助成を受けられた団体(子ども)

子ども分野・2010年に取り組んだ組織基盤強化事業 報告書(概要)

事業名

学生プレーワーカー育成・派遣システムの中核となるコーディネーター育成プログラム

団体名

特定非営利活動法人福岡プレーパークの会

事業目的

(1) 学生プレーワーカーに関するコーディネーターを育成する。

(2) コーディネーターを育成することによって、学生プレーワーカー同士の交流や取りまとめ、現場への派遣手続き、現場との意思疎通の円滑化、さらには、大学・行政等との緩やかなネットワークづくりに尽力する。

(3) それらを通して、福岡が面として豊かな遊び環境になることを目指す。

事業目標

(1) コーディネーターとして必要な「スキル」や、現場での「実践力」を身につけた、学生プレーワーカーに関連するコーディネーターを5名育成する(大学や学年のバランスを考慮して、7名を対象として講座を実施)。

(2) 各大学のコーディネーターを軸とした、子どもの遊びに関わる大学生同士のネットワークを構築しながら、行政・大学との協働を図り、学生プレーワーカーを育成し、現場に派遣するシステムの土台をつくる。

事業概要

(1) 月1回の定例ミーティングを通して、コーディネーター同士の繋がりを深めるとともに、コーディネーターとして必要な「スキル」を身につける(具体的には、アイスブレイク、コミュニケーションスキル、イベントの企画・立案、心理学スキル、チラシの作り方、広報の際の留意点等)。

(2) 「実践力」を身につけるべく、コーディネーターらが、自ら企画・立案し、実践する機会を設ける(具体的には、デイリー・プレーパークの実施や、学生企画シンポジウム等)。

(3) 身につけた「スキル」や「実践力」を活かすべく、並行開催している学生プレーワーカー育成講座の中で、ファシリテートやコーディネートを担当する(講座の進行の担当、プレーパーク実習の場の提供等)。

(4) 視野を広げるべく、先進的な関東のプレーパーク等の現場を見学し、現場の人々の生の声を聞くことで、学びを深める。

事業の成果と課題

 非常に大きな成果を得ることができた1年間であった。それは、当コーディネーターの受講生が、頼りになるパートナーとしてしっかりと育ってくれたことである。2008年度から毎年行っている「学生プレーワーカー育成講座」にしても、福岡市とともに行っている「わいわい広場(放課後等の遊び場づくり事業:小学校の放課後に校庭で子どもたちが自由に遊べる場をつくるという事業)」にしても、彼らが中心となって動いてくれることによって、当団体のメインスタッフにかかる負担も激減した。組織基盤強化という視点で見ても、当団体の一番の脆弱性は、求められる仕事量に対するスタッフの人員不足という点であったが、その課題を十分に補えたことが、何よりの成果である。実際に、この受講生の存在がなければ、毎年確実に増えてきている仕事を確実にこなすことは難しかったと思っている。

 この事業に関して、私たちスタッフが議論した中で「ポイント」だと認識していたのは、この学生コーディネーターたちが「いかに主体的に活動していくことができるか」「私たちがそれをどのように促すことができるか」という点であった。これまでの「学生プレーワーカー育成講座」のように、彼らが受講生という立場で何かを“教えてもらおう”というスタンスでは、どうしても私たちスタッフが気を配り、支援していく体制からは抜け出せないと感じていた。そうではなく、彼らが自ら“こうしてみたらどうだろうか”と主体的に考え、それを実際に自分たちの手で“やってみる”というところまで高めていくことで、彼らが独り立ちして(私たちとパートナーとして)活動していくことができるという在り方が理想であった。また、彼らが主体的かつ創造的に活動できるようになることこそが、当人材育成で目指すべき育成像であったし、そのレベルに到達することで、結果的に私たちの組織にとっての基盤強化となると考えていた。そのための私たちスタッフの関わりは、当初は正直言って試行錯誤であったが、受講生たちの力に助けられて、理想的なかたちで1年を終えることができたと思っている。
 受講生たちに、1年を振り返ったレポートを書いてもらったのだが、その中にこのような文章があった。

