パナソニック電工技報

【6月号】JUNE 2009 Vol.57 No.2の概要

特集:情報機器関連技術

特集:「情報機器関連技術」によせて

情報機器R&Dセンター  センター長 竹山 博昭

特集論文

周囲光消去型距離画像センサ

橋本 裕介,常定 扶美,村上 憲一,今井 憲次,岸田 貴司

TOF(Time-Of-Flight)方式の距離画像センサにおいて,信号光を受光するCCDの画素ごとにフローティングディフュージョン(FD)構造を設けることで,画素上に複雑な回路を構成することなく周囲光による過剰電荷を排除しながら信号光電荷のみを集積する周囲光消去型距離画像センサを開発した。
本開発により,強い周囲光によって各画素のポテンシャル井戸が飽和する問題を解決し,晴天時の屋外直射日光下の照度に相当する周囲照度10万lxにおける距離画像センシングを実現した。

外乱光に対応した高速・高精度顔認証センサ

河原 英喜,広野 淳之,中元 栄次,遠藤 淳平,森 康洋

変調光同期検波方式による外乱光の影響を受けにくい顔認証システムにおいて,認証対象となる顔情報の変化による影響を大幅に軽減する独自の顔向き推定テンプレート自動生成処理とめがね・前髪検出フィルタ処理アルゴリズムを開発するとともに,これを処理する並列処理構成の回路を開発したことにより,汎用PCを必要としないコンパクトで利便性に優れた顔認証センサを実現した。
これにより,従来方式に比べて認証精度が約2倍に向上し,認証処理時間0.3秒を実現している。

小型超低消費電流のPIRモーションセンサ

西川 尚之,畑谷 光輝,本多 由明,角 貞幸,上津 智宏

PIRモーションセンサにおいて,陽極酸化法によるバックフォーカス1mm,開口径φ3mm(従来面積比1/9)のシリコンレンズ,ディープスリープ方式による消費電流1μA(従来比1/50)のASIC,および立体部品内蔵方式による小型回路ブロックの開発によって,高さ6mm(従来比1/2)の小型で超低消費電流を実現した。
このセンサは,移動速度0.3~1.0m/sの範囲で70×25cmのターゲットに対して検知温度差4℃以上を示すことから,通常の人体の移動検知に十分な性能を有している。

煙誘導構造による薄型住宅用火災警報器

阪本 浩司,畑谷 光輝,島田 佳武,福井 卓,本田 亜紀子,小松 幹生

電池式住宅用火災警報器において,煙の流れを誘導壁で分離することによって高圧領域と低圧領域を発生させて煙検知部に煙を誘導する高圧・低圧領域分離式煙誘導構造と,間欠駆動する高精度高速クロックで常時駆動する低消費電流低速クロックの変動を補正する2クロック補正方式の低消費電流の煙検知ASICを開発した。
この煙誘導構造は,煙検知部の外側と内側の圧力差が小さくても煙検知部に煙を誘導することが可能である。また低消費電流の煙検知ASICによって,煙の流れの障害となる電池の大きさを2/3に小型化しながら電池寿命10年を確保している。これらにより,従来筐体から飛び出していた煙検知部を筐体の内部に配置することが可能となり,高さ26mmの薄型化を実現した。

間欠受信による低消費電力の電池式無線連動型住宅用火災警報器

長田 雅裕,松本 一弘,藤井 隆,栗田 昌典,奥野 裕寿,大和 弘治

電池式無線連動型住宅用火災警報器において,非同期/同期切替型通信方式や耐干渉性受信待機方式などの開発によりリチウム電池2本で約10年の電池寿命を,超小型小電力無線モジュールの採用と音響部一体型半埋込式煙検知ブロックの開発により従来の電池式住宅用火災警報器と同等サイズを実現した。また,煙流入性に影響を及ぼさないアンテナ配置と屋内電波伝搬を考慮した回線設計により,戸建住宅において十分に電波が到達することをシミュレーションと実測の両面で確認している。

超広角レンズと歪補正処理を搭載した薄型インタホン子器

山中 睦裕,古川 聡,遠藤 淳平

モニタテレビジョン付きインタホンにおいて,小型の超広角レンズと自然な描写のできる水平方向歪補正処理の組合せによって視野の拡大と視野上下角調整機構の省略を実現し,従来にない広角かつ薄型のインタホン子器を開発した。この子器には親機から操作するズーム機能が付加してあり,照度とズーム位置情報に応じて映像制御条件を変更することで視認性の高い映像を実現している。
画像を水平方向のみに変形させる水平方向歪補正は,湾曲を低減しながらも2次元方向歪補正で顕著となる立体物の変形が少ない手法であり,開発品では,画像上の座標値の整数次式による歪の直接近似によって,より強い歪への対応と演算量の低減を実現している。

