化学物質による環境影響の低減の考え方

2002年に公布され、2011年に改正されたEU RoHS指令※1などで、製品への含有が禁止されている化学物質の当社グループ製品への混入を防止するためには、製品設計段階での配慮ばかりでなく、購入する部品に特定の化学物質が含まれないようにすることが重要です。そこで当社グループは、製品設計から出荷検査に至る生産活動の各過程で、特定の化学物質を「入れさせない!使わない!出さない!」取り組みを、2005年10月以降全世界の事業場で展開しています。具体的には、部材の受け入れ段階においては特定の化学物質が混入していないかを現場で分析・確認できるよう、分析装置を導入して検査する仕組みを構築しています。さらに、特定の化学物質の混入リスクの高い購入先様に対して定期的に環境監査を実施し、製品化学物質の管理体制構築を支援しています。

特定化学物質の管理体制

特定化学物質の管理体制:製品設計から出荷検査に至る生産活動の各過程で、特定の化学物質を「入れさせない(受入検査・分析データ確認・購入先監査)!使わない(設計仕様として不使用・代替部品の開発と採用・製品アセスメント)!出さない(モノづくりの各段階での記録を確認)!」取り組みを展開。

一方、世界ではEUのREACH規則※2に代表されるように、2002年に開催された持続可能な開発に関する世界サミット(WSSD)で合意した、2020年までにすべての化学物質をヒトの健康や環境への影響を最小化する方法で生産・利用するという目標に向けて取り組みが実施されており、また、現在、2020年以降の新たな枠組みについても議論されています。当社グループは、その背景である1992年のリオ宣言で提唱された予防的アプローチを支持するとともに、ヒトと環境への影響が懸念される化学物質の使用を製品のライフサイクル全体で削減するという基本方針に基づいた製品づくりを目指しており、環境行動計画GREEN IMPACT PLAN 2024においても継続課題として定め、事業活動および製品の化学物質による環境負荷の低減に取り組んでいます。具体的な取り組みとして、EU RoHS指令などの法令順守はもちろん、(1)含有される有害性物質の把握に努め、(2)環境影響を評価し、(3)化学物質による環境リスクが懸念される場合には自主的に使用・排出を削減、廃止することによって、当社グループの製品に起源する環境への影響を低減できるよう取り組んでいます。

※1 電気電子機器に含まれる特定の有害物質を使用制限する指令
部品を構成する材料中の、次に示す10の制限物質の重量濃度が、括弧内に示す規制値を上回る濃度で含まれることが禁止されています。
鉛(0.1%)、カドミウム(0.01%)、水銀(0.1%)、六価クロム(0.1%)、特定臭素系難燃剤(ポリ臭化ビフェニル、ポリ臭化ジフェニルエーテル)(0.1%)、フタル酸エステル4種(0.1%)
ただし、技術的、科学的に代替が不可なものには、適用除外として、期限付きで制限物質の含有を認めています。このような適用除外では、物質ごとに用途、含有量の制限、有効期間が細かく定められています。
〈適用除外の例〉
鉛:電子部品のガラス、セラミック、高温はんだへの使用
水銀:液晶テレビのバックライトの冷陰極管や、蛍光灯への使用
なお、自動車や電池などは、EU RoHS指令の規制対象ではありません。自動車、電池は、それぞれEU ELV(廃自動車)指令、EU電池指令で規制されています。
※2 化学物質の登録、評価、認可および制限に関する規則

化学物質環境影響削減の取り組みプロセス

化学物質環境影響削減の取り組みプロセス:EU RoHS指令などの法令順守はもちろん、(1)含有される有害性物質の把握に努め、(2)環境影響を評価し、(3)化学物質による環境リスクが懸念される場合には自主的に使用・排出を削減、廃止することによって、当社製品に起源する環境への影響を低減

このような取り組みを確実に推進するため、製品と工場での取り組みについてそれぞれ禁止物質と管理物質を規定した化学物質管理ランク指針を発行し、当社グループ内はもちろん、購入先様にも対応を求めています。2012年度には化学物質管理ランク指針(製品版)の禁止物質に新たにレベル3を設定し、法規制などで禁止されている物質や禁止が予定されている物質の不使用だけでなく、ヒトや環境への影響が懸念されている物質の将来の禁止も検討しています。

