第62回電気科学技術奨励賞を2件受賞

2014年11月21日、第62回電気科学技術奨励賞(オーム技術賞)が決定し、パナソニックグループから2件、6名が電気科学技術奨励賞を受賞し、その内、1件は最高位の文部科学大臣奨励賞を受賞しました。

同賞は、電気科学技術に関する発明、改良、研究、教育などで優れた業績を挙げ、日本の諸産業の発展および国民生活の向上に寄与し、今後も引き続き顕著な成果の期待できる人に対し、公益財団法人 電気科学技術奨励会より贈呈されるものです。

今回の当社の受賞者と業績は以下のとおりです。

(左から) 上山、日下部、辻、佐々木、桑原、中島

電気科学技術奨励賞および文部科学大臣奨励賞
『CO2冷媒を採用した店舗用冷凍機システムの開発と実用化』

受賞者

桑原 修:アプライアンス社 主幹技師
佐々木 英孝:アプライアンス社 主任技師
中島 新二:アプライアンス社 主幹技師

開発の背景

現在、国内のスーパーマーケットやコンビニエンスストアの別置型ショーケースを冷却する店舗用冷凍機システムの多くには、地球温暖化係数(GWP)の大きいHFC Hydrofluorocarbon)冷媒(R404A)が使用されており、市場での冷媒漏洩率が高いことが問題視されております。 店舗用冷凍機システムにGWPがR404Aの1/3920である自然冷媒CO2(二酸化炭素)を採用することは、温暖化抑制に大きな効果がありますが、冷蔵・冷凍でHFC冷媒システムと同等の省エネ性を確保することは困難と考えられていました。

開発技術の概要

室外に設置されている冷凍機において、世界初の2段圧縮ロータリーコンプレッサと独自のスプリットサイクルの二つの特筆すべき新規技術により、CO2冷媒を採用した新冷凍サイクルでの高効率化を実現しました。
また、この冷凍機と店舗内にあるショーケースとの運転状況を統合管理し、冷凍機の圧力及び冷媒の流れを最適制御する集中制御アルゴリズムの開発により、更なる高効率化と、HFC冷媒を凌ぐ省エネ性を実現しました。 この技術開発により、従来のHFC冷媒(R404A)を使用したシステムに対し、年間のCO2排出量を58%削減すると同時に、冷凍条件で25.4%、冷蔵条件で16.2%の省エネ(消費電力量の削減)を達成しました。

コンビニエンスストアのシステム構成例

開発技術の成果

冷凍空調機器のHFC冷媒の2010年の排出量は、1995年比で約20倍となっており、地球環境保護の観点から、自然冷媒化への取組みが喫緊の課題となっております。現在、ショーケースの市中稼働台数は国内で約140万台と推計され、冷媒は1台当たり数十~数百kg充填されており、使用する冷媒が地球環境に与える影響は極めて大きいと考えられます。本開発技術により、CO2冷媒を採用した店舗用冷凍機システムの実用化に成功したことは、低GWP化への解決策として大きな進歩であり、非常に意義深いものと確信しています。

スプリットサイクルの効果

受賞者コメント

桑原 修

今回大変栄誉ある賞を頂くことができ、これまでCO2冷凍機システムの開発と市場導入に取り組んで来た関係者の努力が、このように高く評価されたことを大変嬉しく思います。
CO2冷凍機システムは地球温暖化防止に貢献する技術として、社会の要請とお客様のご要望にお応え出来たことが受賞につながったのではないかと思います。
今後はCO2冷凍機システムの普及拡大により事業に貢献できるよう、システムの更なる高効率化に取り組んで参ります。

佐々木 英孝

独自技術である2段圧縮ロータリーコンプレッサおよびスプリットサイクルの開発により、CO2冷媒を使用した自然冷媒冷凍機システムの実用化と地球温暖化抑制に大きく貢献できた成果を高く評価して頂いた事に心から感謝しております。
なお、大変権威ある賞を受賞するにあたり、冷凍機開発に携わったチ-ム全員の代表として頂いた賞であることを再認識し、今後はシステムの普及に向け出来る限り努力していきたいと思っております。

中島 新二

CO2冷凍機の圧力最適制御、冷凍機とショーケース電子膨張弁の同期制御による冷媒流量最適制御などを行なうマスターコントローラが、今回のシステム実用化に貢献でき、このような名誉ある賞を受賞することができたことを大変嬉しく思います。
この栄誉は、開発・実用化に携わった関係者の方々のご支援・ご指導の賜物です。この場をお借りして、深く感謝致します。
今後も新たな社会貢献できる技術・システムの創出、及びそのシステム導入の高効率化に取り組んでまいります。

