環境:生物多様性保全

eco ideas

生物多様性に関する考え方

私たちの社会における企業経営や人間生活は、土壌、大気、水、動植物から成る自然資本によって提供される様々な自然の恵み(生態系サービス)によって成り立っています。自然資本の恩恵を将来にわたって継続的に享受するためには生物多様性保全が重要ですが、その一方で、生物多様性は史上かつてない速さで大規模に損なわれています。
2016年12月には生物多様性条約 第13回締約国会議(COP13)が開催されました。これを受け企業に対しても、生物多様性の保全及び持続可能な利用の組み込み(生物多様性の主流化)、2020年の愛知目標達成に向けた活動の推進、さらには国連が採択した持続可能な開発目標(SDGs)の考慮などが要請されました。
こうした中、当社は、事業活動が生物多様性に与える影響を適切に把握し、その保全に貢献するという目標を掲げ、自治体や環境NGO、専門機関と連携して取り組みを推進しています。具体的には、生物多様性保全を事業へ落とし込んだ取り組みとして推進するため、土地利用・調達・商品の3つを重点分野と位置づけています。重点分野の推進に当たっては適宜、生物多様性条約 第6条の基本的な考え方である生物多様性行動計画(BAP)を策定した上で、施策の実践、達成状況の確認、取り組みの改善などを行っています。

土地利用分野の取り組み

事業所の緑地は、地域の生物多様性保全に貢献できる大きな可能性を持っています。とくに都市部では野生生物が生息・生育できる自然環境がほとんど残されていないため、たとえ小さくても、その地域本来の植生や水辺などを備えていれば、様々な生きものにとって大切な場所となります。
生物多様性の視点で事業場の緑地に期待される主な役割は、近隣に点在する緑地や公園とのつながりも含めた、エコロジカルネットワークの強化と地域の希少な動植物の保全です。

行政や専門家などと連携、生きものの生息空間を守る

エコロジカルネットワークとは、緑や水辺など野生生物の生息・生育空間の有機的なつながりのことで、事業所緑地の存在によって、鳥やチョウ、トンボなどの生きものが周辺に点在する緑地や水辺の間を飛び石のように移動できるようになり、生息できる空間が広がることになります。また地域の希少な動植物の保全は、環境省や自治体から絶滅危惧種に指定され、その地域から姿を消しつつある生きものを、行政との連携や、専門家の指導や協力を得ながら守っていく活動です。これらの取り組みを推進している当社の事業所である、滋賀県草津市アプライアンス社草津工場「共存の森」は、2009年の整備時にアセスメントを実施、その後も専門家によるモニタリングを継続中です。その他の事例として、大阪府、大阪府立大学、大阪府立環境農林水産総合研究所とおおさか生物多様性パートナー協定を締結した門真市エコソリューションズ社のビオトープ、大阪府みどりの風の道形成事業に参画して大阪府・豊中市・大阪府立大学・大阪府立環境農林水産総合研究所とおおさか生物多様性パートナー協定を締結した、パナホーム本社の「つながりのひろば」があります。

広域的なエコロジカルネットワーク構想

アプライアンス社草津工場は、冷蔵庫やエアコンを製造するアプライアンス分野の主要拠点です。2008年6月に「エコアイディア工場 びわ湖」として「商品」「モノづくり」「地域貢献」の3分野で「一歩先のエコ」に取り組むことを宣言して以来、当社の代表的な環境配慮型工場としてグループをリードしてきました。また、2011年10月のエコアイディア宣言では、生物多様性への貢献を活動の柱の一つに位置づけて取り組みを開始。草津工場構内の遊水池や周辺緑地を地域の野生生物が生息しやすい「共存の森」として整備し、周辺の緑地や河川と有機的につなげることで、びわ湖と里山を結ぶ広域的なエコロジカルネットワークづくりを推進しています。
同工場では、2011年より植物や昆虫、哺乳類や鳥類のモニタリング調査を継続しており、これまでに環境省や滋賀県のレッドリストに掲載されているハイタカやハヤブサといった希少な猛禽類、キツネやタヌキといった中型の哺乳類など、比較的広い生息環境を必要とする生きものが継続的に工場緑地を利用している事が確認されています。6年にわたるモニタリング調査を通じ、これらの生きものが世代をつなぎながら地域の中で生息していく上で、工場の緑地が周辺の緑地とのつながりの中で餌場や休息地としての役割を果たしていることがわかりました。また、モニタリング調査で得られたデータは、「共存の森」の管理だけでなく、構内緑地の整備にも生かしています。2013年1月にオープンしたW20棟(地上7階)の屋上緑地エコ・ルーフテラスでは、構内や周辺地域の植物や昆虫、野鳥のデータを参考に、共存の森から植物を株ごと移植することで、屋上庭園でありながら、クロヤマアリやハラビロカマキリ、コオロギの仲間のシバスズなどが生息しており、これらの昆虫や果実を餌とする野鳥があつまり、エコロジカルネットワークの中継緑地として機能しています。