また、法規制対象国の枠を超えてグローバルで禁止する物質群(レベル1)を2014年度の21物質群から、2023年度の30物質群まで拡大し、法規制対応やヒトや環境への影響の低減に取り組んでいます。

禁止・管理物質を明記した化学物質管理ランク指針(製品版)と関連文書は、下記のサイト「グリーン調達について」から、PDFでダウンロードいただけます。

化学物質管理ランク指針(製品版)の体系

ランク 定義
禁止 レベル1
  1. 現在法規制で製品含有が禁止、あるいは含有濃度の上限が定められている物質
  2. 本指針が改定されて1年以内に法規制で製品含有が禁止、あるいは含有濃度の上限が定められる予定の物質。ただし、法規制開始日とランク指針の施行日の関係から法施行より1年以上前に禁止物質レベル1に制定する場合もある
レベル2 禁止物質レベル1に定める物質以外で、次に示すいずれかの物質を対象とする。
  1. 条約・法規制により期限を定めて製品含有が禁止される物質
  2. 当社グループとして条約・法規制で定められた期限を前倒しして製品含有の禁止を推進する物質
  3. 当社グループの自主的な取り組みで使用を制限する物質
レベル3 禁止物質レベル1およびレベル2に定める物質以外で、法規制等で禁止が検討されており、今後の法規制動向をふまえ代替に向けた課題を明確にすると共に当社グループとして禁止時期を検討する物質
管理 使用実態を把握し、健康、安全衛生、適正処理等に考慮すべき物質
意図的な使用を制限するものではなく、使用の有無および含有濃度についてデータを把握すべき物質

注:対象とする法規制および物質は、化学物質の審査および製造等の規制に関する法律の第一種特定化学物質、労働安全衛生法の第五十五条で製造等が禁止される有害物、EU RoHS指令、EU REACH規則 Annex XVII、など。詳細は化学物質管理ランク指針(製品版)の第6章「規定管理物質」を参照

化学物質管理ランク指針(工場版)の体系

ランク

定義

禁止

万一使用している場合には、即時に使用中止しなければならない下記に該当する物質:
ヒトに対して発ガン性がある物質
オゾン層破壊物質
当社グループとして使用を禁止している物質
化学物質の審査および製造等の規制に関する法律第一種特定化学物質
労働安全衛生法製造禁止物質
国際条約において製造、使用などが禁止されている物質

削減

使用量、排出・移動量を把握し排出・移動量を削減すべき物質
禁止ランク以外でヒト・環境に対して有害性があるとされる物質

注:対象とする法規制は、PRTR法(化学物質)、環境基本法における環境基準、労働安全衛生法、ストックホルム条約など。詳細は「化学物質管理ランク指針(工場版)」の「化学物質管理ランク指針(工場版)制定の主旨」を参照

当社グループ化学物質負荷削減のあゆみ

※3 安全性など品質が保てない用途、法規制などで材料が指定されている用途を除く
※4 化学物質の使用量、排出量および移動量について、3年間で33%、6年間で50%の削減(1998年度比)を実践する活動

製品の環境影響低減の取り組み

製品における化学物質の環境影響を低減するため、使用する部品や原材料の含有化学物質情報の把握に努めるとともに、EU RoHS指令などの法規制によって主要な先進国で製品への含有が禁止されている物質については、代替が困難で使用することが不可避な一部の用途を除いて、グローバルで不使用・不含有がなされるように禁止物質に指定して管理しています。また、管理物質については用途や使用量に基づく環境影響評価を進め、ヒトや環境への影響が無視できない物質については使用の削減や禁止を計画しています。

