マーケティングでNPOは強くなる~NPOマーケティングフォーラム2016開催~

2016年10月22日にNPOサポートセンターと共催で「NPOマーケティングフォーラム2016」を開催しました。
NPOにとってマーケティングは、寄附や支援を獲得するため、サービスや商品を提供して対価を得るために重要な活動です。
本年はNPOマーケティングプログラムに、国際支援、障がい者支援、ボランティア促進に取り組む3団体が参加しており、
6月に行われた3日間の集中合宿以降、プロジェクトを通して得た成果を発表しました。また、第2部ではNPOのデジタルマーケティングの最新潮流を紹介しました。

マーケティングのノウハウで組織が抱える課題を解決

本フォーラムの冒頭に、パナソニック CSR・社会文化部の東郷が挨拶を行いました。

「パナソニックは2001年に助成プログラムである『Panasonic NPOサポートファンド』を立ち上げ、NPOの組織基盤の強化を継続的にサポートしてきました。今回のNPOマーケティングプログラムは、NPOがマーケティングのノウハウを組織全体で共有・活用して組織が抱えるさまざまな課題を自力で解決できることをめざすプログラムです。2008年より実施し、これまでに68団体が参加しました。
今日のフォーラムでは、今年プログラムに参加した団体の事例と、プログラムを通して得られた『気付き』を、ぜひ皆さんと共有したいと思います。」

パナソニック株式会社 東郷 琴子

パナソニック株式会社
東郷 琴子

第1部 NPOマーケティングプログラム2016
参加団体による事例発表

本年は、2016年6月からスタートした4ヶ月のプログラムをマラソンになぞらえた「マーケソン」のキーワードのもと実施。第1部では、マーケソンを走り抜いた「ミャンマーファミリー・クリニックと菜園の会」、「つくばアグリチャレンジ」、「NPO新聞」の3団体が、それぞれ事例を発表しました。そして最後に発表した「コムラボ」は昨年の参加団体で、1年後の成果を報告。
コーディネーターは、本プログラムの講師であり、NPOサポートセンター理事、多摩大学総合研究所の松本祐一教授がつとめ、コンサルタントとして支援した社会人サポーターも登壇しました。

「マーケティングというと勉強して知識を得るものだと思いがちですが、実際は身体を動かしながら実践しないと身につかない、スポーツに近いものです。また、マーケットは団体に何かしらの問いかけをしてきます。「あなたの団体は何者なんですか?」「顧客は誰なんですか?」そうした問いに答えていくことがマーケティングにおける重要なプロセスです。今回は4つの団体の事例を通し、NPOがマーケティングを導入する意義や価値について、皆さんと共有していきたいと思っています。」

NPOサポートセンター理事/多摩大学総合研究所 松本 祐一教授

NPOサポートセンター理事/
多摩大学総合研究所
松本 祐一教授

<事例1>継続支援・寄附につなぐ「支援者と顔の見える関係づくり」

発表者:小野 晴香氏

発表者:小野 晴香氏

ミャンマーファミリー・クリニックと菜園の会

ミャンマーにおける巡回診療、保健衛生、家庭菜園指導の3つの活動を軸にしています。これまでは代表の医師である名知仁子が中心となって資金を調達していましたが、組織立った資金調達ができていなかったため、本プログラムに応募しました。目標は継続的な支援をして下さる「マンスリーサポーター」を現在の150名から来年3月末までに300名まで増員すること。インタビューを重ねながらペルソナ(顧客像)を設定する作業は、多くの試行錯誤を要しましたが、今回、改めて感じたのは、実際に支援者と対面することの重要性です。より顔が見える関係づくりを行うために、会報誌や交流会、ツアーなどを盛り込んだプログラムを形にしていきたいと思っています。

<事例2>地元で「もっとつながる新商品」をつくる

発表者:高野 智史氏

発表者:高野 智史氏

認定NPO法人つくばアグリチャレンジ

障がいのあるスタッフたちと野菜を作り、その売り上げで賃金を支払っています。「障がいのある人たちとごきげんな社会をつくる」というミッションを達成するには、より多くの人々に野菜を買っていただき、繋がりをもつことが大切と考えております。当初は顧客会員とつながるためのイベントを考えていたのですが、退会者にインタビューを行う過程で、「売り方」よりも「商品価値」を見直すことが大事であることに気付き、季節のイベントに合わせた期間限定商品「スペシャルデーセット」を提案することにしました。また、お客様の要望を積極的に聞くようになってから売上が格段に伸び、改めて顧客と対話することの重要性を実感しました。

