第45回 市村産業賞 貢献賞

パナソニック株式会社は「デジタル3D映像の高効率符号化と放送記録技術の開発と実用化」の功績において、第45回市村産業賞 貢献賞を受賞し、贈呈式が2013年4月25日、彬子女王殿下ご臨席のもと開催されました。市村産業賞は、優れた国産技術を開発することで、産業分野の発展に貢献・功績のあった技術開発者またはグループに対し、公益財団法人 新技術開発財団(昭和43年設立)より贈呈されるものです。

第45回 市村産業賞 貢献賞受賞式

『デジタル3D映像の高効率符号化と放送記録技術の開発と実用化』

受賞者

小塚 雅之/R&D本部 クラウドソリューションセンター 室長
柏木 吉一郎/パナソニック ノースアメリカ(株) パナソニック ハリウッド研究所 所長
大嶋 光昭/R&D本部 顧問

開発の背景

19世紀の映画の発明以来、立体映画の商用化が何度か試みられましたが、本格的な普及には至りませんでした。1995年にコンピュータグラフィックスを用いた長編映画が登場し、デジタル処理による理想的な3D映画実現の可能性を見て、世界に先駆けデジタル3D映像信号の符号化、放送、記録技術の開発に着手しました。

開発技術の概要

デジタル処理された立体映画のリアルな臨場感を民生機器で実現するためには、両眼用のHD映像情報のデータ量を、品質を損なうことなく削減することが課題でした。これを次の3つのキー技術で解決しました。

(1) 左眼映像データと、左眼映像と右眼映像の差分データとを送り、受け側で両データから右眼映像データを再現するMPEG-4 MVC(Multiview Video Coding)の基本技術を開発(1996年)し右眼映像データ量を半減しました。

(2) 低ビットレートでの圧縮効率の優れたMPEG-4 AVC(Advanced Video Coding)において、HD映像の圧縮効率を向上する8x8変換を新たに定義し、さらに視覚特性に応じた情報割当技術を導入することにより、HD映像の圧縮効率を2倍に高める符号化技術を開発しMPEG-4 AVCハイプロファイルとして規格化に寄与しました(2004年)。
(1),(2)により、HD-3D映画を1枚の光ディスクや既存のTV放送帯域で提供することが可能となりました。(図1)

(3)既存の2D機器では3Dコンテンツが2D映像で見える2D/3Dの2層ファイル構造と2D、3Dコンテンツを識別する基本技術を考案(1996年)、規格化し、既存の2D機器との完全互換を実現しました。

開発技術の成果

本技術を用いた世界初の3D-DVD再生装置を製作し、1999年ハリウッドの映画会社に提案しました。さらに、パナソニックハリウッド研究所において映画会社と連携し、3D映像の画質向上と標準化活動を進め、2008年には3D映画『アバター』と制作提携を行うとともに、2009年に本技術を基幹部に用いた3D規格の国際標準化(Blu-ray3D規格、HDMI伝送規格:2012年DVB規格化)の実現に寄与しました。2010年に製品化した世界初のフルHD・3D関連機器は、民生用3D市場の立ち上がりに大きく貢献しました。
現在では多くの製品が3D規格に対応するようになり、そのほぼ全てに本技術が採用されています。エンタテインメント分野にとどまらず、医療、教育等の幅広い分野での3Dの活用も広がり、今後のさらなる展開が期待されています。

図1 3D-HD映像の符号化効率の向上

図1 3D-HD映像の符号化効率の向上

図2 3D製品群

図2 3D製品群

受賞者コメント

小塚 雅之

小塚 雅之

デジタル3D映像技術の開発・実用化に対し、このような名誉ある賞を頂いたことを大変嬉しく、誇りに思います。18年に及ぶハリウッド映画会社との協業の中、3Dデジタルシネマ事業の萌芽期にキャメロン監督の「アバタ―」の制作に出会う幸運を得ました。このデジタル3Dの可能性を信じ、3DTV方式開発とアバタ―連携を提案・推進し、3D画像圧縮、Blu-ray 3D規格の開発を成し遂げることができました。3DTVの開発・実用化に関係された皆様には心より感謝申し上げます。

柏木 吉一郎

柏木 吉一郎

テーマパークで見た3D映像の臨場感に驚き、ニュージーランドの映画撮影現場で見たデジタル3D映像のリアリティと美しさに感激し、家庭でもその素晴らしさを損なうこと無くそのまま体験できるようにしたいという思いを持ったと共に、”今がその時”という機会に恵まれ、本技術の開発とこのような名誉ある賞を頂くまでに繋がりました。そのような機会を与えていただけた幸運と、関係する皆様に心から感謝しています。

大嶋 光昭

大嶋 光昭

デジタル3D技術の開発に着手した1996年はまだアナログ全盛でしたが、既にDVDは規格化されつつありました。このためDVDの既存規格との互換性を保つ技術と3D映像を高効率に圧縮する技術の開発を始めました。それから17年、3D映画作品もデジタル化され当時とは比べものにならないくらい美しい作品が登場し民生用3D市場が立ち上がりました。3D技術は今後も進化を続け究極的な臨場感が実現すると思われますが、開発した技術が最初の製品から使われた上に、このような名誉ある賞を頂き、大変光栄に思います。