組織基盤強化とは

~組織の課題を深掘りし、その課題解決を図る~

特定非営利活動法人市民社会創造ファンド プログラムオフィサー 坂本憲治氏

2006年からNPO/NGOの組織基盤強化プログラムである「Panasonic NPOサポート ファンド 子ども分野」の企画運営に関わらせて頂いています。
組織基盤強化とは、NPO/NGOが社会変革の担い手として、ミッションやビジョンの実現に向けて、組織のありたい姿と現在の姿とのギャップとその原因(=組織課題)を深掘りし、その課題解決を図る取り組みと一般的には理解されており、サポート ファンドもそのように定義しています。
多くの団体は持続可能な組織や事業の運営を実現するため、人材の確保と育成、資金調達と資金管理、活動拠点、情報インフラなどの整備を行います。しかし、このような組織や事業の運営基盤を整備しても、基盤強化に上手くつながらない、その成果がなかなか捉えられない場合があります。

特定非営利活動法人 市民社会創造ファンド プログラムオフィサー 坂本憲治氏

なぜ、このような状況が生じるのでしょうか。組織基盤「整備」と組織基盤「強化」に何か違いがあるのでしょうか。強化とは変化。つまり、組織基盤強化の取り組みによって、組織の運営基盤がどう変化するのか、そのことでNPO/NGOの事業や受益者、支援者、連携機関、社会がどう変化するのかをイメージ出来るかと考えてはいかがでしょう。

では、実際に助成を受け、組織基盤強化に取り組んだ団体はどのような実感を抱いたのでしょうか。ある団体が助成終了後の成果報告会で次のように発表しました。
「私たちの団体は、組織基盤強化に取り組む前、組織課題を本当に解決できるのだろうかと不安に感じ、なかなか取り組めずにいました。3年間、組織基盤強化に取り組んで分かったことは、組織の課題は永遠に無くならないということです。新しい課題は次々と出て来ます。しかし、この取り組みを経て、これらからは仲間と共にどんな課題であったとしても、きっと解決できるだろうと確信しています。これが最大の成果です。」

この団体は発達障害のある子どもの療育で先駆的な活動を行っていますが、組織運営と子どもの療育現場の運営とが上手く噛み合わず、療育スタッフの継続的な確保とその育成、自主財源の確保に課題を感じていました。3年間でこれらの課題解決に向けて着実に取り組み、成果を挙げつつあります。しかし、団体が最も強く感じたことは、仲間と共にどんな組織課題にも継続して取り組める基盤を構築し、助成前に抱いていた不安を払拭することができたことでした。

子ども分野でこれまでに助成を受けた団体を見ると、団体を設立してから10年が経過し、事業やスタッフの数も増え、財政規模は1,000~2,000万円に到達し、事務局を中心に事業が運営できるようになった。けれども、このままでは団体の更なる成長が見込めない、持続することすら難しい、もしかしたら衰退するかも知れないと悩み、応募された団体が多かったように思います。言い換えれば、人も組織も変われないのではないかとの不安を抱えていたように思います。
一体どうすれば、人も組織も変わることができると認識できるようになるのでしょうか。それは、人と組織がどうありたいのかを考え、その目標を妨げる本当の要因が何かを徹底的に仲間と共に深掘りすることであると考えています。これを自団体だけで取り組めるところはそう多くはありません。このため、Panasonic NPOサポート ファンドでは、第三者による客観的な視点を取り入れた「組織診断」を行い、第三者のサポートを受けながら「組織基盤強化」に取り組むことが重要だと考えています。

2015年6月