アプライアンス社滋賀県草津工場
地域の植物を活かした屋上緑地「エコ・ルーフテラス」

ビオトープによる希少種の保護と環境教育への活用

2009年3月、エコソリューションズ社門真地区構内に、約1万1,000m2の緑地であるはんえいの広場を造成し、その一角に約300m2のビオトープを設立しました。門真地区が淀川と花博記念公園鶴見緑地(大阪市鶴見区)の間の立地であることを活かし、多様な生物が自然に生息できる場となるように、ビオトープの企画段階から公立大学法人大阪府立大学に専門的な助言や指導をいただきながら、生物のモニタリングを継続的に実施してきました。設立当初から、ビオトープの維持管理は社内ボランティアが実施しています。毎年、春先にカルガモが営巣して雛鳥の姿が見られ、従業員の環境意識向上に寄与しています。
2012年6月からは、地方独立行政法人大阪府立環境農林水産総合研究所水生生物センターからの提案と指導に基づき、環境省および大阪府絶滅危惧種のカワバタモロコ(淡水魚の一種)とミズアオイ(湿地に自生する水生植物)をビオトープに導入し、保護活動を行っています。2013年11月には、大阪府、大阪府立大学、環境農林水産総合研究所と当社の間の、おおさか生物多様性パートナー協定の調印式とあわせて、新たに北河内生まれのミナミメダカ(環境省及び大阪府絶滅危惧種)をビオトープに100匹導入、順調に生息していることを確認しています。
2016年は10月に、地域の小学生を招待して、いきものとエコの教室を開催しました。子どもたちがビオトープにすむ身近な生き物の生態や、絶滅危惧種の存在を知り、自然や環境について考えるきっかけを提供することができました。
また、同社の活動は2015年9月、他の模範となる豊かな環境づくりに向けた取り組みで顕著な功績のあった個人・団体又は事業者に贈られる、平成27年度おおさか環境賞(主催:大阪府)の奨励賞を受賞しました。併せて、大阪府立大学、大阪府立環境農林水産総合研究所との取り組みも、同協働賞を受賞しました。
今後もビオトープを通じて、地域の生物多様性に対する貢献と従業員の意識向上に寄与していきます。

ビオトープでの、いきもの観察会

「つながりのひろば」の活用による子ども環境教育

パナホーム(株)は、創業50周年記念事業の一つとして、2013年4月にビオトープであるつながりのひろばを、大阪府豊中市の本社ビル敷地内に開設し、広く一般の方々に開放しています。
つながりのひろばは、大阪府によるみどりの風の道形成事業や防災安全みちづくり事業などの支援を受け、地域の生態系ネットワークの保全と大規模災害発生時の帰宅困難者支援および事業継続を考慮して整備した緑化ゾーンです。ビオトープをはじめ、気候風土に適した樹種の植栽や、太陽光・風力発電設備などで構成されています。つながりのひろばの名称は、地域の生物多様性保全により、お客様や地域住民を含む社会からの信頼、私たちの事業活動、地球環境、のそれぞれを未来へ「つなぐ」というコンセプトから付けられたものです。2014年2月にはエコソリューションズ社に続いて、大阪府、豊中市、大阪府立大学、環境農林水産総合研究所とおおさか生物多様性パートナー協定を締結しました。
つながりのひろばでは、近隣の小学生を対象に、環境体験学習を実施しています。これは、ビオトープで保全しているミナミメダカやカワバタモロコを網ですくい、観察をしながら生態などについてレクチャーするもので、子どもたちに生物多様性、絶滅危惧種、ビオトープの意味や必要性などについて学び、自らの手で生き物を守ることについて考えるきっかけを提供しています。授業の最後には「生き物保全宣言」として、一人ひとりが生きものを守るために行うことを宣言書に書き、その宣言を生きものに語りかけながらビオトープに再度放流します。またテキストは、オリジナルで作成したものを使用し、講師役は社員が務めています。
毎年8月には、大阪府や豊中市の協力の下、豊中市在住の家族を対象に「夏休み自然観察教室」を開催しています。2016年には大阪府の広報担当副知事で、府鳥であるもずをモチーフとした「もずやん」が登場しました。
これまでに、つながりのひろばと、隣接するショウルームである住まいとくらしの情報館における総合体験学習が、特定非営利活動法人キッズデザイン協議会が主催する、第9回キッズデザイン賞(子どもの未来デザイン学び・理解力部門)を受賞しました。その他に、国連生物多様性の10年日本委員会が主催する生物多様性アクション大賞2015への入賞、(公財)日本自然保護協会が主催する日本自然保護大賞への入選などの評価もいただきました。生物多様性の保全だけでなく、地球環境を守り未来につなげられるよう、今後も取り組みを継続していきます。

