平成24年度 科学技術分野の文部科学大臣表彰
科学技術賞(開発部門)を受賞

2012年4月17日、平成24年度 科学技術分野の文部科学大臣表彰受賞者が決定し、パナソニックから5名(当社OBを含む)が科学技術賞(開発部門)を受賞しました。

同賞は、科学技術に関する研究開発、理解増進等において顕著な成果を収めた者について、その功績を讃えることにより、科学技術に携わる者の意欲の向上を図り、もって日本の科学技術水準の向上に寄与することを目的とし、文部科学省が表彰しています。

今回の当社の受賞者と業績は以下のとおりです。

受賞式写真

受賞式写真

『圧電薄膜を用いた圧電MEMSデバイスの開発』

受賞者

藤井映志(ふじい えいじ)/先端技術研究所 クリーンエネルギー推進室 室長
渡邊 修(わたなべ おさむ)/パナソニック プレシジョンデバイス株式会社 インクジェットソリューションディビジョン チームリーダー
小牧一樹(こまき かずき)/デバイス社 MEMS技術開発センター チームリーダー
山本幸二(やまもと こうじ)/デバイス社 回路部品ビジネスユニット グループマネージャー
野村幸治(のむら こうじ)/元 パナソニック エレクトロニックデバイス株式会社 回路部品ビジネスユニット 参事

開発の背景

代表的な圧電材料のチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)は、MEMS技術との融合により、小型化や新機能が期待出来るため、安価で加工性の良いシリコン基板上への薄膜化に強い要望がありました。しかしながら、高性能なPZT圧電薄膜は、高価で加工が難しい酸化マグネシウム(MgO)単結晶基板上にしか実現されていませんでした。

シリコン音叉型角速度センサの構造

開発技術の概要

本開発では、新規な下部電極材料と配向制御層の導入により、シリコン基板上に分極軸方向に結晶配向したPZT圧電薄膜を実現しました。また、スパッタ法による量産化技術も開発し、φ8インチSi基板上への高歩留まりでの製造を可能としました。なお開発したPZT圧電薄膜は分極処理を必要とせず、従来の焼結体材料 と比較して、圧電定数は約1.5倍、電気機械結合係数は約3倍と優れた圧電性能を有しています。

上記PZT圧電薄膜技術とMEMS技術を組み合わせることによりシリコン音叉型角速度センサを開発しました。これは、音叉アームの駆動(X軸方向)と、角速度印加(Z軸周り)による音叉アームのたわみの検出(Y軸方向)を行う電極/圧電薄膜が、同一軸で同一平面上に形成した簡単な構造が特徴です。これによりウエハ処理の製造による小型化と低コスト化を実現しました。さらに、シリコンディープエッチングによる高精度なシリコン音叉加工技術の導入により、従来の角速度センサ(水晶タイプ)では実現できなかった高感度化と小型化を両立しました。

さらに、PZT圧電薄膜技術とMEMS技術によりインクジェット薄膜ヘッドを開発し実用化しました。
開発したインクジェット薄膜ヘッドは、全工程を薄膜プロセスで作製することで、従来(圧電焼結体タイプ)実現できなかった高精度で安定なインク吐出制御を可能としました。
そして、複数個のインクジェット薄膜ヘッドを斜めに傾けて一列に配置したラインヘッドを開発し、固定して印刷することで、インクジジェット方式での高画質(600~1200dpi)・高寿命(吐出>200億回)で従来の10倍以上の高速印刷(>60m/分)を世界で始めて実現しました。

インクジェットラインヘッド

開発技術の成果

開発したシリコン音叉型角速度センサは、カーナビゲーションシステム用として2003年に実用化し、現在では車両の姿勢制御用にも採用されています。
2006年には更なる小型化と2軸検知を実現し、デジタルスチルカメラの手振れ補正用として実用化しました。 自動車の安全、快適および民生機器の高性能、高機能化に貢献しています。

また、インクジェット薄膜ヘッドを商業用オンデマンド印刷機向けとして2004年に商品化しました。
コピー機に使われている電子写真方式と比較しても、同等の印刷性能で、容易なメンテナンス性や低コスト印刷を実現しており、国内外の印刷機メーカーより高い評価を頂いています。
今後、圧電薄膜技術とMEMS技術のさらなる進化により、健康医療分野やロボット分野など新たな応用展開も期待できます。

カーナビゲーション用角速度センサ

オンデマンド印刷機用ラインヘッド

受賞者コメント

藤井 映志

藤井 映志

材料開発のブレークスルーにより2つの新しい商品が生まれ、大きな事業へと発展していきました。材料技術者である私の仕事が評価され、このような賞を受賞できたことで、改めて材料開発の重要さを感じています。環境革新企業のパナソニックにおいて、材料技術はますます重要となっていくと考えます。今後もこの経験を活かし、新規事業につながる材料開発を行っていきたいと思います。最後になりましたが、角速度センサおよびインクジェットヘッドの開発・実用化に関わられた多くの方々に、心から感謝申し上げます。

渡邊 修

渡邊 修

今回、このような名誉ある賞をいただき、当社の圧電MEMSデバイス技術が認められたことは、大変光栄に思います。パナソニックで材料・デバイスの開発に携わってこられた多くの先輩方が蓄積された基盤技術があったことも今回の成功の要因です。これまで開発および実用化に関して、ご指導、ご協力頂いた社内外の多くの方々に心より感謝申し上げます。
今後も、お客様の視点に立って本技術をさらに進化させるとともに、お客様に喜んで頂ける商品開発に取り組んでいきたいと思います。

小牧 一樹

小牧 一樹

この度はこのような栄誉ある賞を頂くことが出来、大変光栄に思います。
圧電MEMSデバイスの小型・高性能化を支える圧電薄膜の高性能化、そしてこの薄膜の量産化技術の開発では、数々の困難がありましたが、これを乗り越えることが出来たのは、各部門合わせて多くの技術者が一体となって挑戦し続けることによるものと思っています。関係の皆様に深く感謝申し上げます。
今後も、更なる新規MEMSデバイスの創出に向け、メンバー一丸となって挑戦し続けます。

山本 幸二

山本 幸二

角速度センサの事業を始めたのは1994年。当時は金属板にセラミック圧電板を接着し、1台づつ手作業で音叉形状に組み立てる工法のため、数100台/月を生産するのに四苦八苦していました。それから17年、今回の受賞で認めていただいた「圧電薄膜技術とMEMS技術の融合」によって、今では素子生産数1000万個/月という事業にまで拡大することが出来、要素技術の重要性を改めて実感しております。このように「強い商品」へと進化できたのも、開・製・販一体となった商品開発の結果であり、これまで支えて頂いた皆様には心より感謝申し上げます。

野村 幸治

野村 幸治

「1980年代後半に誕生いたしました、MEMS技術を一筋にやってまいりましたが、今回受賞いたしました、角速度センサは世界でも、デジタルミラーデバイス、インクジェットヘッドと並んで、3本の指に入るMEMSデバイスに成長いたしました。これもひとえに、周りの皆様の開発・量産化への多大なるご支援・ご努力があっての結果であると考えております。受賞にあたりまして、この場をお借りいたしまして、深く御礼申し上げます。」