化学物質含有情報の把握

当社グループが生産・販売する電気・電子製品は、原材料を生産する素材メーカーに始まり、多数の部材・部品メーカーに至る長いサプライチェーンによって成り立っています。WSSDで合意された目標を達成するには、このサプライチェーンにおいて、製品に含まれている化学物質情報を円滑に開示・伝達することが重要であり、そのための仕組みをつくり、普及させていく産業界全体での取り組みが不可欠です。
当社グループは、化学メーカーや部品メーカーから機器メーカーにおよぶ有力企業約500社の会員とともにアーティクルマネジメント推進協議会(JAMP)に参加しています。化学物質管理基準や情報伝達の仕組みを構築して活用するとともに、より広い事業者への普及活動に積極的に取り組んでいます。
当社グループでは2004年度から製品化学物質管理システムを運用し、2009年7月からはJAMPの情報伝達フォーマット(JAMP_AIS、JAMP_MSDSplus)を用いて、部材を納入いただく購入先様1万社から製品化学物質含有量データを提供していただいてきました。
一方、日本国内だけでも、各社独自の調査様式による含有物質調査がサプライチェーンの中で多数行われ、上流サプライヤの負荷が増大していました。こうした課題認識に基づき、2015年には経済産業省によって製品含有化学物質の情報を伝達する新スキームchemSHERPAが提案されました。chemSHERPAで利用されるフォーマットはIEC62474電気・電子業界およびその製品に関するマテリアルデクラレーションの国際規格に準拠した情報伝達フォーマットであるため、当社グループとしても利用に賛同し2018年1月より情報収集フォーマットとして本格運用を開始しました。サプライチェーンがグローバルに拡大している現在、特に海外の購入先様により理解を深めていただくことが重要です。中国、アジアを中心にグローバル10カ国以上で、100事業場以上の担当者および購入先様に対する講習会を実施し、JAMPフォーマットの維持管理が終了する2018年6月までにchemSHERPAへの切り替えを完了しました。

(2019年3月15日より、JAMPのWebサイトはchemSHERPAのWebサイトと統合)

また、日本の自動車メーカーが、日本の自動車業界で製品含有化学物質の情報伝達を担ってきたJAMA/JAPIA統一データシート※5からグローバル自動車業界でのデファクトスタンダードとなっているIMDS※6を利用した情報伝達への一本化を進めてきたことを背景に、当社グループの車載事業でもIMDSを利用した情報伝達へのシフトを2020年10月より本格化させました。その際、200社を超える購入先様への説明会を実施し、スムーズな移行を完了しました。これにより、当社グループの製品化学物質管理システムからIMDSを介し購入先様から部材の含有化学物質情報を入手するとともに、当社グループ製品の含有化学物質情報をお客様にお届けすることが可能となり、サプライチェーンにおける情報伝達の負荷軽減を図っています。

電子部品を調達する企業は、調達部品の選定や使用において、EUのRoHS指令やREACH規則に順法するために、これらで規制されている物質に関する含有情報を把握する必要があります。特にREACH規則における高懸念物質(SVHC)の含有情報は、半年ごとに新たな物質が追加されるため、最新の含有情報について調達先から迅速に情報提供されることを期待しています。
当社グループでは電子部品を調達する企業様が迅速かつ効率的に化学物質含有情報を把握できるように、2012年11月より主要な汎用電子部品について、RoHS指令への適合情報やREACH規則のSVHCの含有情報を当社グループWebサイトのRoHS/REACH確認報告書で公開しています。

※5 日本の自動車業界(自動車工業会、自動車部品工業会)で標準化された成分調査データシート
※6 International Material Data System:グローバルに運用されている自動車産業界向けのマテリアルデータシステム

なお、当社グループでは、日本の資源有効利用促進法で対象となる製品において、除外項目以外の部位において基準値を超えた特定の化学物質を含有する製品を製造または輸入販売などをしていません。詳細は下記「対象製品含有表示情報」でご覧ください。

また、水銀に関する水俣条約の対策を日本国内で実施するため、2015年6月に水銀汚染防止法が制定され、水銀使用製品の事業者の責務として、使用済み製品の廃棄時に適正分別・排出されるよう、表示などの情報提供を行うことが定められました。当社グループでは2017年5月に、製品中の水銀使用に関する情報をお客様にわかりやすくお伝えできるよう、Webサイトに「水銀汚染防止法にもとづく情報提供」ページを開設しました。

