第58回電気科学技術奨励賞

2010年11月24日、第58回電気科学技術奨励賞(旧オーム技術賞)が決定し、当社の2つの技術が受賞しました。

「圧電薄膜の開発と圧電MEMSデバイスの実用化」の功績において、パナソニック株式会社 先端研究所 藤井 映志、パナソニック株式会社セミコンダクター社 野村 幸治、パナソニック システムネットワークス株式会社 渡邊 修の3名が、電気科学技術奨励会会長賞及び電気科学技術奨励賞を受賞し、「Web Datalogger Unitの開発」の功績において、パナソニック電工SUNX株式会社 藤井 慎也、青山 幹也の2名が電気科学技術奨励賞を受賞しました。

同賞は、電気科学技術に関する発明、改良、研究、教育などで優れた業績を挙げ、日本の諸産業の発展および国民生活の向上に寄与し、今後も引き続き顕著な成果の期待できる人に対し、財団法人 電気科学技術奨励会より贈呈されるものです。

『圧電薄膜の開発と圧電MEMSデバイスの実用化』

受賞者

藤井 映志
パナソニック株式会社
先端研究所 ナノプロセス技術グループ
グループマネージャー

野村 幸治
パナソニック株式会社 セミコンダクター社
生産本部 プロセス開発センター デバイスグループ 参事

渡邊 修
パナソニック システムネットワークス株式会社
オプティカルデバイスビジネスユニット
インクジェットソリューショングループ チームリーダー

(左から)渡邊 修、藤井 映志、野村 幸治

(左から)渡邊 修、藤井 映志、野村 幸治

概要

電気-機械相互変換できる圧電材料であるチタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr,Ti)O3:PZT)は、MEMS技術の発展により、マイクロセンサ・アクチュエータのキー材料のひとつとして注目され、薄膜化の研究が盛んに行われてきました。高性能なPZT圧電薄膜を実現するためには、圧電性能に優れた分極方向に結晶配向させる必要があります。しかしながら、分極方向に結晶配向したPZT圧電薄膜は、高価なMgO単結晶基板を用いた場合しか実現しておらず、安価で加工性の良いSi基板上に作製することへの強い要望がありました。これまで数多くの研究開発がなされてきましたが実現していませんでした。

本開発では、新規な下部電極材料と配向制御層の導入により、Si基板上に分極方向に結晶配向したPZT圧電薄膜を実現しました。また、スパッタ法による量産化技術も開発し、φ8インチSi基板上への高歩留まりでの製造を可能としました。なお開発したPZT圧電薄膜は分極処理を必要とせず、従来の焼結体材料と比較して、圧電定数は約1.5倍、電気機械結合係数は約3倍と優れた圧電性能を有しています。

さらに、上記PZT圧電薄膜技術とMEMS技術を融合させることにより、インクジェット薄膜ヘッドを開発し、実用化しました。開発したインクジェット薄膜ヘッドは、PZT圧電薄膜を用いたアクチュエータ部をすべて薄膜プロセスで高精度に作製しています。これにより従来の焼結体材料を用いたインクジェットヘッドと比較して、高精度なインク吐出の制御を可能としました。そして、複数個のインクジェット薄膜ヘッドを一列に配置した任意の長さのラインヘッドを開発し(図)、業務用のオンデマンド印刷機に求められる高画質、高速印刷、高寿命を実現しました。国内外の印刷機メーカーより高い評価を得ており、オンデマンド印刷機に搭載されています。

