第59回電気科学技術奨励賞

2011年11月22日、第59回電気科学技術奨励賞(旧オーム技術賞)が決定し、パナソニックグループから3件、9名が電気科学技術奨励賞を受賞しました。

同賞は、電気科学技術に関する発明、改良、研究、教育などで優れた業績を挙げ、日本の諸産業の発展および国民生活の向上に寄与し、今後も引き続き顕著な成果の期待できる人に対し、財団法人 電気科学技術奨励会より贈呈されるものです。

今回の当社の受賞者と業績は以下のとおりです。

(左から)笹井、根岸、柏木、高橋、登

(左から)笹井、根岸、柏木、高橋、登

『HD画像向け高画質画像圧縮技術の開発』

受賞者

柏木吉一郎:パナソニックハリウッド研究所 所長
西 孝啓:デジタル・ネットワーク開発センター チームリーダー
高橋俊也:デジタル・ネットワーク開発センター 技監

開発の背景

ブルーレイディスクの開発段階において国際標準化委員会では、高画質かつ長時間記録を実現するためにMPEG-4 AVC メインプロファイルが検討されていました。 従来のMPEG-2画像圧縮方式と主観評価比較を行ったところ、標準画像サイズ以下ではMPEG-4 AVC メインプロファイル方式が優れるが、HD画像ではMPEG-2方式の方が良いとの結果となり、より効率が高くかつ画質の優れた圧縮方式が求められていました。

Blu-ray レコーダ

Blu-ray レコーダ

開発技術の概要

本開発では、主観画質に大きな影響を与える技術コンポーネントを解析し、HD画像特有の画像サイズで画素間相関の特徴を利用できるDCT変換サイズ、量子化マトリックスの2つの技術コンポーネントの追加により、 主観画質が大きく改善することを見出しました。DCT変換サイズでは、HD画像に対し圧縮効率を高め、歪が人間に感知しにくい8画素x8画素単位のDCT変換を追加しました。 量子化マトリックスは、DCT変換して得られた係数を周波数ごとに異なる重みをつけて圧縮する技術で、人間が画質劣化を検知しやすい低い周波数を保護し、 また検知しにくい高い周波数を効果的に削減することで主観画質を高めることができます。

ブルーレイディスク製作環境

ブルーレイディスク製作環境

開発技術の成果

MPEG-2画像圧縮方式に比べ圧縮効率を2倍以上向上する高画質画像圧縮技術を開発し、当該圧縮技術をMPEG-4 AVC ハイプロファイルとして国際標準とすることに成功しました。 更にMPEG-4 AVC ハイプロファイルをブルーレイディスク規格団体に提案、採用に導きました。 ブルーレイ映画ディスク製作用の圧縮装置(エンコーダ)を業界に先駆け開発、映画会社よりブルーレイ映画ディスクを2006年に発売し普及に貢献しました。 また、ブルーレイディスクだけでなく、日本のCS放送、欧州HD放送の圧縮方式として採用され、HD用高画質圧縮の標準方式として広く使われています。

受賞者コメント

柏木 吉一郎

柏木 吉一郎

映画のHDマスター映像の素晴らしさに間近に触れ私自身が感じた感動をできるだけ多くの皆様に余すことなくお伝えしたいという想いと、多くの方々がその標準化に尽力して来られたMPEG-4 AVC技術であればその期待に応えられるはずという思いが、本技術の開発を始めたきっかけでした。 そのような機会に恵まれた幸運と、関係する全ての皆様に心から感謝しています。 今後も、皆様に感動をお届けするための技術開発に真摯に取組んで行く所存です。

西 孝啓

西 孝啓

この度は、このような名誉ある賞を頂くことができ、大変光栄です。 映画監督の皆様の思いが込められた作品を、いかにその意図を忠実にお客様へお届けするかに拘り、妥協なしに高画質化に取り組んだことが、この成果に結びついたと思います。 MPEG-4 AVCの標準化にご尽力された皆様を始め、この活動の機会を与えて下さった皆様に深く感謝を申し上げます。 今後も、お客様に新たな価値をご提供できるよう、新たな技術開発に妥協なしに挑戦していきたいと思います。