つながりの広場全景
環境体験学習の様子

定量評価手法に基づく外部認証の取得

JHEP認証は、環境アセスメントで用いられる「ハビタット評価手法(HEP)」をもとに、(公財)日本生態系協会が開発した生物多様性定量評価手法です。オートモーティブ&インダストリアルシステムズ社 松本工場は2010年10月、日本国内の工場緑地として初めて、JHEP認証[将来見込型]を取得。地域に生息する野生の生きものが住みやすい環境をつくるという、生物多様性への貢献が見込まれる事業地として認証されました。
以後同工場は、工場緑地管理方針の策定に加え、芝生草地のススキ草地への転換、立枯木の設置、外来樹木の排除などの地道な保全活動を進めた結果、鳥類及びチョウ類の繁殖増加が認められました。具体的な成果が確認されたことから、2015年9月、評価ランクがAへとアップしました。
このランクアップは、生物多様性の保全効果を客観的に評価されたことを示すだけでなく、取り組みをさらに進める上でも大きな意義があるものと考えています。

設置された立枯木
工場内で確認されたヒメウラナミジャノメ

調達分野の取り組み

生物多様性の保全と持続可能な利用を目指した木材グリーン調達ガイドラインを、WWF(世界自然保護基金)ジャパンと協議を重ねて策定しました。

WWFジャパンと協議・策定した木材グリーン調達の考え方。区分1「優先調達に努める木材・木質材料(環境面で保護価値の高い森林を破壊していないことを第三者から認証されたもの/持続可能な森林経営を実施していることを第三者から証明されたもの/木質系再生資源)」、区分2「調達適合とする木材・木質材料(伐採時の合法性が確認されたもの/業界団体等により合法性認定が得られたもの)」、区分3「調達排除に努める木材・木質材料(伐採時の合法性が確認できないもの)」

着実なPDCAと成果確認、対策検討を実施

2016年度調査の結果、木材・木質材料の総調達量は約36万m3でした。区分ごとの内訳は、優先調達に努める区分1が77.6%(前年度差−2.0ポイント)、調達適合とする区分2が22.4%(前年度差+2.0ポイント)、調達排除に努める区分3が0%(前年度差±0ポイント)でした。調達ガイドラインの策定以来、区分3の調達ゼロ化を目指して取り組みを進めており、2014年度から連続でゼロを継続しています。
今後も取り組みを継続推進し、区分3の調達ゼロを維持していきます。また、木材グリーン調達は、毎年度計画を策定した上でPDCAを回し、年度末には達成状況の確認をするとともに、次年度に向けた対策の検討を行っています。

木材資源保全の観点から、天然素材の使用量削減にも取り組んでいます。フローリング(木質床材)のフィットフロアーナチュラルウッドタイプ(耐熱・非耐熱)とフィットフロアー(耐熱・非耐熱)は、リサイクルされた木質材料を100%(接着剤は除く)使用する、当社独自の新素材フィットボードを採用しています。

さらに当社は、サプライチェーンは生物多様性保全に多大な影響を与えるという認識のもと、JBIB((一社)企業と生物多様性イニシアティブ)の原材料調達ワーキンググループに参画しています。2012年から原材料調達におけるリスクや課題の明確化とその解決策の検討を重ねた結果を用いて、2016年4月の「生物多様性に配慮した企業の原材料調達推進ガイド(第1版)」リリースに貢献しました。

フィットフロアーナチュラルウッドタイプ(耐熱・非 耐熱)、フィットフロアー(耐熱・非耐熱)断面図
JBIB「生物多様性に配慮した企業の原材料調達推進ガイド」

商品分野の取り組み

生物多様性に貢献する商品の情報をお客様に提供できるよう、国際環境NGOバードライフ・インターナショナルと第三者評価手法を構築。
この手法を用いて生物多様性に関わりの深い商品の評価を行っています。
また、グリーンプロダクツの判定基準に生物多様性の項目を追加。生物多様性の保全に配慮した素材を主要な部位に活用した商品、生物多様性の保全に寄与する機能を有する商品などを生物多様性貢献商品と定義しています。
2013年度、パナソニック環境エンジニアリング(株)は船舶移動による周辺海域の海洋生態系破壊を抑制するバラスト水処理システム(BWMS)ATPS-BLUEsysを開発しました。バラスト水は、貨物船舶が船体バランスを保つために船舶空荷時に積載する海水です。航行による海域の移動で、バラストタンクに積み込んだバラスト水の採水国と排出国が異なることから、海水に含まれる外来性有害水生生物(プランクトン、バクテリアなど)による生態系、環境、資源への影響が問題となっています。ATPS-BLUEsysは、国内初のインライン電気分解方式により、フィルターを使用せずにバラスト水中の微生物を国際海事機関(IMO)に定められた排水基準以下に処理することができ、IMOによる基本承認(G9BA)の取得を完了しました。2017年3月に国土交通省の相当指定を取得したことにより、2017年度から販売を開始します。

