第42回 市村産業賞・功績賞

2010年4月28日、第42回市村産業賞受賞者が決定し、パナソニックの「柔軟性を有する結晶性グラファイトの開発と実用化」の功績において、パナソニック プロダクションテクノロジー株式会社 西木 直巳と、パナソニック エレクトロニックデバイス ジャパン株式会社 久保 和彦、長崎総合大学 理事 吉村 進氏の3名が、功績賞を受賞しました。

同賞は、優れた国産技術を開発することで、産業分野の発展に貢献・功績のあった技術開発者またはグループに対し、財団法人 新技術開発財団(昭和43年設立)より贈呈されるものです。

『柔軟性を有する結晶性グラファイトの開発と実用化』

受賞者

パナソニック プロダクションテクノロジー株式会社
外販事業推進グループ チームリーダー 西木 直巳

パナソニック エレクトロニックデバイス ジャパン株式会社
セラミックディビジョン 技術グループ 主任技師 久保 和彦

長崎総合科学大学 理事 吉村 進

(左から)西木 直巳、久保 和彦、吉村 進理事

(左から)西木 直巳、久保 和彦、吉村 進理事

開発の背景

携帯電話などのモバイル電子機器の軽薄短小化、高機能・高性能化が急速に進む中、CPUなどからの発熱をいかにして逃がすかが大きな課題になっていました。放熱/熱拡散のために、薄くて軽く、高い熱伝導性を有する材料が求められ、熱伝導率が銅の倍以上の結晶性グラファイトへの期待が高まるとともに、実用化に際しては実装の高密度化に対応するため熱源形状に沿うことができる柔軟性も要求されていました。

図1.柔軟性のあるシートとその折鶴

開発技術の概要

特定高分子(ポリイミド等)から、水素、酸素、窒素を加熱により順次切り離し、残った炭素原子をさらに加熱することにより再結晶化させてSP2結合構造を作り、結晶性グラファイトを生成する高分子グラファイト化法を開発。従来の炭化水素ガス堆積法ではできなかった薄板や柔軟性の付与(図1)を世界で初めて実現しました。(1995年12月4日発表)
本方式によるグラファイトは単結晶の集合組織であるが、粒界の存在が曖昧であることも寄与し、単結晶体のような挙動及び特性を示します。また、層状の結晶構造であるため、その層方向では熱伝導率、弾性率、強度が物質中トップクラスの特性を有する一方で、厚さ方向は熱伝導率が約100分の1であり、熱伝導方向の制御も可能となります。

図2.携帯電話への応用例(対策前後の熱分布)

開発技術の特長と効果/実績

柔軟性を有する結晶性グラファイトは低比重、高熱伝導性に加えて加工性の良さを特長とし、音響特性に優れたスピーカの振動板として、また、ノートパソコン、携帯電話の放熱/熱拡散材料(図2)として実用化しています。また、結晶性グラファイトは、99.9%以上の炭素で構成されるため対環境性、耐熱性にも優れ、ガス発生がないため、半導体製造装置や医療機器等、多方面での展開が期待されるなど電子機器・設備の高機能化をサポートし、生活の利便性向上と環境対策との両立に大きく貢献します。

受賞者コメント

西木 直巳

西木 直巳

約2年間、グラファイトシートの研究開発に没頭しました。自分の健康よりも研究、という感じで(笑)。ともかく楽しく、集中していた開発時代だったと思います。多くの方々に支えられ研究開発をさせていただき感謝しております。

研究開発は「我慢」の連続です。無理をせず、無理をする、といった生活になりますが、非常に面白いです。PGS®グラファイトシートのように基礎研究を終えて応用例を見守るのも、なかなかの満足感です。研究開発者のみなさん、開発を楽しみましょう。

久保 和彦

久保 和彦

熱対策に絶大な効果を発揮するはずのグラファイトですが、私が担当をはじめた2000年当時は、その具体的な用途が見つからず、さまざまな業界に持ち込んではご提案をして回るという日々でした。時には、お客様の実験室の中に入れてもらい共に熱対策の検討をしたことも、懐かしく思い出されます。

お客様とともに自分も熱対策の勉強を積ませていただきながら、その中で飛躍的に伸びて来た携帯電話市場の熱対策にマッチングすることがわかり、少しずつですが搭載されるようになりました。さらに携帯電話の薄型化の流れに合せてグラファイトの厚さも薄型化開発を進め、今日の販売規模に成長できました。
お客様のニーズに合ったアイディアと商品づくりこそが商品を成長させるのではないかと思います。

今回の受賞で、当社の柔軟性を有する結晶性グラファイトの実績が認められたことは大変光栄に思います。
これまでに本開発にご指導やご協力頂いた会社、OB、上司、また、開発を支援いただいた関係団体に感謝申し上げます。