高橋 俊也

高橋 俊也

本技術は、開発した技術内容もさることながら、技術開発のきっかけ、標準化状況、実用化時期など数々の幸運、ならびにそれらを与えていただいた方々、特に社内外の規格化関連でご協力、賛同いただいた方々に支えられて開発、実用化できたものです。 心から感謝申し上げます。今後も、お客様に喜んで頂ける商品の核となる技術の開発、実用化に取り組んでまいります。

『携帯電話不感地解消に向けたRoFシステムの開発と実用化』

受賞者

笹井裕之:技術品質本部 主幹技師
内海邦昭:本社グループ人事・総務センター 参事
根岸英彦:パナソニックモバイルコミュニケーションズ株式会社 参事

開発の背景

携帯電話の不感地を解消する手法として、無線基地局のアンテナ部分のみを分離し、小型かつ簡易な基地局としてあらゆる場所に配置する「前進基地局」の考え方がありましたが、携帯電話と前進基地局との距離に依存して、受信する無線信号レベルが大きく変動してしまう等の課題があり、従来、これに対応できる高周波信号の伝送は困難と考えられていました。

携帯電話基地局用RoFシステム

携帯電話基地局用RoFシステム

開発技術の概要

本開発では、「サブキャリアマルチプレックス光伝送技術」のさらなる低雑音・低歪化等の技術開発を推進、超高ダイナミックレンジの光ファイバ伝送技術を確立して、無線信号をそのまま高品質伝送できる携帯電話向けRoF(Radio on Fiber)システムを世界に先駆け実証・実用化しました。さらに,複数の携帯電話キャリアの一括収容、マルチバンド伝送等の無線システムの高機能化実現に向けて、広帯域な増幅回路・整合回路および、光デバイスの仕様緩和による低コスト化も同時に実現する新規技術開発と商用化を行いました。

開発技術の成果

携帯電話キャリア様と共同で、設備の提供・設置を進めてきました。これにより、携帯電話の電波不感地(地下街、地下駅、大型施設、トンネル等)を大幅に解消し、現在では主要なほとんどの場所での携帯電話利用を実現して、ユビキタス通信の環境構築に大きく貢献しています。

受賞者コメント

笹井 裕之

笹井 裕之

本社R&Dにおいて、1990年前半から長年にわたって本テーマの研究開発に取り組んだ結果、今回このような名誉ある賞を頂くことができ、大変うれしく、感慨深く感じております。 今回の受賞で、認知度が低かった本システムを、多くの方々に知って頂けることも、開発者として大変ありがたく感じます。 同時に、多くの先輩方、関係者の皆さまのご支援、ご協力に感謝致します。 また、当社の光伝送技術が認められたことは、大変光栄に思います。 今後は、若い世代の方々が挑戦される新たな技術開発に対して、これまでの経験を伝えて行きたいと思います。

内海 邦昭

内海 邦昭

今回、私共が開発した技術が少しでも社会に貢献できていることが認められ、権威ある電気科学技術奨励賞を受賞できましたこと、心より感謝申し上げます。 携帯電話使用者のほとんどがこのような技術に支えられたインフラをご利用いただいているにも関わらず、一般にはほとんど認知されていないことが実情かと思います。 今回の受賞によって多くの方々に少しでもご理解いただき、最近の理科系離れやそれに伴う技術レベルの低下に歯止めがかかれば幸いです。