NGO・NPOとの協働や支援による生物多様性保全

当社は産業界と連携した生物多様性の取り組みと、NGO・NPOを通じたグローバルでの生物多様性保全活動の推進を目的に、経団連自然保護協議会に参加しています。経団連自然保護協議会は、経団連加盟企業の中から、自然保護や生物多様性の保全に積極的に取り組む企業110社以上により構成される団体で、1992年の設立以降、NGOなどの自然保護活動支援、企業とNGOなどの交流の推進、企業への自然保護と生物多様性の啓発活動、自然再生を通じた東北復興支援などに取り組んでいます。当社を含む企業や個人からの募金による経団連自然保護基金を通じ、国内・海外のNGO活動などに対し、2016年度までの累計で、1,278件、約37億円の支援を実施しています。
当社は、同協議会が推進するプロジェクトへの基金提供・参画だけでなく、現場視察などを通じ推進状況の見届け責任を果たしています。2016年度の活動では、10月の自然保護プロジェクト視察ミッションに参画。ミャンマーとベトナムの湿地の保全の視察および、ミャンマーの日本大使館と資源環境保全省を訪問し、同国が抱える森林伐採などの課題とその取り組みなど意見交換も行いました。またベトナムでは、メコン河の干潟に生息する絶滅危惧種の保全などを視察し、メコン河の生態系を研究するカントー大学を訪問、取り組みの状況を共有いただきました。
NGO・NPOの生物多様性保全活動への支援も積極的に行っています。2016年には、WWF(世界自然保護基金)ジャパンの「南三陸における環境配慮型の養殖業復興支援活動」で、宮城県漁業協同組合のカキ養殖場における、日本初のASC(Aquaculture Stewardship Counci:水産養殖管理協議会)養殖場認証の取得に協賛しました。また日本野鳥の会が、2016年から5年間にわたって実施する「全国鳥類繁殖分布調査」では、当社寄贈のICレコーダー100台による音声録音調査が開始され、夜間観測も可能となり、野鳥の保全に役立てられています。
生物多様性保全の中でも自然保護活動は、企業が直接実施することが困難な取り組みのひとつですが、業界団体との協働やそれを通じたNGO・NPO支援により、確実な取り組みにつなげることが可能となります。今後もこうした施策に継続的に参画することで、生態系保全に貢献していきます。

ミャンマーモインジー湿地の視察

電機電子4団体ワーキンググループへの参画

当社は電機電子4団体※1生物多様性ワーキンググループに参画しています。ワーキングでは、各社の生物多様性保全活動と愛知目標の関連付けを精査し、活動事例をデータベースに登録。当社の活動も愛知目標との関連を明示しています。この事例データベースは、多くの企業の活動事例を閲覧でき、電機電子4団体参加企業への生物多様性保全の普及拡大に貢献しています。

※1 (一社)日本電機工業会(JEMA)、(一社)電子情報技術産業協会(JEITA)、(一社)情報通信ネットワーク産業協会(CIAJ)、(一社)ビジネス機械・情報システム産業協会(JBMIA)の4団体

市民ネットワークとの連携で希少種を保全

当社では国内の会社・労働組合と定年退職者会が、パナソニックエコリレージャパン(PERJ)として一体となり、さまざまな環境保全活動を行っています。
淀川のシンボルフィッシュと呼ばれるイタセンパラは、国の天然記念物・国内希少野生動植物種に指定されています。PERJは、淀川水系における生物多様性の保全・回復と、イタセンパラの野生復帰を目指して活動を行う、淀川水系イタセンパラ保全市民ネットワーク(通称イタセンネット)に参画しています。
2011年に設立したイタセンネットは、当社を初めとする企業のほか、行政・研究所・企業・大学・NPO・市民団体などの団体が連携。外来魚の調査や駆除、河川の清掃などの活動を行っています。これらの活動は、2015年7月、日本水大賞委員会と国土交通省が主催する、第17回日本水大賞で、環境大臣賞を受賞しました。また2016年10月には、愛知目標の達成に向けた生物多様性の保全と持続可能な利用に向けて、国や地方公共団体、事業者、民間団体などの参画・連携を促進する、「国連生物多様性の10年日本委員会」の連携事業に認定されました。今後もPERJは連携団体として、イタセンパラの保全・淀川水系での生物多様性保全を継続します。

イタセンパラ
地引網による外来魚の調査