組織診断のための多様な視点や、コンサルタントなどの外部視点で組織を見つめ直す

25年間、組織を引っ張ってきた創業者からバトンを渡されたばかりというASIAN PEOPLE'S FRIENDSHIP SOCIETYの加藤さんは、「25年かけて培われ、守っていくべき大事な部分と、社会の変化に合わせて変えるべきところがどこなのか、組織診断によって頭の中を整理できた」といいます。
これまでAPFSは非正規滞在外国人を対象に、幅広い活動を手がけてきました。ところが、いざ組織内部に目をやると、「日本人3人と外国出身者5人で構成される理事同士のコミュニケーション不足」が浮き彫りになりました。
副代表理事の吉田真由美さんは、組織診断の成果として「理事の不満が表面化したこと」を挙げ、「いずれにしても近い将来、表面化していたことなので、あとになって振り返り、あのとき明らかになってよかったねと言えるように対応していきたい」と話しました。

ASIAN PEOPLE'S FRIENDSHIP SOCIETY
副代表理事 吉田真由美さん

トイボックス
スタッフ 北村真吾さん

トイボックスの活動は、「不登校・発達障害の子どもに向けた教育相談」「ダウン症をもつ子どもへのエンターテインメントの提供」「地域活性化を目的とした指定管理事業」という3部門に分かれています。
栗田さんによれば、「目の前にいる子どもたちを手助けしたくて始めた事業ばかりなので、全体を見たとき、何をやっているNPOなのか、わかりづらくなっていた」といいます。そこで組織診断を受けた結果、「各セクションのコンセプトやミッションを言語化」することができたそうです。
また、スタッフの北村真吾さんは「プログラムの中に何度も出てきた『組織』と『ミッション』。NPOの役割って何だろうと改めて考え直す、いい機会になりました」と話しました。

日本に拠点を移して間もないCRIは「ステークホルダーの意見収集」として、神奈川県厚木市のブラジル人学校で保護者にアンケートを行いました。その結果、「日本の教育に不信感がある」「日本社会に希望がもてない」「日本人の友達がいない」など、日本人との間にある大きな隔たりが明らかになりました。
スタッフ(当時、副代表運営委員)の西原里依さんによれば、初めは助成プログラムに2人で取り組んでいましたが、回を重ねるごとに参加者が増え、最終的には7人になっていたといいます。
「なかなか作業が思うように行かず、夜の10時、11時までかかることも珍しくありませんでした。振り返れば、こういう過程が成長途中の私たちには必要だったのかもしれません。組織診断プログラムを通してみんなの中にある熱い思いを再確認することができました」

CRI-チルドレンズ・リソース・インターナショナル
スタッフ 西原里依さん

集合研修型の組織診断プログラムに参加して

CAPセンター・JAPAN
事務局 重松和枝さん

CAPセンター・JAPANには、「ノウハウではなく理念によって納得して動ける人」を育てる暴力防止プログラムがあり、トレーニングがあり、現場力がありました。一方で、一般への認知度が低く、参加者が減少傾向にあるという課題もありました。
その課題解決に向けて、グループコンサルティングという手法が採られたことについて、事務局の重松和枝さんは「初めはその意味を理解できなかった」といいます。「だけど今振り返ってみると、皆さんと関係をつくっていくステップそのものもプログラムだったのだと気づかされました。それぞれの団体に対するフィードバックが参考になるだけでなく、互いにつながっている感覚がもてる手法でした」と話しました。

横浜にプレイパークを創ろうネットワークが展開するプレイパークは、「親の子育て支援」「配慮が必要な子や発達に課題の抱えた子も好きなように過ごせる」「高齢者の方が立ち寄ったり、地域の繋がりが生まれる」などの役割も果たしています。ただ、そういった「質」は数値化しにくく、資金の調達が課題となっていました。
そんな中で髙橋さんは「同じ子ども分野でも、それぞれの専門領域やバックボーンを持った方々からの意見をいただけたのが非常に参考になった」と話しました。
また、理事長の橋本ミチ子さんは、「ほかの団体への質問や意見も自分の団体に引き寄せ、『うちと共通の課題だ』『うちはどう整理していたかな』と自問しながら聞くことで、考えるチャンスをたくさんもらえた」と感想を述べました。

横浜にプレイパークを創ろうネットワーク
理事長 橋本ミチ子さん

座談会終了後には、コンサルタントの方々からも、「応募しようと思うこと自体が学ぶ力のある証。プロセスと成果を見せていただき、こちらも学びになった」「次のステップへ進むために必要なことが、今までなぜできなかったのか。それを考えることで、もう一歩理解が深まるのではないか」といった意見が寄せられました。

2011年から2段階になった助成プログラムは、前半の組織診断助成に重きを置いています。組織を診断し、気づきを得られること自体が、とても意味のあることだからです。やりたいことを実現していくには限られた資源をどう再分配し、誰が実行するのか、今の組織でやれるのかというところまで踏み込まなくてはいけません。組織診断結果をさらにブラッシュアップし、次のキャパシティビルディング事業に備えます。