第64回電気科学技術奨励賞を2件受賞

2016年11月16日、第64回電気科学技術奨励賞(オーム技術賞)が決定し、パナソニックグループから2件、6名が受賞しました。

同賞は、電気科学技術に関する発明、改良、研究、教育などで優れた業績を挙げ、日本の諸産業の発展および国民生活の向上に寄与し、今後も引き続き顕著な成果の期待できる人に対し、公益財団法人 電気科学技術奨励会より贈呈されるものです。

今回の当社の受賞者と業績は以下のとおりです。

受賞式

受賞式

『樹脂強化型低温はんだ材料の開発と実用化』

受賞者

大橋 直倫:生産技術本部 主務
植田 幹也:AVCネットワークス社 課長
山口 敦史:オートモーティブ&インダストリアルシステムズ社 主幹技師

(左から)植田、大橋、山口

(左から)植田、大橋、山口

開発の背景

近年、電子機器の高密度実装に伴い、低温はんだ接合のニーズが高まっていました。例えば、部品実装されたモジュール基板をマザー基板に搭載するには、基板間コネクタで接合する方法が一般的ですが、低温ではんだ付けできれば、モジュール基板内のはんだを再溶融せずに接合することが可能となり、コネクタ分の省スペース化が可能となります。また、基板の薄型化に伴い、はんだ付け時の基板反りによる接合不良の要因となるため、基板が反らない低温ではんだ付けするニーズが高まってきていました。一般的なはんだであるSnAgCuはんだの融点が219℃であるのに較べて、SnBiはんだは融点が139℃と低いものの強度が不足する課題があり、落下衝撃に対する高い信頼性を必要とするモバイル機器等では使用できませんでした。そこで、低温で接合可能で接合強度の強いはんだが求められていました。

開発技術の概要

(1)樹脂強化型低温はんだの開発
本開発ではSnBiはんだに補強用のエポキシ樹脂と硬化剤を配合することにより、接合強度の問題を克服し、160℃の1回の加熱ではんだ接合と樹脂補強材の硬化ができる樹脂強化型低温はんだの実用化に初めて成功しました。樹脂補強材による効果により、従来はんだを上回る強度を実現しています。

樹脂強化型 低温はんだ

樹脂強化型 低温はんだ

(2)従来と同様のプロセスを可能とする材料設計
硬化剤及び添加剤を最適化し、さらに溶剤を無くすことで、印刷工程を、室温で連続動作させても粘度変化せずに安定して印刷でき、かつ160℃の低温での短時間加熱で完全硬化する材料設計を実現しました。従来リフロー炉使用時で2割のリフロー炉消費電力を削減すると共に、溶剤を含まない材料設計により、はんだ付け時のフラックスの飛散がなく、洗浄が不要となり環境負荷低減、生産工程での低コスト化という従来にない特徴も有しています。

開発技術の成果

樹脂強化型低温はんだの開発により、基板接合にコネクタを用いることなくはんだ付けによる高密度の実装が可能になり、放送・業務用カメラレコーダーで使われるメモリカード“P2カード”の大容量化を実現しました。また、低温加熱であるため、基板の反りを抑制することができ信頼性を向上するとともに、耐熱温度が低い部品でも、実装装置による基板への搭載が可能となりました。

受賞者コメント

大橋 直倫

大橋 直倫

このような素晴らしい賞を頂くことができ、ご支援いただいた関係者の方々に深く感謝致します。本低温はんだが実用化できたのは、技術の礎を築いてこられた先輩方と、開・製一体となり低温はんだをモバイル機器のメイン基板で初めて導入されたAVCネットワークス社の方々、はんだ材料を新に量産し、事業化されたAIS社の方々の努力や挑戦、覚悟の賜物だと思います。今回の受賞を励みに、新たな技術開発に挑戦し続け、より良い暮らしの実現に貢献していきます。

