第46回 市村産業賞 功績賞

パナソニック株式会社は「高速伝送対応高多層基板材料の開発と実用化」の功績において、第46回市村産業賞 功績賞を受賞功績賞を受賞しました。贈呈式が2014年4月18日、彬子女王殿下ご臨席のもと開催されました。市村産業賞は、優れた国産技術を開発することで、産業分野の発展に貢献・功績のあった技術開発者またはグループに対し、公益財団法人 新技術開発財団(昭和43年設立)より贈呈されるものです。

第46回 市村産業賞 功績賞受賞式

『高速伝送対応高多層基板材料の開発と実用化』

受賞者

井上 博晴 チームリーダー/オートモーティブ&インダストリアルシステムズ社 電子材料事業部
古森 清孝 チームリーダー/同上
藤原 弘明 チームリーダー/同上

開発の背景

2000年以降、ブロードバンド回線の普及とインターネットに接続される端末の爆発的増加により、インターネットのデータトラフィック量が激増しました。トラフィックの増大に対応するためデータセンターでは設置するサーバー数が増加しましたが、設置スペースの確保や消費電力が新たな問題となりました。そこで大容量のデータを高速に処理、伝送が可能な大型サーバーの要望が高まりましたが、その実現には高速伝送に対応し高多層化が可能な電子回路基板が不可欠でした。電子回路基板を形成する樹脂材料には次の2点の主要特性を兼ね備えていることが要求されました。

(1) データ伝送速度の高速化に対応できる低誘電正接、低誘電率
(2) 配線数の増加や高多層化に対応可能な多層成形性、高ガラス転移温度、低熱膨張率

しかしながら従来の材料では誘電特性と多層化や基板サイズの大型化を同時に満足することができませんでした。

開発技術の概要

高速伝送に対応し高多層化が可能な電子回路基板の材料を次のキー技術により新規に開発しました。
(1) 新規PPE樹脂技術
本開発で用いた基本材料のPPE(ポリフェニレンエーテル)は、低誘電率、低損失、高ガラス転移温度を有する優れた電気特性を持つものの、軟化点が高く成型プロセスが高温化する問題点を有していました。PPE樹脂を変性することにより、低誘電性を維持したまま熱可塑性樹脂を熱硬化性樹脂に改質することに成功しました。
(2) ポリマーアロイ技術
上記の樹脂は多層配線基板化するための高温における流動性はまだ低く、多層配線基板化には課題がありましたが、低分子量の多官能架橋剤をアロイ化する技術により多層成形性と高耐熱性を両立することに成功しました。

これらの技術開発により低誘電特性と多層成形性、高耐熱性を高次元で兼ね備えることに成功しました。

開発技術の成果

本技術により、従来材料と比較して伝送損失は50%以上低減でき、また、鉛フリーはんだ対応した60層を超える超高多層の電子回路基板の作製が可能となりました。本技術を用いた電子回路基板は、爆発的に増大したインターネットのデータを高速に処理する大型超高速サーバーの実用化を可能とし、多くのデータセンターで直面していた設置スペースの確保や消費電力増大の問題を解決し、環境負荷低減にも大きく貢献しました。さらにスーパーコンピューターの性能向上にも貢献し、医療やエネルギー等の幅広い分野の発展にも貢献が期待されています。

図1 高速伝送対応高多層基板材料

図1 高速伝送対応高多層基板材料

図2 伝送特性

図2 伝送特性

受賞者コメント

井上 博晴

井上 博晴

高速伝送対応高多層基板材料を開発し実用化した実績が認められ、このような名誉ある賞を頂いたことを大変光栄に思っております。また、この高速伝送対応高多層基板材料の開発、実用化にご尽力を頂いた関係者の方々に、心より感謝申し上げます。今回の受賞を励みに、今後も成長していく産業界へ貢献できるよう技術開発および商品の実用化に取り組んでいきたいと思います。

古森 清孝

古森 清孝

2001年からICTインフラ機器向け電子回路基板用多層材料の商品開発・市場開発を担当しましたが、当初は、お客様のご要求にお応えできずに苦労しました。粘り強く、グローバルの主要顧客と膝をつき合わせて合意点を見つけていくことで、2005年に商品が完成しましたときは、本当に嬉しく思いました。その後、開製販一体となった拡販活動により、多くのお客様にこの商品が受け入れられ、高度情報化社会の進展に寄与でき、結果として、このような名誉ある賞を頂けたことを誇りに感じます。関係する皆様に感謝申し上げるとともに、これを励みに、今後も社会に貢献したいと考えます。

藤原 弘明

藤原 弘明

市村産業賞功績賞を受賞することができ、たいへん光栄に思っております。関係者の皆様に心から感謝申し上げます。さて、本材料の実用化にあたり、開・製・販のチームワークの大切さや各個人が気概を持ち自分の能力を最大限発揮することの重要性を肌で感じることができました。今後もお客様に喜んで頂き、社会の発展に貢献できる商品の創出に取り組んでいきます。