<事例3>ボランティアセンターの対話機能をウェブでつくる

発表者:辻 陽一郎氏

発表者:辻 陽一郎氏

NPO新聞

2015年からNPO、NGO、ボランティアの情報を発信するWEBメディアとして活動しています。ミッションは「NPOの活動を支えるために、ボランティア等で関わる人財を増やすこと」。今回のマーケソンでは試行錯誤し、苦戦したことや上手くいかなかったことも多々ありましたが、最終的に私たち=メディアだけでなく「WEB上のボランティアセンター」と位置づける着想を得ることができたのが大きかったです。大学生からは「ボランティアに興味があるが、何をしたらいいか分からない」という声がたくさん聞かれました。今はまだWEBで問い合わせ窓口を設置しているだけですが、今回のマーケソンを経て得られたコンセプトを核にミッションを達成していきたいと思います。

<事例4>新規事業が動くチームの作り方

発表者:山田 雅俊氏

発表者:山田 雅俊氏

NPO法人コムラボ

『地域の新しい「やりたい・かなえたい」を共創する』をミッションに、栃木県足利市で活動するNPOです。私たちはIT中心のプロボノで、当初は「地域で何か面白いことをやろう」と立ち上げた団体ですが、マーケソンに参加することで、誰に向けて何をすればいいのかが明確になってきました。そのひとつの成果が今夏に発刊したフリーペーパー「マチノテ」です。Webは興味のある人が検索するには有効ですが、もともと地域の活動に興味がない人に発信するには、彼らの目のつく場所へ紙媒体を置く方がいいとマーケソンを通じて気づきました。マーケティングの手法を実践すると想定していた仮説が崩れ、毎晩遅くまで試行錯誤することになりましたが、そのぶん多くの気付きが得られます。マーケティングは知識で得るものではなく、身体で身につけるものだと実感しました。

第2部は「NPOのデジタルマーケティング最新潮流」と題し、分科会形式で4つのデジタルマーケティングサービスが紹介されました。「サイボウズ」「GOEN DRM」「Marketo Social Impact」「Draft」といった各社が発表するNPO運営に役立つプログラムに、参加者も興味津々。導入事例・活用事例に対してたくさんの質疑応答が行われました。
終了後には交流会が行われ、参加者同士、名刺交換も盛んに行われました。

NPOがマーケティングを導入することの意義や価値を、実際の事例をもとに共有できた今回のフォーラム。参加した各団体には、今後もミッション達成に向け、組織的なマーケティング志向を実践して頂きたいと思います。

本プログラムの感想

ミャンマーファミリー・クリニックと菜園の会の方々に、今回のNPOマーケティングプログラムに参加しての感想をうかがいました。

● ひとつのテーマを共有して集まり、意見を出し合いながら仲間と過ごす時間は、多くの気付きがあり、本当に有意義なものでした。3日間の合宿はもちろん、これほど密に話し合った時間はこれまでになかったと思います。

● 自身の勤め先のマーケティング部門の方と話す機会はあるのですが、その多くは商品ありきのマーケティングです。今回はそうではなく、ペルソナを用いた顧客視点のマーケティングに一から取り組めたのが、すごく斬新でした。

● みんなが顧客視点のマーケティング思考で物事を考え始めたのは、団体の大きな変化です。チームが共通の言葉や思考を持って、同じ方向を向くことは、スピード感を持ってPDCAを回すためにも極めて重要だと思いました。

● アンケートひとつにしても、単に取るのと目的を持って取るのでは大違い。自分たちの想定したペルソナが本当にこれでいいのか「ああでもない」「こうでもない」と迷いつつ、ひとつの顧客像が見えてきたのはとても大きいです。

● コンサルタントの存在がとても大きかったです。議論がまとまらないとき積極的に軌道修正して下さるなど、私がこれまでに受けた研修の中でも一番のコンサルタントと言えるほど、親身に支援して下さいました。