性能を出せるようにするための材料開発を進めています。これにより部品点数を削減してシンプルなシステムとし、システム全体としてコストを下げることを狙っているのです」と小原氏。こうした取り組みは、発電効率の向上や筐体の小型化といったコストダウン以外の課題を解決することにもつながっていく。

家庭用燃料電池開発は、環境貢献を目指すパナソニックの最重点事業の1つと位置づけられ、社内でも大きな期待が寄せられている。
「責任は重大ですが、その分やりがいも充分です。今後は海外マーケットを開拓するため現地のニーズに合った製品づくりを行っていくことも大切になる。また、将来的には燃料電池を、非常用電源や自動車、モバイル電源といった分野へ展開していくことも考えられます。やるべきことはたくさんありますね」と小原氏は前を見据える。

コミュニケーション能力が高く自らスキルの幅を広げていける人材を求める

これまで全く存在しなかったものを自分の手で生み出し、世の中に送り出すことこそ、エンジニアにとって一番の喜びだろう。家庭用燃料電池開発はまさにそれを強く感じられる仕事といえる。
「2004年に大規模実証実験向けのモデルを発表した時は、まだまだ完成度が充分ではありませんでした。それが年を追うごとに洗練され、一歩一歩完成形に近づきつつある。日々の進化を実感しながら、自分がやった成果を世の中に届けられる。このダイレクト感がたまらなく面白いですね」

また、こうした最先端分野でトップランナーであり続ける上では、パナソニックの研究開発環境に支えられている部分も大きいと小原氏は言う。
「パナソニックはいろいろな技術の引き出しがある会社。家庭用燃料電池についても、そうした技術の引き出しから集めたものをまとめ上げ、1つのシステムとして作り上げたといえます。引き出しはまだたくさんあり、それらを活かして可能性を追求していける。さらに、誰もが分け隔てなく議論できるフランクな社内の雰囲気も、新しい発想を生み出しやすくしていると感じます」

燃料電池の技術革新をいちだんと加速していくことを目指し、パナソニックのR&D部門ではキャリア人材の積極採用にも動いている。高分子材料や触媒材料などの材料系技術、その材料を使ってデバイスを作るプロセス系技術、熱流体技術、さらにスマートグリッドを見据えシステム全体を提案する技術など、求める人材の技術領域は広い。
「技術に加えて備えておいてほしいのはコミュニケーション能力。開発にあたっては様々な分野の技術者と連携し、社内にある『引き出し』を開けていくことが必要になるからです。また、燃料電池開発は技術の移り変わるスピードが速いので、特定分野のことしか知らない、やらないというのでは厳しい。得意分野はさらに深掘りしつつ、自らスキルの幅を広げていける方が望ましいですね」

実は小原氏自身、14年前に大手自動車メーカーからパナソニックに移ったキャリア採用人材。「パナソニックでは誰もが一生懸命勉強し、努力を継続している。私もそれに啓発されて成長できたと感じています」と笑顔を見せる。小原氏同様、本気で燃料電池開発に取り組んで地球環境に貢献したいという熱い想いを持つ技術者にとって、パナソニックは最高のステージになるはずだ。

くらし環境開発センター
FC事業開発室 室長
小原 英夫

1988年に大学(機械系)卒業後、大手自動車メーカーに入社。その後’96年、松下電池工業(現・パナソニック エナジー社)に転職。ポータブル、EV向け燃料電池開発を経て、2000年から現部署に移り、家庭用燃料電池の研究開発に従事している。