 「このゆる~い集まりを通して、私は確かな変化を自分の中に感じています。活動を強制するわけでもなく、放置するわけでもなく、みんなで集まって今後を考えていく。そして、動いていく。正直、ゆるさ故のもどかしさや戸惑いの方が最初は強かったです。何を求められているか、どうしたら良いのか、何が今までと違うのか、どのようなスタンスで関わったら良いのか、コアなメンバーというのは自分には荷が重いのでは…?など、気軽に参加表明してしまったこともあり、多くの不安を感じました。でも、ある時気付きました。『自分たちでやりたいことをやっていったり、創っていったりすれば良いのか!』って。きっと私の感じていた戸惑いは、今までと違って何も与えられないことへの戸惑いだったと思います。今までプレーワーカー育成講座のうちは、与えられることや提案されたことを精一杯自分たちらしく楽しむだけで良いという感覚がありました。でも、今回はヒント程度で企画や準備、運営も全てメンバーで進めていきました。不安や迷いを感じながらもみんなと活動を重ねていくうちに感じた達成感や自信、手ごたえが『私にもできるかも!やってみたい!』っていう気持ちにさせてくれたのかなーっと思います。スタッフのみなさんも意識的に(?)私たちに大切な仕事をどんどん振って下さったし、きついこともあったけれど、やってみて良かったことも多いです。(個人名等省略)」

 このように、受講生自身も、与えられたことに取り組むという姿勢から、自身が主体的に生み出し、取り組む姿勢へと変わってきたことを実感しているということが、嬉しい限りである。

 これまでの事業も含めて、私たちが大事にしているキーワードは、「ゆるやかさ」である。最初から育成プログラムを固定化せず、流れに即したかたち(受講生の主体性・創造性に委ねるかたち)でプログラムを進めてきた点に特徴がある(もちろん、多少の促しをスタッフが行ってはいるのだが)。例えば、8月に立ち現われた「ちょびっとプレーパーク」「デイリー・プレーパーク」は、6月の「関東先進事例での実習」に大いに刺激されている。また、7月の「学生企画シンポジウム」を受けて、『自分たちが動きたい!』という思いにも駆られたことも想定される。それらの刺激が自主企画というかたちに繋がり、それを受講生自らが手がけたことに意味があると思っている。この夏の時期が、この事業の大きな転換点(受動から能動への)であったことは間違いない。このように、当講座の実施において、受講生が主体的に企画するように促し、支援できたことに手応えを感じている。
 もちろん、このようなプログラムの進め方には、計画側からすると不安があったのも事実ではあるが、そもそも、私たちの団体が大切にしている「主体的な遊び」にしても、こちらがプログラムするわけではなく、「その場で創り上げていく」ことに意味があるわけで、その営みと同じであると再認識することもできた。
 ちなみに、受講生たちの活躍は目覚ましく、当事業内に留まらず、様々な自主企画(「子どもの遊び」には限らない学生交流イベントやシンポジウムなど)を立ち上げるようになったことも書き留めておきたい(もちろんそれは、当事業の影響だけでなく、彼ら自身の努力の成果であるが)。また、1年間の海外留学に飛び出すメンバー、世界に旅に出るメンバー、他の子どもに関わるサークルの代表として活躍するメンバーもおり、この事業の枠に留まらず、活き活きと主体的に活躍していってくれたことが(そしてそれを当団体にも還元してくれたことが)、喜びでもあった。

 このように、成果をひしひしと感じつつも、それが自己満足であっては意味がない。そのようなときに自信を与えてくれたのが、福岡市との共働事業の採用決定である(正式発表は2011年2月15日)。福岡市が課題とする「放課後等の遊び場づくり事業における遊びの支援・活性化」に対して、「学生プレーワーカー育成・派遣システム構築事業」を提案したところ、見事採用され、2011年度より本格実施の運びとなった(上述している「わいわい広場」の実践である。これまでは市の事業に協力する(2校)というかたちであったが、来年度は共働事業として予算が組まれ、計7校での実施を予定している)。これはもちろん、当団体の活動や、当事業の受講生の活躍が認められたことは言うまでもない。着実なステップアップができていることを実感している。

