第43回 市村産業賞 貢献賞

2011年4月28日、第43回 市村産業賞受賞者が決定し、「圧電薄膜の開発と角速度センサの実用化」の功績において、パナソニック株式会社 藤井映志、パナソニック  エレクトロニックデバイス株式会社  小牧一樹、山本幸二の3名が貢献賞を受賞しました。

同賞は、優れた国産技術を開発することで、産業分野の発展に貢献・功績のあった技術開発者またはグループに対し、財団法人 新技術開発財団(昭和43年設立)より贈呈されるものです。

今回の当社の受賞者と業績は以下のとおりです。

『圧電薄膜の開発と角速度センサの実用化』

受賞者

藤井映志/先端技術研究所 グループマネージャー
小牧一樹/パナソニック エレクトロニックデバイス株式会社 チームリーダー
山本幸二/パナソニック エレクトロニックデバイス株式会社 参事

開発の背景

機器の小型化、高性能化、低消費電力化の流れの中で、カーナビゲーションシステム、車両制御システムやデジタルスチルカメラの手振れ補正に用いられる角速度センサにはさらなる小形化、高性能化への要求が高まっていました。

開発技術の概要

当社では、小形、高感度、高精度を実現するため、従来の焼結体材料の性能を大きく上回る高性能な圧電薄膜を、当社独自の薄膜・MEMS技術により、シリコン基板上に高精度に作製することに成功、この圧電薄膜を用いた「シリコン音叉型角速度センサ」を開発しました。

薄膜・MEMS技術とは、具体的に次の2つから構成されています。
(1) 高性能な圧電薄膜の作製技術
独自に開発したスパッタ装置を用いて、圧電体であるチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)を高精度に結晶化させ、シリコン基板上に圧電性能の高い薄膜を作製する技術。
(2) MEMS高精度微細加工技術
音叉型振動子の素材にマイクロマシン技術が進んでいるシリコンを採用。シリコンのディープエッチングを用い、音叉の側面を0.1度以下の精度で垂直に加工する技術。これにより、極めて正確な駆動・検出が実現できます。

上記2つの技術を組み合わせている点は、他社にはないパナソニック独自技術です。

シリコン音叉型角速度センサの構造

シリコン音叉型角速度センサの構造

カーナビゲーション用角速度センサ

カーナビゲーション用角速度センサ

開発技術の成果

開発したシリコン音叉型角速度センサは、カーナビゲーションシステム用として2003年に実用化し、現在では車両の姿勢制御用にも採用されています。
2006年には更なる小型化と2軸検知を実現し、デジタルスチルカメラの手振れ補正用として実用化しました。
自動車の安全、快適および民生機器の高性能、高機能化に貢献しています。今後、薄膜・MEMS技術のさらなる進化により、健康医療分野やロボット分野など新たな応用展開も期待できます。

デジタルスチルカメラの手振れ補正用角速度センサ

デジタルスチルカメラの
手振れ補正用角速度センサ

受賞者コメント

藤井 映志

藤井 映志

高性能な圧電薄膜をシリコン基板上に作製する技術は、「計画された偶然」(Serendipity)による発見がベースとなっています。酸化亜鉛バリスタ(ZNR)の場合と同様に、開発当初からはっきりした材料開発の目標を持っていたからこそ、偶然性を伴う発見に出会えることができ、またそれを見逃さなかったのだと思います。
技術だけではなく企業内研究に対する考え方など、多くの指導をしてくださった諸先輩方、ならびに角速度センサの開発・実用化に関わった多くの方々に、心より感謝申し上げます。

小牧 一樹

小牧 一樹

今回、このような名誉ある賞をいただき、大変嬉しく思います。開発では困難の連続でしたが、薄膜,プロセス,回路等の様々な技術者の総力を結集して、一つ一つ壁を乗り越えてきました。
その成果を認めていただいた事を、苦労を共有してきた全ての仲間と喜び合いたいと思います。
とは言え、私達の挑戦はまだまだ続きます。『成功とは、成功するまで続けること』を開発スピリッツとして、さらなる新規デバイスの創出に向け、メンバー一丸となって取り組んでいきます。

山本 幸二

山本 幸二

角速度センサの事業を始めたのは1994年。当時は金属板にセラミック圧電板を接着し、1台づつ手作業で音叉形状に組み立てる工法のため、数100台/月を生産するのに四苦八苦していました。
それから17年、今回の受賞で認めていただいた「圧電薄膜技術とMEMS技術の融合」によって、今では素子生産数1000万個/月という事業にまで拡大することが出来、要素技術の重要性を改めて実感しております。
このように「強い商品」へと進化できたのも、開・製・販一体となった商品開発の結果であり、これまで支えて頂いた皆様には心より感謝申し上げます。