助成を受けられた団体(子ども)

子ども分野・2010年に取り組んだ組織基盤強化事業 報告書(概要)

事業名

医療的ケアが必要な子どもたちも共に成長できる保育の発展のための組織強化事業

団体名

特定非営利活動法人こどもコミュニティケア

事業目的

(1) 医療的ケアを必要とする子どもたちが社会参加し、療育家庭を保育によって支えるため、保育チームの強化を図り、看護師を確保し、組織的に保育を提供できる態勢を整える。

(2) 医療的ケアや保育に関わる発信や、共生保育の人材育成、資金開拓、他機関やNPOとのネットワーク造り、調査研究、アドボカシー活動などにも時間と労力を投入できる組織をつくる。

事業目標

(1) スタッフがミッションや課題を共有し、チームでケアを作り出す仕組みと組織風土を醸成する。

(2) 登録ナース制度を発足させ、要医療ケア児へのサービス提供を安定化させる。

(3) 日常業務の効率化を図り、保育事業の基盤を強化し、2011年度に受益者数の拡大(年間利用者4,800人)をめざす。

事業概要

(1) 保育スタッフ会議の開催

(2) スタッフ一人一人のコミュニケーション力と分析力を磨く

1)ケースカンファレンス・ショートカンファレンスの定期実施
2)スタッフのコミュニケーション力の向上を図る。
・コミュニケーションの基本を理解し、誤解を招くコミュニケーションの癖を知って、他の方法を取り入れていくための研修を行う。
・保育スタッフたちが(1)の会議を自分たちで運営していくためのスキル(会議の持ち方やメンバーシップ)を学ぶ機会を設ける。

(3) 登録ナース制度の発足

(4) 業務の仕組み化・効率化・ボランティアコーディネートの開始

事業の成果と課題

目的1)スタッフがミッションや課題を共有し、チームでケアを作り出す仕組みと組織風土を醸成する。

スタッフ会議とコミュニケーション研修、各種ツールの開発と活用を通じて

先日、元保育士の法人役員が「現在の保育の様子の視察を」と来園された。その際のフィードバックは下記の通りであった。

  • 保育スタッフがそれぞれの持ち場を持ちつつ、言葉を掛け合いながらフォローしあって子どもの安全を守り、遊びやケアを展開させている。ちょっとしたトラブルなどがあっても、大人たちがそれにばかり気を取られることなく、慌てずに落ち着いて対処できている。
  • 子どもたち、スタッフたちの笑顔がとてもよい。リラックスして過ごせている様子がよく分かる。
  • 大きな家族のようだった。
  • 食事中にてんかん発作を起こした子どもを、ごくごく自然な感じで思いやれる他の子どもたちの姿に感動した。
  • スタッフ全員が、にじいろのやり方で、共通意識を持って、一生懸命に保育に取り組もうとする姿勢がみられたのはよかった。
  • この姿勢で日々丁寧に保育に取り組んでいけば、これからもっと充実した保育ができると思う。
  • ふとした時の子どもへの声がけの選び方もどんどん適切になってくると思う。
  • 月極めと一時保育とを一緒に見て、本当に難しいことだと思うけど、少しずつかたちが出来てきているし、今、とても大事な時期なのではないかと、思った。
  • 手作りマークがとっても良かった。
  • 以前より、掃除や片付けが丁寧かつ早くなっていた。スゴいぞ、スタッフ!

