04 エネルギー問題×世界初 人工光合成

二酸化炭素を、燃料などの有用なエネルギーに変換できないか。地球温暖化とエネルギー問題を同時に解決する夢のテクノロジーとして、世界中の研究者が実用化に向けてしのぎを削るこの分野で、世界最高の太陽エネルギー変換効率を実現したのがパナソニック。そして入社5年目にして開発にかかせないキーマンの一人に成長したのが、チーム最年少の羽柴である。

粘り強く成果を重ね、
一歩一歩ゴールをめざす日々。

羽柴が担当しているのは、二酸化炭素を別の物質に変換する「触媒」の研究。触媒とは特定の化学反応を促進する物質のこと。パナソニックでは触媒に金属を使用しており、金属の材料設計次第で、生成する有機物の種類を変えることが可能となる。「母体となる金属に他の金属を少し混ぜると、触媒の性質ががらりと変わることがあるので、すごく興味深い分野です。どの金属を混ぜると何が起きるか、最も効率的に有機物へと変換させるにはどんな触媒がいいのか、さらには触媒の種類だけでなく実験する環境によっても性質が変わってくる場合もあるので、それらを日々の実験を通じて粘り強く探索しています」。大学時代に物理学の基礎研究を専攻していた羽柴にとって、生物・化学領域というまったく畑違いのテーマであったため、当初は実験の進め方や道具の洗い方にも戸惑うほどだったという。だが、そんな中にあっても、羽柴持ち前の粘り強い研究姿勢は、新たな未来を切り拓くことになる。

無機物から有機物を
生み出すという「発想の転換」

パナソニックは2012年夏に、植物と同じレベルの0.2%という世界最高の変換効率を実現した。他の研究機関では、植物による光合成の複雑なプロセスを再現することに主眼が置かれていたが、パナソニックの研究者たちは植物の仕組みを模した有機触媒ではなく、無機材料だけで変換の仕組みを作る方向へと発想を転換。見事にブレイクスルーを可能にした。有機触媒と比べ、金属触媒は有機物を生成する速度を高められるため、照射する光を強くすればするほど有機物の生成量を増やすことができる。羽柴が取り組む金属触媒の開発は、まさに世界の最先端を走る原動力の一つとなっていた。「私の行う実験が、世界中の研究者にとって未知の結果を日々生み出しているという事実。それは何より大きなやりがいとなっています。誰一人答えを知らない最先端の分野で、世界で最初に答えを発見しているのが自分であること。そうやって得た答えを基に新たな道を切り拓いていけることは、研究者にとってこの上ないモチベーションとなっています」。羽柴は、二酸化炭素のエネルギー変換分野において、世界の最先端を走る研究者に成長していた。

未来をつくる研究には、
結果を出せる環境が不可欠。

ただ、世界初の快挙は、羽柴だけで成し遂げられたものではない。社内に多種多才な専門分野の研究者がいることが大きいと、羽柴は語る。「今回の技術開発では、光を吸収する光触媒にLEDの材料である窒化ガリウムを使うことを提案し、一気に変換効率を高めるきっかけをもたらしたのは、かつて半導体デバイス部門にいた先輩研究者でした。いろいろな角度からアイデアが出てくるので刺激を受けますし、自分を成長させてくれる点で人材の豊富さは本当に魅力ですね」。そんな刺激的な環境の中で、いつも羽柴が心がけていることがあった。「予想と全く違うから『失敗だ…』と落ち込むか、『新しい発見のチャンスだ!』と考えるかで、次につながるかどうかが決まる。その実験結果が何を表しているのか、機械の調子が悪いだけなのか、奥に隠れた深い意味があるのか、自分自身が粘り強く考え続けることで見えてくる答えもある。そういう意味では攻めの気持ちを持ち続け、自分の心を常にポジティブな状態にしておくことを心がけています」。充実した研究環境と前向きな自分の気持ち、その両方が重なった時に、新たな成果が生まれるのだ。

「循環型エネルギー社会」の実現を
夢物語では終わらせない。

一度決めたことに対して粘り強く取り組める気質が自分の武器だと語る羽柴。世界最高の変換効率を実現したとは言え、CO2エネルギー化への道のりはまだまだ遠い。だがパナソニックでは、工場やプラントから排出される二酸化炭素を吸収し、エタノールを生成するプラントを稼働させることを将来的に構想している。「夢のような技術だとよく言われますが、夢物語で終わらせるのではなく、早く何らかの形で社会に貢献したい。ポテンシャルが極めて高い領域ですし、実現させたいことが山ほどありますが、一つずつハードルを乗り越えることで、最終的に未来の姿を見たいなと思います。その上でまた新たな分野にも挑戦したいですね」。今日も、羽柴たちパナソニックの技術陣は一歩ずつ、循環型エネルギー社会の実現に向けて、未来を切り拓き続けている。