第63回電気科学技術奨励賞を2件受賞

2015年11月19日、第63回電気科学技術奨励賞(オーム技術賞)が決定し、パナソニックグループから2件、6名が受賞しました。

同賞は、電気科学技術に関する発明、改良、研究、教育などで優れた業績を挙げ、日本の諸産業の発展および国民生活の向上に寄与し、今後も引き続き顕著な成果の期待できる人に対し、公益財団法人 電気科学技術奨励会より贈呈されるものです。

今回の当社の受賞者と業績は以下のとおりです。

(左から)高橋、森口、榎本、白方、滝波

(左から)高橋、森口、榎本、白方、滝波

『60GHz帯ミリ波ギガビット無線LAN技術の開発と実用化』

受賞者

滝波 浩二:オートモーティブ&インダストリアルシステムズ社 主幹
白方 亨宗:同上 主幹技師
高橋 和晃:同上 部長

開発の背景

60GHz帯を用いるミリ波高速無線通信は、既存の2.4/5GHz帯を用いる無線LANの10倍以上となる数ギガビットの実効速度が得られることから、高精細な動画の低遅延ストリーミングや大容量データの瞬時転送などを可能とする次世代の高速無線通信技術として期待されています。しかしながら、モバイル端末等で利用するためには、無線モジュールの低消費電力化が課題となっていました。また、ミリ波帯の電波は直進性が強いため、複数ユーザを収容するモバイル通信で用いるには通信エリアが狭いという課題がありました。

開発技術の概要

(1)モバイル搭載を実現した低消費電力ミリ波無線技術
本開発ではCMOSによるシンプルな回路構成で消費電力を下げ、量産時に課題となるCMOS回路のプロセスばらつきを補正する機能を搭載し、低消費電力と優れた無線性能を両立させました。電源投入時に送信無線回路の誤差を自動検出しベースバンド信号処理で補正する自動キャリブレーションを外付け部品の付加なくチップ内で完結しています。また、多重伝播等により発生する周波数歪を補正する信号処理に新たな演算処理アルゴリズムを適用し、従来に比べ大幅に回路規模を削減し低消費電力化に成功しました。

(2)ギガビットクラスの1対多通信に対応したミリ波アクセスポイント技術
60GHz帯で位相をデジタル制御する独自の高精度移相器を適用したビームフォーミング技術を開発し、電波の放射方向を高速に電子走査可能とすることで、従来約50度に制限されていた送受信角度範囲を2.4倍の120度に拡大させました。このビームフォーミング技術を搭載した無線モジュールを複数組み合わせて自由に通信エリアを拡大するコンセプトを提案し、ミリ波でありながら周囲360度の広域エリアをカバーしつつ、アンテナ指向性を活用した空間分割により複数ユーザの高速同時送受信が可能な業界初のミリ波アクセスポイントを実現しました。

開発技術の成果

60GHz帯を用いるミリ波高速無線通信において、電池駆動可能な低消費電力化技術の開発に取組み、従来比1/2以下の低消費電力動作を実現し、モバイル機器への搭載を世界初で実証しました。さらに、ミリ波アクセスポイントの開発に業界に先駆けて取組み、ビームフォーミングによる広角化と空間分割による干渉回避を組み合わせることで、広域エリアをカバーしつつギガビットを超える実効速度で複数ユーザの同時送受信を可能としました。

備考

本開発にあたり、総務省「電波資源拡大のための研究開発」の下記委託業務から得られた成果を活用しました。
・超高速近距離無線伝送技術の研究開発(平成22~24年度)
・ミリ波帯チャネル高度有効利用適応技術に関する研究開発(平成25年度)
・ミリ波帯における高度多重化干渉制御技術等に関する研究開発(平成26~27年度)

受賞者コメント

滝波 浩二

滝波 浩二

大変名誉ある賞を頂き、ご支援いただいた多くの関係者の方々にこの場を借りて深く感謝いたします。受賞対象のミリ波ギガビット無線LAN技術の開発では、ミリ波CMOS回路、高周波モジュール、無線アクセス制御など異なるバックグラウンドを持つ仲間が協力し、粘り強く取り組むことでミリ波特有の課題を一つ一つ解決してきました。今回の受賞を励みに、新規事業創出や若手技術者の育成にも取り組んでいきたいと思います。

