多様性と共生社会-インクルーシブな社会を考える-2017年7月10日(月)~東久留米市立南中学校 レポート~

2020年東京大会に向け、パナソニックが2015年から取り組んでいる「オリンピック・パラリンピックを題材とした教育支援活動」。従来の3つのプログラムに加え、今年4月から新たに「多様性と共生社会」という4つ目のプログラムが加わりました。
ここでは、障がいがある方々との関わりを通し、多様な個性を理解することをテーマとして、共生社会を実現するためには何が必要なのか、自分たちには何ができるのかを考える授業になっています。その一環として、先日、東京・東久留米市にある東久留米市立南中学校にて行なわれた特別授業の模様をレポートします。

“多様性”を認識した人材をはぐくむ

今回、「多様性と共生社会」の教育プログラムが実施されたのは、このプログラム④の開発段階から、試験的に授業を行うモニター校として参加してくださっていた「東久留米市立南中学校」です。もともと同校は、本プログラム以外でも、たとえば国内外のアスリート(障がい者アスリートを含め)を招いて特別授業を行い、生徒たちのグローバルな視野を育みながら、社会や人の多様性を実感・理解するための「オリンピック・パラリンピック教育」に積極的に取り組んできました。その流れもあって、この新しいプログラム④の実施となったわけです。では、7月10日(月曜)に行われた、東久留米市立南中学校3年生(142人)とパナソニック吉備(*)との交流授業の様子をご紹介しましょう。

東久留米市立南中学校
東京都東久留米市学園町にある公立中学校。昭和47年に市内で4番目に開校した歴史ある学校です。

*パナソニック吉備株式会社
日本で初めて第三セクター方式(岡山県吉備中央町・パナソニックの共同出資)による重度障がい者多数雇用事業所、パナソニック株式会社の特例子会社として1981年(国際障がい者年)に創業。同社では障害のある人もない人も共に働き、事業活動を行っています。

コミュニケーションの重要性

7月10日に交流授業を行うにあたって、6月下旬、生徒たちは事前学習を行っていました。テーマは「共生社会を実現するうえで、いま日本が抱えている課題は何か」。

ここでは、プログラム④のケーススタディ資料を使用。共生社会の実現に課題を感じている4人の社会人(市職員、会社員、技術者、障がいのある方)のコメントを読み、どう感じたか、解決するにはどうすればいいかを具体的にディスカッションしました。そこであがったさまざまな意見をまとめ、本番の交流授業にのぞんだのです。

体育館で授業開始を待つ東久留米市立南中学校の生徒

パナソニック吉備・製造部の山田隼平さん(右)、上司の川上輝昭さん(左)

当日、体育館には大きなモニターが設置されました。画面に写っているのは、スカイプで繋がるパナソニック吉備・製造部の社員、山田隼平さん(パラカヌーの強化選手)、そして上司である川上輝昭さんです。

山田隼平さん(パラカヌーの強化選手)

交流授業スタート!

まずは生徒全員で「よろしくお願いします!」と元気よく挨拶し、交流授業がスタート。
授業の流れは、最初に1~4組の生徒たちが事前学習での課題を発表し、パナソニック吉備ではどのように取り組んでいるのかを質問、それに対して山田さん・川上さんが答えるというQ&A方式で進みました。

授業がスタート!まずは生徒全員で「よろしくお願いします!」

生徒たちが山田さん・川上さんへ質問

〇障がい者が住みやすい街づくりについて:担当1組

Q:「障がい者へ情報を伝える時に、どのような工夫をしていますか?」(1組代表者)

A:「掲示物を車イスの高さに合わせたり、聴覚障がいの方とは筆談を行ったりしています」(川上さん)

〇アクセシビリティ向上について:担当2組

Q:「いまの日本には、施設とサービス、どちらが不足していると思いますか?」(2組代表者)

A:「不足している面は確かにあるが、障がい者とコミュニケーションを取ることで、解決策が見えてくるはずです」(川上さん)

〇障がい者に対する考え方について:担当3組

Q:「日本では“障がい者は守るべき存在”という意識がありますが、それをどうやって変えていきましたか?」(3組代表者)

