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Panasonic NPOサポート ファンド for アフリカ 2013年報告会、広報に関する勉強会

2014年1月、『Panasonic NPOサポート ファンド for アフリカ』の2013年報告会を、パナソニックセンター東京にて開催しました。
『Panasonic NPOサポート ファンド for アフリカ』は、貧困や飢餓、教育や保健医療など様々な分野で諸問題を抱えるアフリカ諸国において、それぞれの課題の解決に取り組むNPO/NGOの広報基盤の強化を、パナソニックが支援するプログラムです。そして今回は博報堂より講師を招き、広報活動についての勉強会も行いました。

特定非営利活動法人
アフリカ児童教育基金の会ACEF
小椋 とも代さん

特定非営利活動法人
えひめグローバルネットワーク
理事 新居 啓司さん

特定非営利活動法人
テラ・ルネッサンス
創設者・理事 鬼丸 昌也さん

特定非営利活動法人
道普請人
理事長 木村 亮さん

■ウェブによる広報活動を充実。本来の活動環境の向上も図る

今回サポートを受けたのは4団体。うち2団体は今回が初でした。まず報告の先陣を切ったのが、アフリカ児童教育基金の会ACEFの小椋とも代さんです。同団体はケニアのメルに拠点を置き、現地の教育、医療、環境保全の各事業の向上に努めています。最近は夜間でも安心して医療を受けたり勉強ができたりできるよう、ソーラーランタンの寄付なども行ってきました。

「私達は多くのアフリカの実情を発信したいと考えていますが、伝えたい情報が多すぎるあまりに、返って伝えにくいと言う現状もあります。そこでインターネットやFacebookなどSNSを活用するようにいたしました。今回の助成は、おもにこのネットによる広報活動の充実に使わせていただきました。動画編集ソフトを導入し、動画での配信にも力を入れました。おかげでアクセス数は格段にあがりました」

「広報活動はネット中心ですが、ネットを使わない層に向けたパンフレットの充実も欠かせません」と、アフリカ児童教育基金の会ACEF
小椋さん。

続いて、えひめグローバルネットワークの新居啓司さんの報告です。同団体はモザンビークを中心に活動し、一般市民が所有していた拳銃などの武器を回収し、代わりに自転車を贈る平和構築活動を支援してきました。

「私達もホームページの活用が広報手段に欠かせないと考えています。これまでは画像も少なく、レイアウトなども単調でした。そこでウェブ制作に専門知識を持ったスタッフを起用することで写真を使用したコンテンツを増やし、レイアウトも工夫。見やすさを向上させました。またYouTubeにサイトを開設し、動画配信もスタートいたしました。これまでウェブ制作に手間を取られていたスタッフも本来の活動に専念することができるようになり、支援活動に注力する時間も増えました」

「ホームページの多言語化も重要です。日本語に加え、英語とモザンビークの公用語、ポルトガル語のページも開設しました」と、えひめグローバルネットワーク 理事 新居さん。

■見てもらうだけでなく、楽しんでもらえるような広報活動を目指す

続く2団体は、今回が3年目のサポートとなりました。活動内容も幅広く、広報が担う重要性をしっかりと受け止めてきました。より多くの人たちに情報を伝達するため、さらなる進化の道も探っています。

ウガンダやコンゴなどで地雷除去や元子ども兵の社会復帰支援などを行っているテラ・ルネッサンスの創設者・理事、鬼丸昌也さんもネットによる広報活動をさらに広げていきたいと話しています。

「今回、3度目のサポートを受けることで、私達の広報基盤は大きく改善されました。ウェブによる広報は確かに重要です。専門知識を持ったスタッフが常駐し、日々リアルタイムな更新も欠かせません。このようにして、我々は広報基盤を整えてきました。ただウェブの更新だけでなく、アフリカが抱える緒問題の解決をめざす必要があります。このような活動がアフリカの価値を上げ、多くの方に『今後ももっと支援したい』と思っていただけるようになると考えています」

「アフリカの現状を知って貰うために広報活動は本当に重要です」と、テラ・ルネッサンスの創設者・理事 鬼丸さん。

同じく、3年目のサポートを受けた道普請人の理事長 木村亮さんは、今回も力強いメッセージを発信していました。同団体は、土のうを使った道作りを通じて、地元住民にその技術も供与し、仕事支援も広がりつつあります。

「重要なことはアフリカの方が『自分たちの道は自分たちで直せる、作れる』と感じられるようになることです。重機などを使えば誰でも直せるが、『自分たちの手だけでも直すことができる』と知れば、住人たちは立ち上がります。いい道なしにいい生活はありません。先日、京都で行った展示会では事前に団体を紹介するビデオも制作しました。私たちは全員が広報担当者。全員がブログを書くことを義務としています。自分たちの活動を一生懸命に伝え、基金集めに繋げていきます」