高信頼画像センシングによる人体センサ付きカメラ

竹ノ内 利春,松田 啓史,成尾 公彦

人体センサ付きカメラにおいて,検知前約3秒間の過去録画機能を利用することで人体検知判定時間を増やし,画像検出した移動体の移動量の時系列的なモニタリングによって検知判定する移動量判定アルゴリズム,さらに画像検出に採用している背景を含まない移動体の輪郭とその特徴量を抽出する独自の「シルエットマッチング処理」との統合処理を利用する面積比判定アルゴリズムの考案により,屋外環境下における植栽などによる誤検出を大幅に低減させた。
また,画像検出に用いる映像信号と親機で表示させるための映像信号を分離することによって,前者の映像信号においては近傍画素を平均化する処理を行い,後者の映像信号においては映像を視認するのに十分な画素数を確保している。これにより,夜間などの暗い環境下においても最小限の赤外線LEDで,信頼性の高い検知性能と人の確認が可能な十分な明るさの表示映像を得ることができる。

マイクロホン対向配置型ハンズフリー通話モジュール

北田 耕作,赤坂 修,木本 進弥,有川 泰史,吉田 恵一

住宅設備用ハンズフリー通話機器において,マイクロホン対向型音響構造,二つのマイクロホンを用いる位相の同期制御方式,エコーキャンセル量の平均化を図るエコーキャンセルアルゴリズムなどにより,DSPによるエコーキャンセル処理と同等の性能を有しながら複雑な演算処理が不要な低コストのハンズフリー通話モジュールを開発した。また,マイクロホンの位相に影響を与えない1/4波長音響管内蔵型密閉構造の開発により,薄型かつ小型のハウジングでありながら低域の音量向上を実現している。

アクティブタグによるハンズフリー入退室管理システム

鍋嶋 秀生,興梠 武志,竹田 真理,陸野 慶人,阪本 健二,小村 晃弘

入退室管理システムにおいて,半径約1.5mの安定した認証エリアを形成するLF(Low Frequency)帯無線通信技術の開発と,複数人の同時認証が可能な衝突回避アルゴリズムを有するアクティブタグおよびタグリーダから成る個人認証システムの開発によって,ハンズフリーでの入退室管理を実現した。さらに,外部アンテナを拡張できるシステム構成とすることで,認証エリアを半径約3mまで拡張できる。
このアクティブタグは,タグリーダからの起動信号により3種類の認証方法(自動認証,ボタン操作による手動認証,電池不要な近接認証)に対応可能であり,フレキシブルな運用により入退室管理システムの付加価値向上が期待できる。

ギガビットLANに対応した省施工モジュラプラグ

山下 耕司,矢野 洋子,中樋 和男,坂本 俊文

ギガビットLANに対応するモジュラプラグにおいて,ワイア型のジャック接続端子および絶縁被覆除去型のケーブル接続端子を装着したプリント基板に漏話付与回路を形成してカテゴリー5eおよびカテゴリー6に対応した伝送性能をもたせることで,伝送速度1Gb/sのツイストペアLAN情報配線システムに使用可能で結線も容易な省施工型のモジュラプラグを開発した。
これにより,従来は結線作業に専用工具とスキルを要し,伝送性能の確保も難しかったが,汎用工具による確実で簡単な結線作業と安定した伝送性能を実現した。また,不慣れな作業者では一般的なプラグの場合は3分以上の作業時間を要するのに対し,開発品は1.5分程度に短縮できる。

光分岐方式の小型高機能レーザ墨出し器

中村 国法,寺裏 浩一,山口 博章,傘谷 正人,松田 正則,齊藤 公昭

レーザ墨出し器において,単一のレーザ光源から発せられる光ビームを複数の基準線に同時に変換する分岐光学系を考案し,またミラーやレンズなどの光学部品の取付け面とレーザ光軸との角度を筐体の塑性変形を利用して微調整可能な光軸調整機構を開発した。さらに,緩衝構造を設けて,光学系に加わる衝撃力を緩和させ,粗雑に扱われがちな建築工事現場での使用にも十分に耐え得る構造とした。
これらの開発により,携帯性の良い小型構造と,建築工事現場で求められる高精度を同時に満たす光分岐方式の小型高機能レーザ墨出し器を実現した。