化学物質の影響評価

環境負荷の低い製品開発に向けて、製品に含まれる化学物質が、人や環境にどのような影響を与えるかを科学的に把握することが重要です。当社グループは、製品の使用時において使用者であるお客様が高懸念物質に暴露する可能性やそのときの安全性などを評価する取り組みを進めています。
これまでは、業務用電子レンジの一部の機種で用いられていたセラミックファイバーの影響について評価を行い、EUのREACH規則で製品が所定量の高懸念物質を含有する場合に求められる、安全に使用するための情報を作成する一環として、安全性評価書を作成・公表しています。使用者への暴露はほとんどなく、健康影響の懸念は小さいと判断しています。なお、当社グループ製品への使用は2010年12月に終了しています。

化学物質の使用・排出の削減

冷凍や空調の冷媒、断熱材等に使用されてきたフロンガス(フッ素化炭化水素)は、オゾン層破壊や地球温暖化を引き起こす性質を持っています。当社グループでは、これらの影響が極めて小さいCO2を冷媒として使用する技術開発を進め、2001年よりCO2冷媒を使った家庭用給湯器を提供してきましたが、このCO2冷媒は加温には適しても冷凍・冷蔵用途に使うことが難しく、特に大型の業務用設備には装置の大型化や効率面で不向きでした。当社グループは、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の支援を受けて、CO2冷媒を使用したノンフロン冷凍機システムの開発に取り組み、2010年よりノンフロン冷凍機とショーケースを日本国内のスーパーマーケットやコンビニエンスストアへ納入開始しています。また、物流倉庫や食品工場を想定した大出力冷凍機を商品化し、お役立ちの幅を広げて国内市場からグローバルに展開しています。

CO2冷媒を使用したノンフロン冷凍機 OCU-CR2001MVF
新冷媒R32を搭載したウィンドウ型エアコン CW-HZ180YA
CO2冷媒対応ショーケース FPW-EV085
自然冷媒R290を採用した住宅向けヒートポンプ式温水給湯暖房機

また、家庭用壁掛けルームエアコンにおいては、ノン・インバーターから省エネ性の高いインバーター機種への切り替えだけでなく、地球温暖化係数(GWP)の低い新冷媒R32への切り替えが進んでいます。2019年には、香港におけるウィンドウエアコン市場では業界初となるインバーター化と新冷媒R32を採用した新モデルの商品化を行い、環境負荷低減に取り組んでいます。

フロンによるオゾン層破壊の対策として、ルームエアコンではR410Aと呼ばれるオゾン層を破壊しない冷媒が使用されていましたが、地球温暖化係数(GWP)が非常に高いという課題がありました。そこで当社グループは、2013年からGWPがより小さい新冷媒R32を採用した機種を開発、販売を開始しました。さらに、インドネシアでルームエアコン工場を有するパナソニック マニュファクチャリング インドネシアは、2014年度にオゾン層破壊につながるHCFC冷媒R22を用いた生産設備を、R32を使用する設備に一新、R32新冷媒エアコンの供給を開始することで、インドネシア政府が進めるHCFCの使用廃止に貢献しました。

2023年5月に日系メーカーとして初めて、GWPが極めて低い自然冷媒R290を採用した住宅向けヒートポンプ式温水給湯暖房機 新製品3機種(暖房能力別)を欧州で発売しました。

塩化ビニル樹脂の使用制限

塩化ビニル樹脂(PVC)は、廃棄時の不適切な処理による有害物質の生成や、PVCを軟らかくするための一部の添加剤(フタル酸エステル)の有害性が懸念される材料です。このPVC製の機器内部配線は、使用済み製品での分別処理が難しく、不適切に処理される可能性が高いため、当社グループは品質・調達上の課題がある場合を除いて、2011年4月以降の新製品において非PVC製電線で代替しています。

