使用済み製品リサイクルのグローバルでの取り組み

資源の有効利用や環境汚染防止などを目的に、世界各国でリサイクルの法制度や仕組みの整備が行われています。日本では特定家庭用機器再商品化法(家電リサイクル法)や資源有効利用促進法が、EUではWEEE(廃電気電子機器)指令が、米国の多くの州や中国でもリサイクルに関する法令が制定・施行されています。パナソニックグループは非OECD諸国への有害廃棄物の移動を規制するバーゼル条約や各国の関連法令の順守はもとより、サードパーティーの活用も含めて国ごとのリサイクルインフラの実情に即した最も効率的な仕組みづくりに貢献しています。
2022年度の製品リサイクル実績は以下の通りです。近年は国外においては各国における事業領域の変革に伴う回収・リサイクル量の減少により、実績重量も横ばいまたは減少傾向にあります。

2022年度実績

日本

使用済み家電4品目を約161.91kt再商品化等処理

米国

使用済み電気電子機器を約76t回収

日本における製品リサイクルの取り組み

2001年に4品目を対象とした家電リサイクル法の施行に伴い、メーカーはA・B2つのグループに集約され使用済み家電4品目※1の回収および再商品化等(リサイクル)を実施することになりました。当社グループはAグループに属し、既存インフラを活用した地域分散型処理システムを運営管理する(株)エコロジーネットを(株)東芝様と設立しリサイクルに取り組んでいます。この管理会社は、Aグループ(当社グループをはじめとする18社)のメーカーの委託を受けて、指定引取場所329カ所(A・Bグループ共有)と再商品化工場30カ所を管理運営しています。また当社グループはパナソニック エコテクノロジーセンター(株)(PETEC)、パナソニック エコテクノロジー関東(株)(PETECK)、中部エコテクノロジー(株)(CETEC)※2に出資し、リサイクルしやすい商品の設計のための情報交換を製品の製造事業部と行うとともに、効率的かつより多くの資源を回収・供給できるよう研究開発を進めており、2022年度は使用済み家電4品目を約161.91ktリサイクルしました。
法定リサイクル率※3は段階的に引き上げられてきていますが、パナソニックグループの各リサイクル工場は、製品の特性や使用原材料、リサイクル効率化の観点より適宜リサイクル設備や工程の見直しを行い、法定リサイクル率を上回るリサイクル実績を収めています。
PETECKでは、2019年夏よりエアコン処理ラインの分解工程の室外機反転・移載の一連の作業を自動化しました。認識装置で室外機の姿勢や大きさを認識し、多関節ロボットで掴んで持ち上げ、認識情報から標準的な解体工程とウインドウタイプなどの特殊品の解体工程に振り分け移載するというものです。これにより平均重量が33kgあり作業者に体力を要求し、かつ危険を伴う室外機の姿勢を天地逆にする反転作業から作業者を開放することができ、エアコン処理を安全かつ効率的に行うことが可能になりました。
また、PETECでは、プラスチック選別装置を用いた高品位の単一プラスチック再資源化の取り組みを進めています。詳細は再生樹脂の使用拡大を参照ください。

PETECKの「エアコン室外機反転装置」

※1 エアコン、テレビ、冷蔵庫・冷凍庫、洗濯機・衣類乾燥機の4品目
※2 PETECは当社グループ単独出資会社、PETECKとCETECは三菱マテリアル(株)様と当社グループの合弁会社
※3 法定リサイクル率=法令で定められたリサイクル率(有価資源重量÷使用済み家電総重量)
法定リサイクル率は2009年と2015年に引き上げられ、現在はエアコン80%以上、ブラウン管式テレビ55%以上、液晶・プラズマ式テレビ74%以上、冷蔵庫・冷凍庫70%以上、洗濯機・衣類乾燥機82%以上

欧州・CIS地域における取り組み

2021年、当社グループは欧州において、廃電気電子機器(WEEE)指令対象製品を約21.87kt※4回収しました。

製品にリサイクル材料を使用するきっかけとなるサーキュラーエコノミー
欧州では、2018年と2020年に第1回および第2回のサーキュラーエコノミー行動計画が発表されました。同様に、多くのEU加盟国は独自のサーキュラーエコノミー行動計画を発表しています。一方、ヨーロッパでは、新製品でのリサイクル材料の使用にフォーカスした法的要件がますます増えています。一例として、持続可能な製品のためのエコデザイン規則(ESPR)案が公開されており、2024年または2025年に施行される予定です。これにより、様々な製品に個別に定められたリサイクル材料の最小量の法的枠組みが設定されます。そこで、パナソニックグループは、このようなリサイクル材料の要求に今後どのように対応していくかを検討し始めました。これには保証された品質での安定供給を確保することが含まれます。さらに、製品設計への影響、製品や部品の再利用の強化、または製品のリサイクル性をさらに改善および簡素化する方法について、グループ内での議論を強化しています。

