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NPOサポート ファンド事業評価の結果 Vol.2 続・NPOのキャパシティビルディングは有効か

前回(2010年)、パブリックリソースセンターでは、2002年から2009年までの8年間にPanasonic NPOサポート ファンドによる助成を受けた112団体を対象とした調査を実施し、同助成事業の第三者評価を行った。
その結果、同助成事業を実施した助成先団体は、高い成長を続け、主要事業のアウトカムが改善・向上していることが明らかになった。

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今回(2013年)は、前回の調査対象に含まれていなかった2010年の助成団体(22団体)を対象に、新たに助成の成果に関するアンケート調査(【調査概要】参照)を実施した。
結論からいうと、Panasonic NPOサポート ファンドの助成により2010年にキャパシティビルディング事業を行った団体では、前回調査対象団体と同様、組織が成長するとともに、主要事業のアウトカム・インパクトが改善・向上していた。同ファンドの組織基盤強化に対する有効性をあらためて確認した次第である。
さらに今回のアンケートでは、主要事業のアウトカム・インパクト(事業実施数のような外形的な結果ではなく、活動の結果、社会に実際に生じた変化や影響)の改善・向上についてさらに深く掘りさげて訊いた。
本稿は、今回アンケートに回答した21団体の回答内容をもとに、組織基盤強化の取り組みによる組織の成長および、主要事業のアウトカム・インパクトの改善・向上について、評価結果の概要をご報告するものである。

財団法人 パブリックリソース財団
チーフ・プログラムオフィサー
田口 由紀絵

1、組織基盤が強化され組織が成長した

(1)半数を超える団体で、助成申請の際に抱えていた組織運営上の課題がかなり解決した

Panasonic NPOサポート ファンドの助成により2010年にキャパシティビルディング事業を行った団体のうち12団体(回答団体の57.1%)が、「助成申請の際に抱えていた組織運営上の最大の課題は、事業を実施することによって解決されましたか?」という問いに対して、「大いに解決された」あるいは「かなり解決された」と回答した。助成によって、半数を超える団体で課題解決が進んでおり、本助成の有効性を示している。

組織基盤強化の具体的な内容については、環境分野9団体のうち4団体が、中期目標・中期計画の策定に取り組み、2団体が人材育成に取り組んだ。
中期目標・中期計画の策定に取り組んだ団体は、第三者にファシリテーションに入ってもらうなど、外部の支援者の協力を得ていたことが特徴的である。
また9団体のうち3団体は、複数の団体が連携して基盤強化事業を行う「コンソーシアム助成」を受け、新組織の立ち上げや、複数の中間支援組織の連携推進に取り組んだ。
具体的な組織基盤強化の内容については、例えばコンソーシアム助成であれば、各地域でばらばらに事業展開していた複数の中間支援組織が、本助成事業によって連携を促進させ、お互いの強みを生かした事業展開ができるようになったという成果が生まれている。
また、組織の明確なビジョンや目標が定まっていなかった別の団体では、本助成により、理事会と事務局とでミッション・ビジョンを改めて確認・共有する機会を持ち、今後5年間のありたい姿、および戦略と目標を明確に定めることができた。
一方子ども分野では、人材育成に取り組んだ団体が多かったのが特徴的で、11団体のうち8団体が、サービスの提供者や運営スタッフの人材育成を行った。組織運営を担う人材や、専門人材の育成には時間がかかり、1年間の助成では効果を得るのが難しい。Panasonic NPOサポート ファンドでは、2~3年の継続助成を行うことにより、団体の人材育成が効果的に行われることを可能にしている。
人材育成の具体的な内容については、例えばこれまで専門人材が根付かないことが課題であった団体では、本助成により人材育成プログラムを作成し、実際に非常勤スタッフやボランティアを新たに6名採用して3年計画で専門人材を育成している。2010年はその1年目にあたり、すでに新規採用者が戦力になりつつあると同時に、常勤スタッフの意識が変わったり、賛助会員や寄付が増えたりといった効果が表れている。
また別の団体では、助成1年目に学生ボランティアの育成事業を実施し、2年目にあたる2010年には、学生ボランティアをコーディネートする人材の育成を行った。コーディネーターの役割を担えるボランティアが複数名育つことで、行政との協働がすすんだり、人材育成事業を収益事業として展開したりするなど、団体の活動の幅が広がっている。