また、開発したPZT圧電薄膜は、Si音叉型の角速度センサにも応用し、カーナビ用や車両制御用、およびデジタルカメラの手振れ補正用として実用化しています。

オンデマンド印刷機用インクジェット薄膜ヘッドとラインヘッド

オンデマンド印刷機用インクジェット薄膜ヘッドとラインヘッド

受賞者コメント

藤井 映志

藤井 映志

本社R&D部門での先端技術研究から商品技術開発、そして事業ドメインでの量産化に至るまで、組織を異動して、長年にわたり直接携わってきた仕事が評価され、このような賞を受賞できたことに、大きな喜びを感じています。
Si基板上に高性能な圧電薄膜を作製する研究開発を始めた当初から、明確な商品イメージを持って、着実に実験を積み重ねていった結果だと考えています。
また、パナソニックで材料・デバイスの開発に携わってこられた多くの先輩方が蓄積された基盤技術があったことも今回の成功の要因です。
お世話になった多くの方に、心から感謝申し上げます。
今後もこの経験を活かし、新規事業を創出する材料デバイスの研究開発を行っていきたいと思います。

野村 幸治

野村 幸治

新しい独自の材料を用いることが、競争力のある商品を生み出すことにつながり、このような名誉ある賞をいただくこととなり、大変嬉しく思っています。
思えば10数年をかけて、長い間この仕事に関われたことが、成功への道筋であったと思います。
その間、沢山の方々にささえられ、応援していただきました。本当に心より感謝申し上げます。
今後、さらにまた新しい技術に挑戦し続けて行きたいと思います。

渡邊 修

渡邊 修

材料・プロセス開発の成果は、比較的地味で根気のいる作業の積み重ねにより花開くものと考えております。 今回、名誉ある賞をいただき、当社の圧電MEMSデバイス技術が認められたことは、大変光栄に思います。
これまで本開発および実用化に関して、ご指導、ご協力頂いた社内外の多くの方々に心より感謝申し上げます。
今後も、お客様の視点に立って本技術をさらに進化させるとともに、お客様に喜んで頂ける商品開発に取り組んでいきたいと思います。

『Web Datalogger Unitの開発』

受賞者

藤井 慎也
パナソニック電工SUNX株式会社
センシングコントロール事業部
コントローラ商品開発部 PLC開発グループ

青山 幹也
パナソニック電工SUNX株式会社
技術統括部 R&Dセンター 電子制御グループ

(左から)藤井 慎也、青山 幹也

(左から)藤井 慎也、青山 幹也

概要

2010年4月より改正省エネ法により、小規模店舗なども、そのエネルギー使用量を事業者単位で国へ届け出る義務が生じています。エコを実現するにはまず、エネルギー使用量の見える化が必要です。こうした流れの中、従来のエネルギー監視システムでは、上位の監視用コンピュータから末端の計測機器までトータルで納入される為、大変高価なシステムとなります。法律に対応する為とは言え、小規模事業者にとって大きな負担です。

そこで、小型、低コストで、手軽に導入でき、しかも本格的にエネルギー監視が可能な省エネ支援機器として「Web Datalogger Unit」(以下DLU)を開発致しました。(図) このDLUは、シリアル通信機能やオプションの無線ユニットにより、分散された各所でのエネルギー使用量・室温といった様々な計測データを収集、蓄積出来ます。しかも、LAN経由で工場や事業所だけでなく、遠隔地のオフィスや店舗などの計測データを上位コンピュータのブラウザ(IE等)上にモニタ表示できる機器です。また蓄積データはCSVファイルなので、容易に吸い上げ、解析も可能です。さらに監視管理用のアプリケーションソフトも無償で提供しています。

Web Datalogger Unit

Web Datalogger Unit

受賞者コメント

藤井 慎也

藤井 慎也

この商品は、開発してから事業に貢献できるようになるまでに色々と苦労がありましたが、「言い出しべえ」として責任を持って、一生懸命取り組んできました。それが、「わが国の科学技術の進歩、発達に寄与した」として、このような栄誉ある賞をいただけた事を、大変嬉しく思っています。
様々な方面でご協力いただいた方々に感謝するとともに、今後も、社会に貢献できる商品の開発を推進していきたいと思います。

青山 幹也

青山 幹也

この度はこのような電気科学技術奨励賞を頂き光栄に思います。これは関係者全員の協力があっての受賞であり、嬉しさと感謝の気持ちでいっぱいです。
今後も、更なる研鑽を積み、社会に貢献できる商品を開発して行きたいと思います。