根岸 英彦

根岸 英彦

本社R&D部門での光デバイス・センサの研究開発を経て、1997年から光・無線技術の融合領域であるRoFシステムの商品開発を担当し、今回このような名誉ある賞をいただけたことに対し社内外の関係者の皆様に心より感謝申し上げます。 技術の差別化が難しい時代ですが、FTTHを主流としたブロードバンドネットワークを進化させ、今後は当社の映像処理技術を核にホームネットワークの更なるユビキタス・シームレス化を実現できる新商品開発、新たなBtoBサービス創造に全力で取り組んでいきたいと思います。

『仮想視点画像合成技術の開発と全周囲車載カメラシステムの実用化』

受賞者

中川 雅通:システムエンジニアリングセンター グループマネージャー
岡本 修作:オートモーティブシステムズ ヨーロッパ ゼネラルマネージャー
登 一生:先端技術研究所 主幹研究員

開発の背景

交通事故の防止や運転負荷の低減を目的として、車両周辺の画像を車内のディスプレイに表示する車載カメラシステムが開発されてきました。交通事故の防止のためには、車両上空から俯瞰した死角の無い画像の表示が有効ですが、従来、被写体の3次元形状を計測し、この3次元形状と画像を用いて、車両上空の仮想的な視点から見た画像を合成する手法が検討されてきました。しかしながら、車の走行環境には、3次元形状を計測できない被写体が存在するため、従来手法では仮想視点画像を合成できないという課題がありました。

車載カメラの配置例と仮想視点合成画像

車載カメラの配置例と仮想視点合成画像

開発技術の概要

本開発では、道路や駐車場などの車の走行環境の3次元形状は平面や半球などの3次元形状モデルで近似できることに着目し、近似3次元形状モデルを用いて仮想視点画像を生成する技術を開発しました。走行環境の近似3次元形状モデルをあらかじめ保持しておき、この形状モデルにカメラで撮影した画像を投影して、投影された像を仮想的な視点から見た画像を合成します。あらかじめ定められた形状モデルを用いたことで、3次元形状を計測できない被写体が存在する場合でも仮想視点画像を合成できます。

開発技術の成果

本技術により、従来では仮想視点画像を合成できなかった車の走行環境においても、仮想視点画像の合成ができるようになりました。本技術によって生成される車両上空から俯瞰した画像は、死角が無く、被写体との距離やその方向が一目でわかります。そのため、本技術を利用したシステムは、交通事故の防止や運転負荷の軽減に有効なシステムとして、安全性の向上に貢献しています。

受賞者コメント

中川 雅通

中川 雅通

自分達が開発してきた技術が、実用化して安全な運転にお役立ちができて、このような名誉ある賞を頂くことができ、技術者冥利に尽き、喜びで一杯です。 画像処理で安全運転を支援するという新しいコンセプトの実現には多くの課題もありましたが、さまざまな技術を持つ仲間で知恵を合わせ、一から考えることで解決することができました。 今後も、この受賞を励みに、さらなる安全、安心に役立つ商品の開発に取り組んでいきたいと思っております。

岡本 修作

岡本 修作

常に世の中のお役に立てることがないかという思いで技術の開発に取り組んできた結果が評価されたことを、大変嬉しく思っております。 さて、交通事故を減らすということは日本のみならず全世界共通の課題であり、世界各国の政府が事故削減の目標を掲げ、様々な施策に取り組んでおります。 そういったグローバルな課題においてより広く貢献できるよう、今後もこの受賞を励みに、よりお役立ちできる商品の開発と普及に取り組んいきたいと思っております。

登 一生

登 一生

車の周りを上空から俯瞰した画像を合成できる新しい技術を開発し、安全な運転のお役にたてるシステムとして実用化したことが評価され、このような名誉ある賞をいただき大変嬉しく思っています。 「この商品はきっと世の中の役に立つはずだ」との思いを共有する仲間とともに、長年にわたり地道な開発を続けたことが、今回の受賞に結実しました。 今後も、この経験を活かし、世の中のお役に立てる商品とそれを支える新技術の開発にチャンレンジし続けたいと思います。