組織診断の効果

2011年度のPanasonic NPOサポートファンド グループコンサルティングコースで組織診断に取り組んだ8団体は、組織診断に取り組んだことで、今後取り組むべき優先課題や、解決の方向性が明らかになったと言っています。
例えばある団体の場合、組織診断に取り組む前は、「ミッション・ビジョンの再構築」「組織運営を担う人材の強化」「収益事業の開拓」が課題であるとしていました。しかし組織診断を進めるうちに、それまでひとりのリーダーシップに頼ってきた組織運営を、中・長期計画を策定して皆が意識統一しながら進めていくスタイルに変えていくべきだということが見えてきました。
他の団体からも「問題・課題の所在と、改善のための道のりを整理できた」というコメントがありました。組織診断を行うことで、課題が明確になり、解決の方向性が見えることは大きな効果といえます。

それと同時に、組織診断のプロセスそのものが、組織運営を担っていく人たちの運営力強化につながるという側面もあります。

団体からの組織診断についての感想の中には、
「あえて時間をとらないと日常業務では流されてしまうことについて考えを深められた」
「自分やスタッフが経営者的視点に立つことができた」
「成果志向で考えるクセがついた」
「診断シートに記入することで何人かのスタッフの意識が変わった」
といったものも多数ありました。
診断シートに答えたり話し合いの場で意見を言ったりすることで、団体運営にかかわるひとりひとりの関心やコミットメントが確実に高まり、コミュニケーション力や問題解決力の強化がはかられます。

そのほか、「目的・あるべき姿を明文化し、スタッフで共有できた」「組織全体で問題点や課題が共有され、『話し合える』土台が整った」など、団体内における共有が進み、同じ方向を向いて進んでいける基盤ができたという効果も生まれています。

組織診断を有効に行うために

組織基盤を強化したいと考えるなら、ぜひ組織診断に取り組んでいただきたいと思います。しかし団体の状態によっては、組織診断があまり有効にはたらかない場合があります。

たとえば団体が立ち上げの時期にあるとき、組織診断を行うのに適したタイミングとはいえません。組織診断で確認すべき「現在の姿(現状)」がまだ固まっていない段階なので、さまざまな情報収集が意味をなさなくなってしまうからです。診断より事業の立ち上げに注力するべきだといえるでしょう。

また、組織基盤の強化に取り組むことについて、代表者や理事会が納得していない場合は、組織診断の効果が得られにくくなります。もちろん組織診断のプロセスの中で、スタッフが経営的視点を持ったり、コミットメントを深めたりといった効果は期待できるでしょう。しかし理事会など意思決定を行う人たちが、組織診断の意義とプロセスを理解してリーダーシップを取らなければ、団体全体での合意形成がなされず、組織診断の結果がその後に活かされなくなります。
もしあなたが事務局のスタッフで、組織変革のために組織診断事業に取り組みたいと思っているとしたら、理事会の合意を得ることから始めるべきです。組織診断の必要性について理解が得られ、組織全体で優先的に取り組むことについて合意が得られたら、組織診断はうまくいったも同然です。その後の組織基盤強化の取り組みも効果を生むことになるでしょう。

日常業務を行いながら組織診断を行うのは、時間的にも精神的にも、なかなか大変です。しかし一度立ち止まって組織運営について考えるのは、ミッション達成への近道であることは間違いありません。社会課題の解決へのさらなる一歩を踏み出すために、ぜひ組織診断に取り組んでみてください。