白方 亨宗

白方 亨宗

この度は歴史ある賞の受賞者に名を連ねることとなり、大変光栄に思っております。入社当時、先輩方がこの賞を受賞され、いつかこのような技術をつくりたいと思っていたため感慨深く感じています。ミリ波という新しい周波数帯を使った無線技術を世に送り出すに至ったことは、一つ一つ困難を克服していった大勢の技術者の地道な努力と、関係各位のご支援、ご指導によるものです。ここに深く感謝いたします。

高橋 和晃

高橋 和晃

次世代通信として期待されたミリ波通信の研究開発を本格化した2000年頃、実用化に遠かった技術が、多くの方々に支えられ漸く光が見えてきました。さらに電気科学技術奨励賞という形で評価いただいたことは感慨深いものがあります。研究開発に尽力してきたみなさまを代表としての受賞であり、あらためて関係各位に深く感謝いたします。今後はさらに技術を発展させるとともに、産業育成にも尽力していきたいと思っています。

『リチウムイオン電池搭載EV・HEV向けDC高容量リレーの開発』

受賞者

榎本 英樹:オートモーティブ&インダストリアルシステムズ社 主幹技師
福田 純久:同上 主任技師
森口 裕亮:同上 主任技師

開発の背景

EV(Electric Vehicle)、HEV(Hybrid Electric Vehicle)に搭載するDCリレーは車両の起動時に、インバータやモータ等と高電圧電池とを接続するものですが、走行時に異常が発生した場合は確実に電流を遮断する必要があります。また、減速時にはエネルギー回生機構が働き、加速時とは逆方向に回生電流が流れるため、逆方向電流であっても同様に高い遮断性能が求められます。さらに衝突事故時には、電池短絡により大電流が瞬時に流れる可能性がありますが、大電流域ではヒューズによる電路遮断が必要で、リレー接点は短絡電流の電磁反発力で開離することなく、ヒューズが切れるまで保持できる高い短絡電流耐量が必要となります。EV、HEVでの採用の拡大が予想されるリチウムイオン電池では、従来型電池に比べ、DCリレーにはさらに高い性能が求められていました。

開発技術の概要

(1)逆方向遮断性能の向上
一般にDCリレーでは、消弧磁石を用いた磁気ブローで遮断時に発生するアークを消弧し電流を遮断していますが、電流方向に関係なくアークを消弧する構造を開発し、順方向と同等にまで逆方向遮断性能を高め、EV,HEVのリチウムイオン電池化に必要な性能を実現しました。

(2)短絡電流耐量の向上
リチウムイオン電池は、従来型電池に比べて内部抵抗が小さいため、短絡電流が大きく増加しますが、電流がリレーの許容値を超えると、電磁反発力で接点が開離するため、発煙・発火・破裂といった二次被害を引き起こす可能性があります。今回、独自の磁性ヨーク配置により、接点押付け力を増加させる構造を考案しました。これにより、短絡電流耐量がリチウムイオン電池に適応可能なレベルまで向上することができました。

開発技術の成果

開発したDC高容量リレーは、業界に先駆け高い性能を実現することで、大容量リチウムイオン電池の搭載に道を開き、EV,HEVの信頼性向上に貢献しました。

受賞者コメント

榎本 英樹

榎本 英樹

私達の開発していた技術がユーザニーズにマッチし、さらに名誉ある賞を頂くことができましたことを大変嬉しく思っております。本リレーは開・製・販が一体となり、お客様の信頼を築いてきた商品です。技術の礎を築いてこられた先輩方ならびに、製造・販売で尽力されている方々、陰で支えてくれる家族に心より感謝申し上げます。今回の受賞を励みとし、今後もWonderな価値が提供し続けられるよう新しい技術にチャレンジしていきたいと思います。

福田 純久

福田 純久

この度このような名誉ある賞を頂くことができ、大変嬉しく思いますと同時に、ご支援頂いた関係者の方々に深く感謝致します。このDC高容量リレーは今後いっそうの普及が見込まれるリチウムイオン電池搭載EV・HEVに安心・安全を提供するものであり、それが社会の要請とお客様のご要望に合致したことが受賞につながったのではないかと思います。今後も事業と社会の両面に貢献できるような、新たな商品・技術の開発に取り組んでまいります。

森口 裕亮

森口 裕亮

このたびは、このような素晴らしい賞を受賞することができ、本技術の礎を築いてこられた先輩方、品質・製造・販売で尽力されている方々の努力が、高く評価されたことを大変うれしく思います。今後も引き続き素晴らしい価値を創出できるよう、心をこめて日々の業務に取り組んで参りたいと思います。