※4 回収システムごとの回収重量×当該システムにおける当社グループ重量ベース市場投入シェアにより算出

北米における取り組み

当社グループは、北米における廃電池や使用済み製品に対するリサイクルシステムの構築・運営を継続的に主導しています。2007年7月にミネソタ州で施行されたリサイクル法を契機に、同年9月には(株)東芝様およびシャープ(株)様と共同でアメリカリサイクルマネジメントLLC(MRM)を設立し、テレビ、パソコン、その他の電子機器製品のリサイクルを開始しました。
リサイクル業者数社と提携し、MRMは多数の企業から委託を受け、20州およびコロンビア特別区において回収プログラムを運営しています。
2007年の開始以来、MRMの総回収量は12億ポンド(約600kt)を超えました。米国における当社グループの事業戦略の変更に伴い当社グループの回収義務はごくわずかとなっていますが、MRMはメーカーを代表し、今後も回収プログラムの運営を続けていきます。
廃電池については、1994年に他の電池メーカーと協働してCall2Recycleというプログラムを立ち上げ、全米およびカナダで二次電池のリサイクルプログラムを提供しています。Call2Recycleは300社以上の企業に回収プログラムと小売店回収ネットワークを提供しており、設立以来、米国内とカナダで94.5kt以上の一次電池と二次電池を回収しています。
カナダにおける使用済み製品のリサイクルは、アルバータ州政府拡大生産者責任(EPR)法の下、2004年に開始されました。それ以来、10州と2準州でWEEEの法制化が完了しており、それぞれに独自の特徴と要求事項が盛り込まれています。パナソニック カナダはこれらプログラムの調和を図るために、非営利組織である電子製品リサイクル協会(EPRA)の管理のもと積極的な役割を担っています。2020年にはカナダ国内で合計109.41ktの使用済み製品が回収され、現在運営されている各州のEPRプログラムがWEEE対応に非常に有効であることが実証されています。

中国における取り組み

中国では、2012年5月に公布・同年7月に実施された廃棄電器電子製品回収処理管理条例の第2期目録(2015年2月公布)の対象製品定義の明確化や、基金単価の設定に関する情報収集・意見提出を進め、政府部門である環境保護部や財政部などからの早期開示に向けた活動を展開しています。
2017年1月に政府より公布された生産者責任延伸制度推進方案の動向把握、2020年9月に施行された固体廃棄物環境汚染防止法の細則発行に向けた対応検討も進めています。

東南アジア・大洋州における取り組み

ベトナム
2016年7月のリサイクル法の導入により、生産者や輸入者はベトナム国内で販売した製品に対する回収スキームの構築が義務付けられています。パナソニック セールスベトナム(PSV)は、ホーチミンに2カ所、ハノイ、タインホア、ゲアン、ダナン、カントーに各1カ所、計7カ所に回収拠点を開設しています。2022年1月からリサイクル法が2020年環境保護法に取って代わられたにもかかわらず、PSVは2022年、16.4tの使用済み製品を回収し、適切に処理されるよう認可を受けたリサイクル業者に引き渡しました。
2020年環境保護法は、ベトナム国内における使用済み製品の管理強化など広範にわたる環境課題の対処に向けた要求事項を定めています。また、政府は「環境保護法の多数の条項を詳述する政令」および「環境保護法の多数の条項の実施を詳述する省令」を発行しました。2022年1月10日から発効した環境保護2020に基づいて、生産者および輸入者は2022年1月から一次電池の廃棄物処理に財政的に貢献する必要があります。それ以来、PSVは、2022年に市場に投入される一次電池に対して適切な処理を確保するために必要な財政的貢献を行ってきました。今後、2024年1月から充電式電池の、2025年1月から電子製品の廃棄物リサイクルに対して、財政的に貢献する、または自己管理する必要があります。
パナソニック セールス ベトナムはベトナム政府と密に連携しながら効果的な使用済み製品リサイクルスキームの実施をサポートします。