電気科学技術奨励賞
『低コスト・高耐久の燃料電池用膜電極接合体(MEA)の開発と実用化』

受賞者

上山 康博:モノづくり本部 チームリーダー
辻 庸一郎:先端研究本部 課長
日下部 弘樹:アプライアンス社 チームリーダー

開発の背景

近年、エネルギー供給源の多様化、環境負荷低減、エネルギー有効活用等の背景の中、水素エネルギーの利活用が注目されています。その中で家庭用燃料電池・燃料電池自動車は、水素エネルギーの実用化段階として注目されていますが、更なる普及拡大のためには、現在の材料コストを大幅に削減する事が望まれていました。

開発技術の概要

燃料電池システムは都市ガスから「水素」を作る「燃料処理器」と、「水素」と「酸素」との化学反応で発電する「スタック」からなる「燃料電池ユニット」と、その化学反応で発生する熱を利用してできた「お湯」を貯める「貯湯ユニット」から構成されています。 「スタック」はセパレータと膜電極接合体(以下、MEA)からなるセルを積層した構造で、MEAは電極触媒、電解質膜、多孔質カーボンシートを用いたガス拡散層(以下、GDLと略)の機能膜を接合して構成していることが特徴となっています。
GDLの基本機能は、水素と酸素を含む空気をセパレータから電極へ供給するガス拡散機能と、電極反応で発生した電気の導電性機能と、空気極側で生じる水を排出する撥水機能です。導電性カーボン粒子による導電性の機能とPTFEの繊維構造を活用した多孔質カーボンシートの開発に業界で初めて成功することで、従来の10分の1のコストで、ガス透過性、導電性、撥水性が同等性能を有する多孔質カーボンシートを実現することができました。また、カーボン粒子とフッ素系樹脂(ポリテトラフルオロエチレン;PTFE)の配合比を最適化することにより、システムの動作条件、設置環境への対応性を向上させることができました。また、柔軟性を有することで気密性(シール性)の向上と、電解質膜への機械的ダメージを低減させることにより耐久性を向上することができました。
電極触媒について、劣化メカニズムの解明を行うことで、コンタミ(触媒被毒)が原因となる性能劣化対して起動シーケンスの開発を行い、白金使用量の50%削減に成功することができました。
電解質膜について、上記新開発のGDLとの組み合わせにより、スタック締結時の応力集中を緩和するMEA構造の設計に成功し、膜耐久を向上させることに成功しました。

家庭用燃料電池の構成

スタックの内部構成

開発技術の成果

MEAを構成するこれらの新開発機能膜の実用化により、家庭用燃料電池として第三世代燃料電池システムに搭載することができました。燃料電池システムとして世界最高の総合効率と大幅なコストダウン実現に貢献し、日本で初めて200万円未満 の希望小売価格を実現して2013年4月より発売を開始することができました。
また、2013年10月より集合住宅向けモデルを発売し、2014年4月より欧州向けに発売を開始しています。今後、新材料、新製造プロセスの開発を通じて、燃料電池の性能向上・低コスト化・高耐久化を実現し、家庭用燃料電池や燃料電池自動車の普及に努め、水素社会の実現に向けて貢献してゆきます。

なお、本件開発にあたっては、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託業務により得られた成果の一部を活用しています。

受賞者コメント

上山 康博

この度は、栄えある電気科学技術奨励賞を頂戴し、誠に光栄に存じます。
燃料電池システムに用いられる膜電極接合体は、複数の機能性シートの積層体からなります。システムの使用環境や発電仕様に応じて、それぞれのシートへの要求仕様は異なります。特に、触媒層と電解質膜については、コスト削減のために効率の良い触媒材料や製造方法の開発、耐久性の良い電解質膜の開発がまだまだ必要です。今回、奨励賞をいただいた膜電極接合体も、今後数年で大きく仕様変化をしてゆくことが予想されます。今回の受賞を大きな励みとして、今後とも社会に貢献する材料プロセス技術を核としたモノづくりに取組み、燃料電池、水素社会の発展に貢献して行きたいと考えています。

辻 庸一郎

この度、このような名誉ある賞を受賞することができ、大変うれしく思います。燃料電池用膜電極接合体の開発は、将来の水素社会に向けて、大学、材料メーカ、システムメーカ、自動車メーカなどが協力し合いながらも切磋琢磨している領域です。その中で、これまで開発してきた技術が評価されたことは、多くの関係者のご支援、ご協力の賜であると感謝すると共に、今後も高性能・低コストにつながる技術開発を進め、商品で地球環境に貢献していきたいと思います。

日下部 弘樹

2009年に一般発売を開始した燃料電池コージェネレーションシステムは現在では年間1万台を超える台数まで普及してまいりました。しかしながら、今後さらなる普及拡大を目指すためには、性能・コストの両面でのより一層の技術革新が必要です。この度このような名誉ある賞を受賞することができ、大変嬉しく思うと同時に、ご支援頂いた関係者に深く感謝致します。今後も新たな技術、デバイスの創出に向けて、より一層の努力と精進を重ね、独創的な商品の開発に取り組んでまいりたいと思います。