「土のうで道を直すことを面白く感じて貰えることも重要なのです」と、道普請人の木村さん

「パンフレットも写真を並べるだけでは手にして貰えない」、と飛び出すパンフレットを作成しました。

■それぞれに成長が見えた報告会。これからは世界へ広報しよう

選考に当たった方々のご意見も伺いました。

特定非営利活動法人
国際協力NGOセンター
常務理事・事務局長 山口 誠史さん

広報の大きな目的は、皆さんの活動をより多くの人に知ってもらうこと。そして団体の知名度をあげることです。これらが支援や財政基盤に深く関わってきます。

ただし認知度を広げていくためには膨大な時間がかかります。そのためにどのような手を打つか、取り組みは戦略的に行う必要があります。まずは人材を育てること、広報ツールを活用することが大切です。今回の報告会では『今後は日本国内だけでなく世界に広く伝えていく必要がある』という意見など、団体の発展性も見ることができ、素晴らしい報告会でした。

各団体ともチャレンジを惜しまない、積極的な活動が目立ちました。若者層向けにSNSなどソーシャルコミュニケーションを活用することで、共感者を募ることは今後も欠かせません。またネットにはクリックで手軽に募金を受けることができる方法など、便利なツールもたくさんあります。これらも導入すればより便利なものになると思います。SNSでは“いいね!”を増やすだけではなく、最終的に支援者になっていただくことが重要です。受け皿をもっと充実させることも今後は必要でしょう。このような課題の克服にも取り組んでいただきたいと感じています。

パナソニック ブランドコミュニケーション本部 CSR・社会文化グループ
グループマネージャー・小川理子

■広報の課題「伝わる」とは、誰かに伝えたいと思わせることだ

今回は特別に博報堂の松永太一さんをお招きし、「伝えるから、伝わる広報へ」をテーマに講演をお願いしました。広報の本質とはなにか、どうすればニュースになるか、を深掘りしていただきました。

今日は皆さんの報告を聞くことができ、貴重な体験でした。皆さんは素晴らしい活動を行っていると思います。しかし「広報」という視点から見ると、若干、「広報ツール」に話が終始していたかなと感じました。
皆さんはニュースリリースをどのように作成しているでしょうか。ニュースリリースはその内容を世間に広く伝えることが使命です。しかし数多く作成し、配信するだけではなかなか広く伝わりません。重要なのは数ではありません。読んだ人が、それを誰かに伝えたいと思う内容かどうかです。ニュースリリースとはラブレターです。読んだ人が「これは新しい、嬉しい、楽しい」と感じ、他の人に教えたい、伝えたいと思ってもらうことが一番大切なことです。技術的には、誰もがまず注目するタイトルが重要です。

そして何より、そのニュースリリースの元となる広報的ファクトづくりには、「共感」「タイミング」そして「ギャップ」の要素を持たせることがポイントとなります。

博報堂 テーマ開発局ビジネスプロデュース部長 松永太一さん。過去に内閣広報室 戦略広報参事官も経験した、“広報のプロ”です。

「共感」とは、読んだ人が本音で「そうだ、その通りだ」と感じることです。そのためには目的を明確にし、読んだ人の気持ちになって考える必要があります。
「タイミング」も重要。年末年始、バレンタインデーや母の日、父の日といった歳時記はもちろん、今年なら冬季オリンピックやサッカーワールドカップなど国際的なイベントにも注目し、相乗できる旬な情報を発信することです。
そして常に「ギャップ」を意識すること。その本質にとってギャップのあるファクトをつくることで、見る人は「なぜ?」と興味を抱き、内容を知れば「なるほど!」とさらに深く入り込めます。

例えば、PRイベントを成功させる秘訣として「SMAPの法則」というものがあります。ここで言う“SMAP”とは「Simple」「Mismatch」「Action」「Photogenic」のこと。この要素がすべて揃っていれば、それは「ニュース」になります。例えば、よくニュースで見るのが、「真夏の冬物のファッションショー」です。ファッションショーというシンプルなアクションで、冬物を真夏に行うというミスマッチ。もちろん、夏に毛皮の美人モデルがたくさん登場するのでフォトジェニックです。「SMAPの法則」がすべて含まれており、誰かに伝えたい「ニュース」として多くのマスコミが取り上げます。

松永さんへの質問も相次ぎました。「ニュースをつくることは支援基盤の拡大に繋がりますか」との質問に対し、松永さんは「重要なのは活動内容を広めること。その先に出資する企業や人がいるのです」と回答されていました。

当たり前の情報もひとひねり加えることで「ニュース」になります。それらを生み出すことが広報の役割なのです。アフリカを題材に是非、SMAPの法則で「ニュース」をリリースしてください。