オーストラリア
オーストラリアでは、2011年にテレビ、パソコンの国家リサイクルスキーム(NTCRS)が策定されました。2021年7月1日から、NTCRSは、2020年リサイクルおよび廃棄物削減法に基づいて制定された、2021年リサイクルおよび廃棄物削減規則(製品管理-テレビおよびコンピューター)に取って代わられ、廃棄物、リサイクル、製品を管理するための新しい法的枠組みを規定しています。現在、国の枠組みはテレビとコンピューター(プリンター、コンピューター部品、周辺機器を含む)を対象としています。
パナソニックオーストラリア(PAU)は、2021年5月以降、この国家スキームの下、政府公認の共同規制協定であるEcycle Solutionsと提携し、法的責任を果たしています。2022 年1月から2022年12月までにリサイクルした使用済み製品は23tでした。
2021年4月以降、PAUはバッテリー管理評議会(BSC)にもメンバーとして加わりました。
会員の義務の一環として、PAUは2022年1月から12月までに輸入されたバッテリー91トンを含む輸入バッテリーのリサイクル費用に貢献しました。

シンガポール
シンガポールでは、2021年7月からリサイクル法が施行され、生産者は当局が認定する生産者スキーム(Producer Responsibility Scheme:PRS)に加盟することが義務付けられています。2022年度(2022年7月から2023年6月)は、規制対象の大型家庭用電化製品(LHA)に60%、ポータブルバッテリーに20%の収集目標が設定されました。パナソニックシンガポールはこのスキームの円滑な実施に向けて当局やPRS事業者と密接に連携しています。2022年1月から2022年12月の間に、合計5,963tの規制された廃棄物がPRS事業者によって収集され、そのうちLHAは重量の合計が91%でした。

その他東南アジア・大洋州諸国
グローバルでの使用済み製品リサイクルの法的責任の規定化の流れに従い、マレーシア、タイ、フィリピン、ニュージーランドでも法策定に向けた動きが加速しています。当社グループでも規制当局や業界団体を通じて協議を進めています。
こうした政府や業界団体との連携、リサイクルに関するパイロットプロジェクトへの参画を通して、当社グループは各国において持続可能な使用済み製品の管理政策の確立に向けて貢献していきます。

インドにおける取り組み

インドでは、2017年10月1日から環境森林気候変動省(MoEFCC)により、新たなE-wasteリサイクル法が施行されており、E-waste(管理)ルール2016で定義された製品寿命(EoL)に基づく拡大生産者責任(EPR)目標が規定されています。本法令に対応するため、当社グループではパナソニック インドがすでに構築している「I Recycle」プログラムを通じて、使用済み製品の回収・リサイクルを実施していきます。また当社グループは、インドのリサイクル活動の現状分析や課題解決に向けた中長期案を推進する、電機電子業界団体CEAMAに参画しています。当社グループはCEAMAとともに、リサイクル管理のためのEPR目標およびEoL定義に関する様々な対話をインド政府と重ねています。また、より効率的で安定的なリサイクルシステム構築に向け、インド商工会議所連合会(FICCI)やインド工業連盟(CII)とも積極的に連携し、より良い管理システムとなるよう業界の見解をインド政府へ提言しています。

中南米における取り組み

中南米各国においても環境法令の強化が進む中、リサイクル法制化の検討・導入が進められています。
ブラジルでは2019年10月に家電業界分野別協定が締結され、2021年1月に家庭用電気電子機器の回収・リサイクル制度を規定した政令が施行されました。当社グループはリバースロジスティクスシステム(使用済み製品を回収するためのシステム)構築にも、廃家電管理団体(ABREE)の主要メンバーとして、効率的な使用済み製品の回収・処理を推進しています。
ペルーでは2016年に施行されたリサイクル法の下、非営利組織である廃棄物管理協会(ASPAGER)の主要メンバーとして参画し使用済み製品の回収プログラムを継続しています。コロンビアにおいては、2018年に家電リサイクルの枠組み法が制定され、細則の制定を前に2014年より産業団体(ANDI)の実施する使用済製品の回収プログラム(Red Verde/Lumina)に参画しています。
また、メキシコでは政府に承認されたリサイクル管理計画に基づき回収プログラムを展開しています。
チリでも法制定が検討されており、政府とも協議を重ね回収プログラム構築準備を進めています。