A:「“障がいがある・ないは関係なく、困っている人がいたら助ける”という意識を持つことです。障がい者を特別扱いする必要はありません」(川上さん)

〇パラリンピックなどのイベントについて:担当4組

Q:「障がい者の方々とスポーツやレクリエーションを楽しむ機会がありますか?」(4組代表者)

A:「秋に開催される車いすふれあいロードレースは10年以上続いていて、その他のイベントでは桜祭り、夏祭りなどがあります。それらは、皆がコミュニケーションを図れるいい機会になっています」(川上さん)

スカイプでのタイムリーな交流が進んでくると、
生徒たちは内容にどんどん入り込んでいる様子。
そしてさらに、山田さん・川上さんへの質問は続きます。

Q:「共生社会をどのように捉えていますか?」

A:「私はこの吉備工場にいると、自分が障がい者だという感覚を持ちません。普通に接してもらえるからです。それが共生社会への一番の近道だと思っています」(山田さん)

Q:「一緒に働くことに抵抗はありましたか?」

A:「最初は手助けすることばかりを考えていましたが、接するうちに、特別な存在ではないと気づきました。やはりコミュニケーションを取ることが大切で、それは、障がい者だから、ということではないように思います」(川上さん)
 

これ以外にもさまざまな質問が飛びましたが、
残念ながら45分という時間はあっという間に過ぎ…。
この交流授業は生徒たちにとって、共生社会に向けた考えを深めるとともに、
新たな気づきを得る有意義な時間となったようです。

授業で得た思いを仲間と再確認

授業を終えた生徒たちは教室へ戻り、あらためて今回の授業で学んだことや印象に残ったこと、これから実践したいことなどをグループで話し合いました。パナソニック吉備の方々のお話を聞く前と後とでは、ずいぶん意識が変わったと語る生徒がほとんど。「授業前はやはり障がい者を特別に思っていたけれど、そうではなく、自分たちと何も変わらないという意識を持つことができた」、「障がい者でも健常者でも、できること・できないこと、得手・不得手があるのは同じこと。コミュニケーションを取って、互いの個性を尊重することが何より大切だと思った」というコメントも。生徒たちが、そうした思いや意見を仲間同士で共有することも、今回の授業の大きな目的です。

障がいは“特別”ではないこと

今回の教育プログラム「多様性と共生社会」では、“障がい”との関わりについて考えてきましたが、授業を終えた生徒たちは口々に、「“障がい”を特別視する必要はない」「コミュニケーションを取るなかで、もし求められるならば手助けをすればいい」「あくまで人同士の付き合いであって、障がいの有無で接し方を変えるべきではない」と語っていました。このプログラムを通して実感したことは、“障がい”は特別なことではないということ。パナソニック吉備の山田さんからも、「とりたてて気を使わず、できれば普通に接することが大切」というお話があったように、障がい者という垣根を取り去り、純粋に人×人として付き合うことが、共生社会に向けた一番の近道だということを、生徒たちは大いに学んだようです。

生徒コメント

●佐滝葉名(さたきはな)さん

「この授業を受ける前は、障がい者の方には気を使ったり助けたりしなければいけないと思っていました。でも、今日の山田さんのお話を聞いて、気軽に話しかけたり、快適に仕事ができる環境を調えたりと、共に歩んでいく姿勢が大事なのだと思いました」


●佐々木悠真(ささきゆうま)さん

「障がい者の方とは、体のことにおいてちょっとした違いはありますが、人として生活しているうえでは何ら違いがありません。それを実感できたことが良かったですし、2020年東京大会では、パラリンピックのボランティアを、ぜひやってみたいと思っています」

川上智校長先生のコメント

「世の中には、障害がある人・ない人、日本人・外国人、性別や年齢などさまざまな多様性が存在していますが、そうした人々が共生できる社会を実現するために、自分だったらどうするかを自発的に考えてもらいたいという思いで、この教育プログラムに取り組みました。生徒たちには、2020年オリンピック・パラリンピックを一つのきっかけとして、多様性や共生社会についてさらに考えを深め、その先の社会に何かを発信できるようなグローバルな見方・考え方を身につけてほしいと思っています」

川上智 校長先生