植田 幹也

植田 幹也

非常に権威のある電気科学技術奨励賞を受賞でき、関係の方々に感謝いたします。近年の電子機器小型化、高集積化(高密度実装、微細プロセス)に伴い、リフロー温度による部品そり、部品耐熱性への影響は無視できないものになっております。このニーズに対応し、低温接合が可能な高信頼性接合材料を、従来と全く異なるアプローチで開発する機会を頂け大変光栄でした。材料開発に際しては、要求する信頼性、生産性を満足する為の様々な課題を、事業部を越えたメンバーが各部門で保有する技術の粋を結集することで初めて実現する事ができました。この開発に携われた方全てに感謝いたします。この賞を励みに今後もよりよい製品開発を進めて参ります。

山口 敦史

山口 敦史

名誉ある電気科学技術奨励賞を受賞し、たいへん光栄に思っております。本材料の実用化は、生産技術本部、AVCネットワークス社、AIS社のコラボレーションにより、開発(材料技術、実装技術、商品設計)、製造、販売が一体となり実現しました。この取組みでは、異なる技術や高いモチベーションをもった個人とそのチームワークにより、数々の壁を乗り越えることができました。関係者の方々には、心から感謝申し上げます。今後も社会に貢献できる商品を実現するため、技術開発とその実用化に取り組んでまいります。

『超高輝度プロジェクター用交換式超短焦点レンズの開発と実用化』

受賞者

三戸 真也:AVCネットワークス社 主任技師
鈴木 哲也:同上 課長
松尾 恭彦 氏:日東光学株式会社 主任研究員

(左から)鈴木、三戸、松尾氏

(左から)鈴木、三戸、松尾氏

開発の背景

近年、プロジェクターの高輝度化、高解像度化が進み、イベントやコンサートなど多様な場でプロジェクターを用いた大画面の映像の演出が広がっています。従来、対角200インチの画面サイズで投写する場合、従来はプロジェクター本体のサイズも含め、最短で約4mの投写空間を必要としていました。従来の技術の延長線上で、投写距離を短くするにはレンズのサイズが非常に大きくなり、コスト、重量の観点で非現実的でした。

開発技術の概要

(1)中間結像面と非球面ミラー/レンズを組み合わせたレンズ構成
超短焦点化のためには、出射する光の角度を広角にする必要があります。本開発では、レンズ構成中に中間結像面を設け、結像レンズ群を分割構成にして収差補正を分担し、さらに非球面のミラー/レンズを組合わせることで良好な結像性能を実現し、従来の構成に比べミラー面積を大幅に小さくしました。

超短焦点レンズ構成

超短焦点レンズ構成

(2)大口径ガラスモールド非球面ミラー/レンズの量産工法の確立
従来の設計手法に比べてミラーを小型にできましたが、投射空間の従来の半分以下にするためには直径50mm以上の非球面ガラスレンズを必要としました。これまで、直径50mm以上のサイズの量産化工法は実現していませんでしたが、本開発においては、金型の独自加工手法を開発し、さらに独自の成形機を開発することにより実現しました。

開発技術の成果

本開発のレンズは、従来レンズ以下のサイズ、重量で、投写空間を半分以下の約1.5mとすることを可能としました。これにより、従来は設置が困難だった狭い空間に、大画面の映像投写が実現来るようになり、設置条件の自由度を飛躍的に高め、従来は不可能だった映像演出効果を可能にした。

受賞者コメント

三戸 真也

三戸 真也

今回このような賞を受賞できる機会に恵まれことは大変光栄であり、この商品の開発にご協力いただいたすべての関係者に感謝いたします。プロジェクターのオプション品である投写レンズの技術やコンセプトを認めていただけたことは、今後のレンズ技術に携わる者への励みになると思います。レンズ技術に携わる一人として、レンズ単品でもアピールできるような開発に携われたことが嬉しく、この商品によってお客様の想像力が発揮でき、新しい提案につながることを期待しています。

鈴木 哲也

鈴木 哲也

このたびはこのようなすばらしい賞を受賞することができ、大変光栄に思います。ご支援頂いた関係者の方々に深く感謝いたします。約30年前に開発をスタートしたガラスモールド技術を、諸先輩の方々が技術の礎を築き、発展させてきた成果の一つが、今回の大口径非球面ミラーという光学デバイスとして実を結んだと思います。今後とも新たな魅力ある商品創出のため、同技術を発展させ、光学デバイス開発に取組みたく思います。