フタル酸エステルの使用制限

PVC材料において含有されることが多いフタル酸エステル類については、EU RoHS2で2019年7月22日から4種類※7が規制されました。
当社グループはこれらを、2018年7月に発行した化学物質管理ランク指針Ver.11(製品版)において、禁止物質レベル1と設定、2018年7月22日以降納入禁止としました。それ以外のフタル酸エステルについては禁止物質レベル3として設定し、代替化を推進しています。
またフタル酸エステルには、移行性(接触により他の成形品から物質が移動する性質)があります。このため、禁止物質レベル1に設定した4種を含有した生産設備や工程内備品などからの移行によって部材が汚染される場合があることから、接触による汚染防止対策も進めています。加えて、フタル酸エステルの受入検査体制を構築するため、受入検査基準を改定し、フタル酸エステルの混入リスクが高いPVC、エラストマー、接着剤等の部材の受入検査の実施を決定し、分析機器の選定・評価を行って、事業場への導入を進めました。当社グループが欧州に輸出する製品に含まれるフタル酸エステルは従来10tありましたが、2019年3月末現在で廃絶を完了しています。

※7 DEHP:フタル酸ビス(2-エチルへキシル)、BBP:フタル酸ブチルベンジル、DBP:フタル酸ジブチル、DIBP:フタル酸ジイソブチル

工場の環境影響低減の取り組み

当社グループは使用する有害性物質を把握し、使用による影響を評価することで、自主的に使用廃止や排出抑制により環境影響の最小化に努めています。1999年より3年間で33%、6年間で50%削減を実践する33/50削減活動を進めてきました。日本では1999年度から工場の化学物質の使用量および排出・移動量の削減を推進し、自主行動計画目標50%削減に対し、2004年度には1998年度比で使用量75%および排出・移動量の62%削減を達成しました。以降、さらに排出・移動量の多い物質に特化して削減に取り組み、グローバル全工場で2010年度は対象の重点化学物質の排出・移動量を2005年度比で自主行動目標30%に対して46%削減を達成しました。
また国際的な化学物質管理の動向を踏まえ、2010年度からはより有害な物質が優先的に削減されるように削減取り組みを実施しています。化学物質管理ランク指針(工場版)は、上記活動を支える管理指針として1999年に制定しました。Ver1では発ガン性を有する物質リストを主体とした管理対象物質を整備し、2000年には、Ver2へ改定を行い、日本:PRTR法を追加しています。2004年からのVer3ではこれらに加え、日本の化学物質管理に関係する法規制を網羅する物質リストを作成しています。2009年に改定のVer4以降の管理対象となる化学物質は、日本、米国、欧州、および国際条約を主体とした、ヒトの健康および環境に影響する法規制等を参照しています。
化学物質管理ランク指針(工場版)は、化学物質に関する主要な法規制からヒトの健康および環境に有害性を有する化学物質を選定し、パナソニックグループの管理対象の化学物質としています。加えて、当社グループ独自の指標としてヒト・環境影響度※8を策定し、グローバル全工場でこの指標を使用しています。従来、化学物質の管理には、使用量・排出量等の量が指標として使われてきました。しかし量を指標とした場合、有害性が高いにも関わらず使用量が少ない場合などに、削減・管理の対象から外れ、使用によるヒトの健康および環境への有害性に対する影響評価からもれてしまうなどの問題がありました。また、物質の種類や地域の法規制ごとに有害性の基準が様々であり、グループとして統一した管理が難しいという課題もありました。そこで、社内外の専門家と協働し、有害性情報を総合評価した区分を行い、区分ごとに有害性の重み付けを表す有害性係数を付与しています。具体的には、国際機関発行の発ガン性評価や一般公開されている有害情報、そして公になっているオゾン層破壊物質リスト等を活用し、物質ごとに有害性区分を選定しています。有害性情報が複数ある物質については、有害性が最も高いものを採用した有害性区分としています。これらグループ内独自指標を活用し、発ガン性やオゾン層破壊物質等、有害性が高く影響が大きい物質が、リスクの大きさに応じて優先的に削減されるように、ヒト・環境影響度指標として、高有害性物質を徹底して減らす取り組みを推進しています。また、購入先様からも有害物質を含まない資材等のご提案の協力がいただけるよう、化学物質管理ランク指針を、当社グループグリーン調達活動のWebサイトにも掲載しています。