 昨年度は、小さなトラブルがあった際には「私は知りません」「分かりません」というスタッフがいる一方で、トラブルに何人ものスタッフが寄っていって、他の子どもたちの安全が確保しづらい状況になることもたびたび見られたが、このようなコメントをいただけるようになったことは、大きな成果であると考えられる。インシデント・アクシデントレポートを活用していくことで「何となく怖い」「不安」から、「○○が起きればこういう大けがにつながる可能性がある」「それを防ぐためには、どんな手立てが必要?」という具体的なイメージと解決的発想のトレーニングにつながっている。当初はインシデント・アクシデントレポートも、客観的事実をうまく記載できず、解決策も「以後は気をつける」といったものが多かったが、他の人が書いているものを読み、自分でも書くことを通じて、上記のトレーニングが行われていると感じられる。
 また、フォローアップ・ミーティングでは、プロセスレコード形式で状況を報告し、参加者全員でその時に起きたことを共有し、分析することを繰り返してきた。昨年度までは、スタッフ間でも「○○くん、ちょっと落ち着きがない」とか「わがままが多い」という主観的・評価的な表現がよく聞かれたが、今年度は、お互いに「○○くんの△△という行動が、食事への移行を邪魔していると思う」などの表現が見られ、現場から離れた場所で、落ち着いて気軽に話し合うことができ、休憩室などでも同様の会話が交わされるようになった。また、子どもの様子を3分間、とにかく客観的に書き取り、それをシェアしあう機会を創るなど、「事実の客観的把握」「事実を伝える」「自分の主観を伝える」という3段階に分けるトレーニングを行った。これらにより、チームで課題やねらいを共有し、エビデンス・ベースド・ケアを行うための基本的なスキルと視点の醸成に寄与したと考える。
 今後は、これらに加えて、子どもの発達への理解をより深める知識、チェックリストや評価表の活用、家族を含めたケアの視点などの習得を重ねていく予定である。

 また、代表理事と事務専従職員は、意識的に「チームでやろう」「みんなで考えよう」などと声をかけ、結果重視のスタッフが急ぎすぎたりしないように、また熟考型のスタッフが置いていかれた感じを持たぬよう配慮する一方で、相手の事情やペースに合わせて「とりあえずはやってみる」ことが、よい結果がもたらすことを話し、事後にその感想を聞くなどして、実感してもらっている。今までなら、熟考型のスタッフが焦ってしまって失敗したり、スピーディなスタッフに対して劣等感を持ちがちであったが、「自分は自分のペースもあるが、チームとしての成果にどのように貢献できるのか」という視点を持ち、自分なりに役割や責任、やりがいを感じ始めている言動をたびたび目にするようになった。
 お互いに「自分とはペースが違うこと」「大切だと思うことが違っていること」を「温度差」としてマイナスに捉えるのではなく、「違っているんだ」という事実を認識し、その上で「そしたら、何ができるだろう?」「私の(相手の)強みを活かせるところは何だろう?」という発想につなげつつある。
 「仕方ないよね」「難しいよね」という言葉が頻繁に出ているスタッフに「仕方ないと思うんだね」「その難しいところを、転換するために、何があればいいと思う?」という返事を返すことで、今までは「仕方ない」で停止していた思考に変化が生まれる場面に何度も遭遇した。
 論理的に物事を捉えたり、説明したりするのが苦手なスタッフが、接続詞を多用せず、一文一文区切って話す、考えているときは黙り込まずに「ちょっと考えています」などを伝えたり、「今、考えたことだけで、他にも後から出てくるかもしれないのですが」と枕詞をつけて話し始めることで、スムーズなコミュニケーションを図る方法を研修で学び、約半年の実践で、大きな成長を見せた。
 謙虚といえば聞こえは良いが、いつも自分自身に対して「できていない」「私なんか」「私のやり方がよくなかったから結果もダメだった」と常に言い続けているスタッフには「その言葉は、自分にとって、元気の出る言葉? それとも、元気が減っちゃう言葉?」「その言葉を聞いている周りのメンバーや、子どもたちは、どんなふうに感じるだろう?」とセルフトークの影響について気づきを促すことで、自分の目標とセルフトークという行動との間のギャップを認識したケースもあった。
 当法人は、30-40代の女性、しかもパートスタッフが多数を占めているが、今年度に入り、数名のスタッフから「この歳になって、自分が伸びていく感じが分かる。自分でも、とてもびっくりしている」という感想を得ている。安心してその場にいられること、チームに所属している実感があること、お互いに助け合っていると実感できること、相手に感謝されること、自分のやったことを認めてもらうこと、自分が成長していけることは、組織へのコミットメントを深め、チーム力の強化につながるものと期待している。
 代表理事だけでなく、チームメンバーがお互いに声をかけたり、話を聞いたりして、共感や理解を示し、就労継続を支援してきた。キャリアカウンセラーでもあるコミュニケーション研修講師から、キャリアアップにつながる転職についての一般的情報も得つつ、日々の仕事や知識・スキルの習得にも尽力している様子が見られる。
 昨年度は「法人のミッションには共感するが、手法が合わない」として、話し合う前に離職するスタッフが数名いたが、今年度は遠方への転居による離職者のみであった。
 細かいことでもメンバー同士や代表理事と話し合える「何についても、伝える、話し合う」「繰り返し話す」「繰り返し聞く」という風土が醸成されつつあると感じている。