(2)助成対象団体の助成後の総収入が増加した

助成前年(2009年)と助成1年後(2011年)の年間総収入を比べた場合、平均して30%の収入の増加が見られた。助成は組織の成長にも寄与したといえる。
ちなみに前回調査では、平均60%の増加であった。60%から30%に減少した要因としては、前回の調査対象団体の財政規模が今回のものよりも小さく(年間財政規模が1,000万円以上の団体の割合は、子ども分野では前回41.4%であったが、今回調査では81.8%にのぼった)、収入の伸び率の幅が今回より大きくなりやすかったこと、東日本大震災の発生により利用者や収入が伸び悩んだことなどが推察される。

(3)有給スタッフ、ボランティア数が増加し、組織運営や活動の担い手が増えた

助成先団体の有給スタッフ数は、常勤・非常勤をあわせると、助成実施前と現在とでは平均82%増加した。一方で無給スタッフ数は、常勤・非常勤をあわせると31%減少している。有給スタッフ数が増加傾向にあり、組織運営の体制が整う方向にあるとみられる。
またボランティア数においても、助成実施前と現在とを比べると、2倍以上に増加している。活動の担い手であるボランティア人材の育成・強化が図られたといえる。

2、アウトカム・インパクトの改善・向上がはかられた

組織基盤強化の取り組みにより、主要事業のアウトカム・インパクトの改善・向上がはかられたかについて、以下の4つの項目で自己評価してもらった。
(1)受益対象者の範囲や人数の拡大
(2)取り組んでいる社会課題の解決に対する影響
(3)取り組んでいる社会課題について、社会の意識に与えた変化
(4)取り組んでいる社会課題に関連した政策に与えた影響
助成先団体の95%が、少なくとも1つの項目について改善・向上がはかられたと回答した。本助成による組織基盤強化の取り組みが、主要事業のアウトカム・インパクトの改善・向上に有効であったことを示している。

(1)「受益対象者の範囲や人数が拡大した」団体は76.2%

例えば自転車タクシー事業を行っている団体では、ドライバー研修の強化やコース開拓によるサービス向上、企画力アップなどにより、自転車タクシーの乗車人数が3,671名から6,620名に拡大した。また不登校をテーマにした新聞を発行している団体では、新聞の購読者が820人から1500人に増加、ホームページへのアクセス数も8万人から15万人に増えた。

(2)「取り組んでいる社会課題の解決に対して影響を与えた」団体は57.2%

フリースクールを運営する団体では、県内約1,260名の不登校の子ども・親にとって、学校外の学びの場についての情報が行き届いていないという課題に対して、事業を行うことにより、多くの選択肢があることを知ってもらうことができた。
またフィリピンを主な活動地域とする団体は、貧しさゆえに学校に行けなかった子どもたちに就学機会を提供することができたと同時に、子どもやその親の人権意識の向上をはかることができた(「自分たちの手で貧困や人権などの問題を解決する」という意識や、自分たちで議論し、行動するという姿勢を根付かせることができた)。

(3)「取り組んでいる社会課題について、社会の意識に与えた」団体は61.9%

取り組んでいる社会課題について、社会の意識に与えたかどうかについては、世論、地域コミュニティ、ある年齢層やグループの人たち、ステークホルダーなどの意識、認識、意見などに変化を与えたかどうかという視点で回答してもらった。
例えば遊びの重要性を啓発している団体では、組織基盤強化に取り組んだ結果、乳幼児の子育て支援講座や学童保育所の研修の実施といった依頼が舞い込むようになり、様々な年代および立場の人に対して「人を育てる」上での意識の変化を起こすことができた。
またグリーン電力の推進をはかる団体では、特に環境活動に取り組む企業に対する情報提供を行うことで、グリーン電力購入における意識の転換に貢献した。

(4)「取り組んでいる社会課題に関連した政策に影響を与えた」団体は28.5%

取り組んでいる社会課題に関連した政策(国際機関、官公庁、地方自治体、シンクタンク、大学等の策定する政策)に影響を与えたかどうかという質問に対して、28.5%の団体が影響を与えたと回答した。
例えば、子どもの遊びにかかわる活動を行っている団体では、地方自治体に対して子どもの遊びの本質や遊び観を伝え共有することで、行政の施策の転換につながった。また、地元自治体でミツバチを通した環境出前事業を幼稚園や小学校で実施することで、自治体が環境との共生を意識した政策を進めるようになった。