※8 ヒト・環境影響度=有害性係数×排出・移動量

このほか、各国が発する多様な化学物質の規制に対しても、担当の地域統括会社や業界団体を通じて最新情報を入手し、法令を順守するようにしています。2020年の中国VOC規制に対しては、購入先様のご協力もいただき、担当の事業部門ごとに適合確認や適合品への切り替え等の対応を行いました。

有害性区分

有害性区分

有害性※9

有害性係数

A

発ガン性・オゾン層破壊物質

10,000倍

B

影響大もしくは直接的な影響

1,000倍

C

影響中

100倍

D

影響小もしくは間接的な影響

10倍

E

影響極小もしくは評価されていない

1倍

※9 ヒトの健康に影響する有害性は発ガン性の他に突然変異、生殖毒性、急性毒性を対象としている。環境に影響する有害性/物質は、オゾン層破壊物質の他に生態毒性、温暖化に影響する物質、光化学オキシダント発生の原因となる物質を対象としている

ヒト・環境影響度

影響度は、有害性区分A・B・C・D・E全部で2010年度1,008,000カウント、2018年度536,000カウント、2019年度466,000カウント、2020年度430,000カウント、2021年度416,000カウント、2022年度431,000カウント(2010年度から57%削減)

注:2010年度は旧三洋電機の海外事業場を含まず

2022年度は、歩留まり向上、リサイクル推進とさらに塗装工程での噴霧制御の最適化と塗装不良の低減、樹脂材料の変更と注入量の改善、洗浄の自動化による洗浄溶剤の削減、低有害性部材の導入など工程での改善により、2010年度比で57%削減することができました。生産活動に伴う環境負荷物質の排出量を最小化する活動を継続して実践していきます。

VOC※10排出量

VOC※8排出量は、2018年度1,994トン、2019年度1,665トン、2020年度1,508トン、2021年度1,681トン、2022年度1,539トン

※10 揮発性有機化合物(VOC)の使用に伴う大気への排出実績。集計は大気汚染防止法に記載されている当社グループ選定の主なVOC100物質を対象とする

管理対象化学物質※11のマテリアルバランス

管理対象化学物質※9のマテリアルバランス 2022年度 入力量234,683トン(2021年度 入力量209,949トン、2020年度:228,007トン)、除去処理量※11 14,277トン(2021年度:19,228トン、2020年度:20,464トン)、公共用水域排出量41トン(2021年度:45トン、2020年度:40トン)、大気排出量2,953トン(2021年度:2,827トン、2020年度:2,758トン)、土壌排出量0トン(2021年度:0トン、2020年度:0トン)、リサイクル量※12 16,330トン(2021年度:23,114トン、2020年度:15,678トン)、移動量※10 773トン(2021年度:819トン、2020年度:747トン)、製品としての出荷量※13 200,358トン(2021年度:163,913トン、2020年度:188,319トン)

※11 化学物質管理ランク指針(工場版)によるもので、PRTR対象物質すべてを含む
※12 廃棄物としての移動と下水道への排水移動を含む。なお廃棄物処理法上、廃棄物に該当する無償およびパナソニックグループが処理費用などを支払う(逆有償)リサイクルはリサイクル量に含む(PRTR法で届け出た移動量とは異なる)
※13 対象物質が中和、分解、反応処理などにより他物質に変化した量
※14 パナソニックグループが対価を受け取る(有償)リサイクル量、ならびに無償および逆有償のリサイクル量
※15 対象物質が反応により他物質に変化したり、製品に含有もしくは付随して場外に持ち出される量

管理対象の化学物質 排出・移動量※16

管理対象の化学物質の排出・移動量は、2018年度4,592トン(日本:1,535トン、日本以外:3,057トン)、2019年度3,942トン(日本:1,318トン、日本以外:2,624トン)、2020年度3,547トン(日本:973トン、日本以外:2,574トン)、2021年度3,691トン(日本:1,112トン、日本以外:2,579トン)、2022年度3,767トン(日本:1,190トン、日本以外:2,577トン)

※16 データ収集・集計の体制が整っていない一部の会社を対象外としている。