子ども分野 選考委員長総評

選考委員長 坪井 節子
(社会福祉法人
カリヨン子どもセンター 理事長)

Panasonic NPOサポート ファンド 2013年度 子ども分野の選考委員長として、前回に引き続き、選考委員会の審査の概況を報告させて頂きます。
今回は、組織基盤強化助成あるいは組織診断助成、もしくはその双方の助成を希望する団体から、申請を受けました。助成対象を広くした結果、応募総数は54件にのぼりました。まず申請の形式的要件について、事務局で書類審査をしてもらったところ、規模、年数など明らかに要件に該当しない申請が10件ありました。これらを除く44件すべてについて、4名の選考委員がそれぞれ申請書を精読し、推薦5団体、準推薦2団体を選定して、9月30日の選考委員会に臨みました。

同日の午後一杯続いた審査の結果、4件が決定され、3件が保留ということになりました。事務局が7団体を1件ずつ訪問し、丁寧な面接を通して、さらに情報を収集し、申請の趣旨を確認していきました。その結果をもって、10月28日に、事務局と委員長で最終審査を行い、5団体への助成を決定いたしました。

今回の審査においては、件数が多かったためもありますが、特定の団体に各委員の推薦が集中することがなく、推薦が2件重なった団体が数件あっただけでした。つまり、突出して助成対象としてふさわしいと認められる団体がなかったということになります。その意味で、選考はかなり困難で、検討に時間を要しました。
まず類似の活動をしている団体を複数選考するのではなく、ある程度、活動分野別に選考するという方針としました。その結果おおよそ、子どもの活動を支援する団体、子育て中の親を支援する団体、障害をもった子どもの支援をする団体、海外での子ども支援をする団体という分野ごとに、選考をしていきました。意義ある、興味深い活動を継続されている団体が数多くあり、それぞれの団体が基盤強化の課題に気づいて、解決の必要性を認識されているわけですから、その中から1件ないし2件を選考するという作業は難しく、委員4名の意見が一致するまで、様々な視点から討議をしなければなりませんでした。言い換えれば、選考された団体と、選考に漏れた団体の間に、大きな差はなかったということになります。

結果的に選考された5団体とも、組織診断と組織基盤強化の双方の申請をしていた団体となりました。今回の募集では、既に団体内部で組織の継続維持発展のための課題が抽出されていれば、その解決のための助成金を申請して、基盤強化に踏み込むことは当然想定されていました。ただ結果的には、内部で課題を認識したうえで、さらに外部の第三者による客観的な診断を得て、抜本的な解決策を断行しようという覚悟のある団体が、選考されたことになろうかと思います。

また今回は、団体の活動の専門性と、地域への活動の広がりの双方が重視されました。専門性、独自性を有する活動でありながらも、地域に浸透し、地域の他の活動と協働し、連携しながら、地域の子ども支援をめざすというところに、NPO法人の本来の姿があるからではないでしょうか。それは海外の子どもを支援する活動であっても、障害を有する子どもの支援活動であっても、地域と離れたところで、閉じた活動となってしまっては、将来の展望はもてないのだということを、あらためて認識させられました。
もうひとつ検討課題となったのが、NPO法人の中間支援団体の組織基盤強化についてでした。当該団体が支援するNPO法人の基盤強化ではなく、中間支援団体自体の基盤強化とは、いったい何を目的とし、どのような方向性を持つべきであるのかということです。中間支援団体は、NPO法人の基盤強化が活動目的であるはずなので、その目的を達成するための自身の基盤強化とはどうあるべきなのか。今後もう一歩踏み込んで、考えていく必要のある課題だということが確認されました。

助成を受けられました5団体には、心からのお祝いを申しあげると共に、本助成金を用いて、組織基盤強化の実を挙げられますよう、期待いたしております。また惜しくも助成対象とはならなかった団体についても、申請にかけた意気込みをもって、今後の活動と法人運営の充実に邁進され、時機を得て、再び本助成金の申請に挑戦される機会のあることを願います。

なお、今回の選考委員会をもって、私は委員長としての3年の任期を終えます。審査を通じて、私自身がNPO法人の活動の広がりと、組織基盤強化の必要性、そして課題と解決策について、深く学ばせて頂きました。このような機会を与えてくださいましたことに、心から感謝いたします。この貴重な経験を、私たちの運営する法人の基盤強化に、またこれからの市民社会を支えていこうとしている仲間のNPO法人の基盤強化の応援のために、十分に活用させて頂きたいと思っています。
Panasonic NPOサポート ファンドが、これからの日本のNPO法人の発展のために、益々重要な役割を果たされることを祈念しております。

<選考委員>

★選考委員長

坪井 節子

社会福祉法人 カリヨン子どもセンター 理事長 ★

片山 信彦

認定特定非営利活動法人 ワールド・ビジョン・ジャパン 常務理事・事務局長

森本 真也子

特定非営利活動法人 子ども劇場東京都協議会 常任理事

小川 理子

パナソニック(株)ブランドコミュニケーション本部 CSR・社会文化グループ
グループマネージャー