 もちろん、反省点もある。結果的に受講生が主体的に活動できるようになったとは言え、自由度を高くし過ぎた分、最初には受講生に戸惑いも多かったことは否めない。エンジンがかかり始めるのに時間がかかったようにも思う。12月の定例ミーティングで受講生と1年の反省をし、来年に向けての話し合いをした際にも、最初はもう少し枠組みを提示し、その枠組みの中で最大限自由に活動をするという経験を踏まえてからでないと難しいという貴重な指摘を得た。受講生の現状をしっかりと把握しながら、どこまでが団体主導で、どこから受講生主導に切り替えていくかの判断を明確にすることが重要だと考えている。
 その際、当団体スタッフがどのように関わったのか(受講生への働きかけ方等)をきちんと記録し、自明化させていくことを、今回は怠っていた(そこまでの余裕がなかったというのが正直なところである)。その関わりの試行錯誤のプロセスをきちんと客観的に見つめ直すことができれば、この人材育成プログラムを今後も継続して行っていくに当たって、非常に有用な情報になると考える。経験則だけに頼らず、その関わりを目に見えるかたちとして残していくことを、来年度の課題としたい。
 また、中間報告にも記載したが、周囲からの期待に伴って仕事量も増え、忙殺する日々が続いている。結果として、スタッフ間の綿密な打ち合わせができていないことが課題となって浮上してきた。ただ、この1年間で信頼できる人材が育ってきたわけで、当事業の受講生を含め、より充実したスタッフ間ミーティングを密に行っていきたい。そして、当団体として担うべき仕事の優先順位・役割分担を明確にし、マンパワーと仕事量の兼ね合いを考慮した上で、活動を着実に進めていきたいと思っている。

 このように反省点も多々あるが、これから当団体が、ひいては福岡の遊び環境が大きく飛躍するための、重要な人材基盤の土台が構築できた。この貴重な芽を、受講生とともにしっかりと育んでいきたいと思っている。その可能性は、大きく広がっているはずである。最後に、その思いを同じように感じてくれている受講生の言葉を記載して、成果と課題の報告を終えたい。

 『この1年で、やっとメンバーとの関係や皆で考え活動していくというクリエイティブな雰囲気が漂ってきたところです。まだまだこれからが面白い私たちではないかと、私は思っています。このゆる~い繋がりの可能性をとても感じています。今年度のみならず、今後もこの豊かな交流や活動の場が続き、広がっていくことを願っています。』

 『遊結友(当事業の愛称)はゆるやかな繋がりだ。そのゆるやかさの中で人と出会い、面白い経験をしている。きっちりした繋がりでなくとも、繋がることでできることがある。月に1度の集まりでも、やりたいこととそれを実現するために一緒に動ける仲間がいれば、面白いことができそうだ。遊結友では他大の仲間が増えた。これからはこのネットワークを基盤に自分の所属する大学の中で、同じようにゆるやかなネットワークをつくりたいと思っている。誰かと繋がることが自分の活動の参考になったり、気づきを生んだりした。また、ゆるやかだからこそそれぞれ自分のフィールドを持つメンバーでも続けていけたと思う。
 「子ども」をキーワードに、仲間と協力しながらネットワークをつくり、広げていきたい。』

今後の取り組み方針

 今回育んできた当事業は、元々1年計画ではなく、継続的に実施していくつもりでスタートさせている。今年その土台ができたので、今後はさらに有意義なかたちで活動できる仕組みを構築していきたい。受講生メンバーは2名卒業してしまうが(そのため当初の予定よりも2名増やしてスタートした)、新たに4名メンバーを加えたかたちで既に動き始めている。子どもの遊びに関わる大学内・大学間のネットワークも、少しずつではあるがかたちになってきた。焦らず着実に、この歩みを続けていきたい。大学生の多い福岡だからこそ、大学生を中心とした人材育成を手掛けていくことで、ひいては当団体の組織基盤強化・福岡の子どもの遊び環境の発展に繋がってくるはずである。
 また、福岡市との共働事業へと大きなステップを踏み出すことができたわけではあるが、これからが当団体としても非常に大変な時期に突入する。規模が大きくなるということはその分責任も伴うわけで、じっくりと取り組んでいかなければならない。その共働事業の枠組みの中に、当コーディネーター育成講座のメンバーがどのように入り込み、どのような働きをしていくのかを具体化できていないのも事実である(もちろん構想には含まれているが)。私たちの手がける人材育成と、行政の事業とをうまくコラボレーションさせながら、有意義に展開していく道筋を見出していくことも、今後の大きな課題であると考えている。