給湯コスト低減機能搭載の業務用エコキュート

澤田 慎也,山脇 信二,松平 将雄,戸田 亘彦,永田 訓,新保 秀人

業務用エコキュートにおいて,1槽2温度貯湯方式の採用による中温沸上げ・利用機能と循環式高温即湯機能,貯湯タンク増設機能,およびキュービクルとの通信による電力ピーク更新抑制機能を付加することによって,給湯コストの低減を実現した。1槽2温度貯湯方式は,90℃程度の高温水にくわえて沸上効率の高い65℃程度の中温水を一つの貯湯タンクに温度成層を形成させて貯湯するものであり,この中温水の積極的な利用によって,当社従来品に比べて約20%の給湯コストの低減が可能である。

居住者参加型の空調制御システム

村上 昌史,寺野 真明,塚本 一真,杉野 雅哉,原田 昌幸,久野 覚

温熱感覚特性の異なる居住者が同居するオフィス環境で,各人の室温制御に対する要望を集約し,居住者の快適性と省エネルギーを考慮して室内温度を決定する空調制御システムにおいて,居住者とのインタラクティブな情報のやりとりによって温度設定を行う合意形成ロジックを開発した。この制御方式により,ビルディングのエネルギーの約半分を消費する空調設備を対象に,従来から課題であった個人差の問題を解決するとともに高い省エネルギー効果を確認した。また,実際のオフィスビルディングに適用し,居住者の満足感を維持しつつ10%以上の冷房エネルギー消費量を削減した。

広域照明管理用エリアマネージメントシステム

藤村 英樹,佐藤 俊孝,天野 昌幸,押部 直克,長谷川 勝士,高垣 宏章

IPv6を活用して公園やビルディングの照明器具等の機器をネットワークに接続し,センタサーバでの一元管理するエリアマネージメントシステムの設備制御監視システムにおいて,機能の追加や変更がしやすいソフトウェア設計法が特徴のエリアユニット,信頼性の高いデータ蓄積を実現する管理ユニット,および再利用性の高いソフトウェア設計法が特徴のセンタサーバを開発した。これらにより,各設備の制御監視や設備間の連携・統合管理などを機能ごとに組込モジュール機器化し,それらの組合せによって高いシステムの柔軟性を実現した。本システムは,各モジュール機器での自律分散的制御監視によりシステムの信頼性を高めるとともに,センタサーバのデータと機器の一元管理ができ,省エネルギーと容易な設備管理を実現している。
この開発成果を北京オリンピック公園に適用し,約18000灯にも及ぶ広域照明管理システムを実現した。

低リソース・リアルタイム対応設備ネットワーク用通信プロトコル

中尾 敏章,佐藤 俊孝,天野 昌幸

建物内部に分散するさまざまな設備機器分野で採用されている固有のネットワークを上位レベルで連携,連動する設備系通信ネットワークにおいて,Webサービスにおけるオブジェクトのデータ構造記述言語であるJSONを利用した汎用的な通信プロトコルの実装と,comet技術を応用したBayeux通信による永続的接続手順を実現することで,組込機器へ搭載しやすい軽量構造,リアルタイム性を確保した相互通信,およびWebブラウザとの高い親和性などの特徴を有するオープン型の設備系ネットワークを開発した。さらに通信プロトコルを基本層,応用層に分類することで機能の意味づけ,利用方法を規定し,拡張性の高い構造にしている。

中国の中小ビルディングにおける省エネルギー照明制御システム

十河 知也,寺野 真明,福永 雅一,黄 吉文

中国の中小規模ビルディングにおける照明の省エネルギーに取り組み,多数の電力計測ポイントを監視できる「多回路電力チェッカー」による見える化と照明制御システム「Web計量対応形エミット・フル2線式リモコン」の制御の双方による運用改善,およびHf型照明器具の採用による高効率化によって,照明用エネルギーを大幅に削減できることと導入後に視的快適性が向上することを実証した。
日本で利用されている製品を中国で適用する際の問題点や,中国における配電形態やビルディング運用の違いなどを把握し,実運用で適切な制御方式と運用条件の実証を行い,その効果を確認した。