3、おわりに

今回のアンケート調査の結果から、Panasonic NPOサポート ファンドの助成により2010年にキャパシティビルディング事業に取り組んだ団体では、組織が成長するとともに、主要事業のアウトカム・インパクトが改善・向上していることが改めて確認できた。
ただし、今回調査の対象となった団体は、助成事業が終了してからようやく2年が経過した団体か、継続助成により引き続き事業を行っている団体である。中期目標・中期計画の策定や人材育成といった、実際の成果が現れるまでに3~5年かかる組織基盤強化事業に取り組んでいる団体は、さらに長期的な変化や成果を見ていく必要があるだろう。
今回アンケートに回答した団体からは、本助成プログラムに対して感謝の言葉が数多く寄せられた。いくつかのコメントを紹介してご報告を終わりにしたい。
「要求される成果が厳しく大変ですが、成果を出すために必死に取り組む分、確実に組織の財産になっています」
「組織基盤強化という目に見えにくいものをサポートしていただき、本当にありがたく思っています。成果はすぐには表れにくいですが、組織にとって一生モノのサポートをいただいたと感じています」
「公募前ワークショップ→組織基盤強化→マーケティング研修、という道が非常に効果的でした」
「2年間の助成をいただき、2841万円だった年間収入が、1億4千万円以上になりました。資金調達機能が強化されたことで、現在の安定した運営と効果的な事業運営につながりました」

【調査概要】

1)調査目的

Panasonic NPOサポート ファンド組織基盤強化事業の2010年度助成実施団体について、本事業による資金提供及び非資金的取組み(組織基盤強化ワークショップ、選考過程でのヒヤリング、贈呈式、中間インタビュー、成果報告会等)が、助成の受け手における組織基盤の強化、活動の充実による社会課題の解決の促進に与えた影響等を検証する。

2)評価対象期間

2010年助成(2010年1月1日~12月31日)

3)調査方法

助成先団体の応募用紙、報告書類の分析

助成先団体へのメールアンケート

  • 実施時期:2013年1月
  • 回収状況:21団体(95.5%)

アンケート項目
(ア)成果を測る

  • 基盤強化:助成時の強化項目の確認と成果の自己評価、事業規模、財源、有給スタッフ、活動の参加者、独自ノウハウの充実、横展開の実現、新規事業の開始、認知度の向上
  • 助成先団体のベネフィシャリへの波及効果(受益者数等)

(イ)満足度を測る:サポートファンドによる支援内容
(ウ)ニーズを知る:今後の組織基盤強化に関する支援ニーズ

分析方法

  • 助成先団体における主観的な自己評価を得ると同時に、組織基盤をあらわす定量的指標の変化を把握する。
  • アンケートは記名式とし、助成前(2009年)と助成後(2011年)で、指標の変化を分析する。

回答団体名

特定非営利活動法人 エコ・モビリティ サッポロ
特定非営利活動法人 アースデイマネー・アソシエーション
特定非営利活動法人 銀座ミツバチプロジェクト
熱帯林行動ネットワーク(継続助成1年目)
特定非営利活動法人 フェアトレード・ラベル・ジャパン(継続助成1年目)
特定非営利活動法人 五環生活
特定非営利活動法人 北海道市民環境ネットワーク(コンソーシアム助成)
特定非営利活動法人 気候ネットワーク(コンソーシアム助成)
一般社団法人 環境パートナーシップ会議(特別助成)
特定非営利活動法人 フレンズ・ウィズアウト・ア・ボーダーJAPAN
特定非営利活動法人 銀杏の会(継続助成1年目)
社団法人 シャンティ国際ボランティア会
特定非営利活動法人 全国不登校新聞社
特定非営利活動法人 日本アントレプレナーシップアカデミー(JAE)(助成時の団体名:日本教育開発協会)
特定非営利活動法人 ぴっぴ(継続助成1年目)
フリースクール「ヒューマン・ハーバー」
特定非営利活動法人 珊瑚舎スコーレ
特定非営利活動法人 アジア日本相互交流センター・ICAN(継続助成2年目)
特定非営利活動法人 こどもコミュニティケア(継続助成2年目)
PLAY FUKUOKA (助成時の団体名:福岡プレーパークの会)(助成2年目)
アクセス-共生社会をめざす地球市民の会(継続助成3年目)

調査実施者

  • 特定非営利活動法人パブリックリソースセンター