目的2)医療的ケアや保育に関わる発信や、共生保育の人材育成、資金開拓、他機関やNPOとのネットワーク造り、調査研究、アドボカシー活動などにも時間と労力を投入できる組織をつくる。

業務の構造化、マニュアル作りを通じて

 2009年9月から2010年夏にかけて、理事1名が中心になって、医療的ケア児に関わる家庭や施設にヒアリング調査行い、啓発イベントを開催した。事務局員が広報や受付などに奔走し、保育スタッフもイベント準備などに協力するなど、「法人の事業が保育だけではなく、他の大切な事業もあること」を実感するよい機会になったと考えている。
 また、構造化を進めるなかで、事務局員を中心に、自分たちの業務を振り返り「あれは○○さんの役目」と決めてかかっていたところを「みんなで手分けできないだろうか?」「○○さんが休んじゃったら、できない、というのでは困るよね」という気づきを得られた。女性ばかりの職場で、家族の看護休暇、自身の妊娠・出産など、さまざまな突発的な変更や、ライフイベントがある中で、どのように業務を円滑に進めるのか、どのように補い合えるのか、という視点を育成できたと思う。
 事務局専従職員の妊娠・産休(2011年2月より)は、この構造化の作業にいっそうの必要性をもたらしたものと考えている。
 今後は、このマニュアルを年に1回程度は見直し、手を入れながら、新人やボランティアの育成、自分たちの業務効率化、ミッションや目的の再認識につなげていきたいと考えている。
 パートタイマーの事務職員が飛躍的に成長し、日々のルーチン作業から、新規入園者の対応、保育スタッフとの調整作業などをこなしていける力をつけたことで、専従職員と代表理事が、人材育成や情報発信について話し合ったり取り組んだりする時間がかなり増えた。
 また、保育の中での判断基準を明文化していくことで、保育スタッフで判断できることが増え、代表理事に判断を仰ぎに来ることや、保護者対応を依頼してくることも減った。安全を確保しつつ、自分たちの業務にプロ意識と自信を持って取り組めるようになってきたと評価している。
 代表理事がまだ持っている業務も少なくないが、事務専従職員の育児休業中の業務達成目標を適度に構え、数年後を見据えた組織としての継続性、安定性、透明性を高めていきたいと考えている。

今後の取り組み方針

1) 保育チーム強化

コーチング的手法も取り入れつつ、今後もコミュニケーション量と質の向上を図り、エビデンス・ベースド・ケアの実践をめざす。スタッフの定着を図るために経済基盤の強化を行い、社会へ「医療的ケアの実態」「共生保育」の発信を保育チームで行うためのミッションの共有、態勢造りを行う。

2) 保育人材育成

2年間の組織基盤強化を通じて、当法人のミッション達成のための人材育成にあたり、共生保育の保育者に求められる知識・スキル・ツールを明らかにし、それを身につけるためのトレーニング・研修方法について明確化する。共生保育の保育者育成のためのプログラム作成に取り組む(2011年度助成事業)

3) 理事会機能の強化

これまでは、オーナーシップ性の強い運営スタイルであったが、よりいっそう、社会への発信を強めるためにも、運営面においても組織としての機能を強化する。今年度末に、数日間をかけた理事会を開催し、当法人の棚卸しと5ヵ年計画の策定を行う予定である。