パナソニック電工技報

【9月号】SEPTEMBER 2009 Vol.57 No.3の概要

特集:生産技術

特集:「生産技術」によせて

執行役員  生産技術研究所 所長 木本 哲也

特集論文

加工物側面粗さを抑えた高精度金属光造形複合加工

阿部 諭,東 喜万,不破 勲

金属光造形複合加工法における加工物側面の粗さを改善するため,焼結・積層による側面の変形を考慮した仕上代を荒仕上工程で残し,仕上工程は焼結による収縮応力の影響が小さくなる領域(焼結面から見て深い位置)に対して施す「仕上シフト切削加工プロセス」を開発することにより,加工物側面粗さRzを従来の1/4の約5μmに抑制している。
その結果,側面に発生する段差はほぼ解消され,離型不良が発生しない高精度で高品質な射出成形金型の作製が可能となる。

MID用高速レーザ加工システム

進藤 崇,高橋 博

MID用の立体回路形成工程におけるレーザ加工プロセスにおいて,レーザの照射方向が異なる2台のガルバノスキャナと1台の小型で1軸の回転テーブルとを組み合わせることにより,高い加工精度を維持しながら加工時間を1/3に短縮する高速レーザ加工システムを開発した。
また,高速加工時に問題となる回路パターンのコーナ部など,加工速度を変化させる箇所で発生する基板ダメージを抑制するため,ガルバノスキャナの速度に連動させる加工エネルギー制御技術の開発により,基板へのダメージを与えない加工を実現した。

自律移動ロボットを用いた搬送システム

酒井 龍雄,村井 亮介,上松 弘幸,木下 愼太郎,北野 斉

工程内搬送の自動化において,周囲の状況を認識しながら速度を制御し,必要に応じて障害物を回避して目的地まで到達することができる複数の自律移動ロボットと,設備の稼働状況や搬送要求とすべての自律移動ロボットの状況を把握して個々の自律移動ロボットに指示を出す監視制御装置から成る搬送システムを開発した。このシステムでは,自律移動ロボットの局所的制御と監視制御装置の大局的制御とのハイブリッド化によって効率の良い搬送を実現している。また導入事例において,このシステムの可用性,トラブルに対しての信頼性,人との共存が可能な安全性,レイアウト変更への対応が可能な拡張性を実証している。

弾性表面波応用デバイスの小型化

石上 陽平,尼木 勉,桐ヶ谷 昌広,佐藤 正博

弾性表面波素子のアクチュエータへの応用において,球の転がりを利用して駆動方向への自由度を確保しながらスライダとステータの間に予圧を印加する構造を開発し,薄型化を実現した。また霧化への応用では,毛細管現象を利用して設置状態に関係なく一定量の液体を振動子に供給する構造を考案し,小型の霧化デバイスを実現した。
このアクチュエータは薄型であるとともに高速,高精度といった特徴を有しており,組立などの精密位置決めや高速化,省スペース化のための機械要素として期待がもてる。また,霧化デバイスは小型であるとともに1μmの微細なミストを精度よく安定した量の生成が可能であり,湿度調整や粉塵対策等にも応用できる。

位相シフト法インライン3次元外観検査システム

野坂 健一郎,荒木 秀和,中原 智治

生産工程の自動外観検査において,従来の2次元画像処理では検出が困難な欠け,凹み,膨らみ,反り等の欠陥検出や奥行方向の寸法計測を可能とするため,位相シフト法により直接3次元形状を計測する3次元外観検査システムを開発した。<
このシステムのプロジェクタはワークの大きさに合わせて投影視野を変更できるレンズ交換式であり,かつLEDを光源に用いて長寿命化を実現している。また,信頼性評価関数を新たに考案して計測値の信頼性を確保するとともに濃淡境界部の計測誤差を改善するため,プロジェクタを二つ用いる構成を導入して計測誤差を96%軽減している。

フレキシブル銅張積層板の高速・高精度外観検査法

藤本 隆博,宮崎 智太郎,吉田 謙治,杭ノ瀬 正治,森 正至

フレキシブル銅張積層板の外観検査において,検査照明の入射光軸に対する反射光軸からカメラの光軸をシフトさせることで多種欠点の同時検出が可能な光学系構成,2種類の閾値による欠点の高精度な面積算出法,複数のDSPによる並列分散処理方法とソフトウェアによる高速処理法を考案し,0.05mm2の微小凹凸,深さ2μmのきず,微小なラミネートしわ,低コントラストの変色などの欠点を検出できる画像処理検査技術を開発した。これらの技術を用いて開発した検査装置は,銅箔の振動抑制により検査の安定化を図ることで従来目視で行われていた検査工程を自動化し,フレキシブル銅張積層板の外観品質保証において高い信頼性を実現している。

浄水カートリッジへの活性炭自動充填法

清水 康幸,上園 祐介,松原 育郎,古賀 博隆,平石 裕二,栫 正高

据置型アルカリ整水器に搭載されている浄水カートリッジへの活性炭充填において,粒状活性炭が充填されるメッシュ素材の充填容器に充填途中から振動を連続して加えるとともに断続して負圧吸引を行うことにより,粒状活性炭の粒子間に含まれる空気を効率よく脱気し,充填表面の平坦化と充填密度の向上を実現した。この方式を用いて開発した自動組立機は従来に比べて充填時間を1/8に短縮,不良率を1/4に低減している。また,粒状活性炭飛散防止カバーと微粉末吸引機能を設けることで粒状活性炭充填時に発生する微粉末の飛散を防止し,作業環境のクリーン化を実現している。

数値解析を用いた部分めっき膜厚分布予測法

川島 雅人,加嶋 仁,光武 義雄,豊田 憲治

部分めっき処理において,液体と気体の界面を有する自由表面流れを考慮した流体解析とこれにより導き出された噴流形状に対し,電極の過電圧現象を考慮した電流分布解析とを連成させることによって,微細な膜厚分布状態の予測法を開発した。 典型的な電極・マスク構成における狭ピッチコネクタの部分めっき処理に対するこの予測法の結果は,膜厚実測値と比較して十分な精度が得られることを確認している。
本予測法は,従来の試作実験による検討と比較して開発コストの削減と開発期間の短縮を可能とし,新たな部分めっき工法の開発や量産ラインでの部分めっき工程の早期立上げに貢献できる。

高発泡・高意匠のプラスチック押出発泡成形品

増川 功一,齋藤 一永,加藤 寛満

押出化学発泡成形において,原料樹脂であるPVCの改質によりゲル化時間短縮と溶融弾性向上を図って高発泡化を可能とするとともに,発泡剤とキャリアレジンのコンパウンドではなく原樹脂であるPVCペレットに発泡剤を添着させたものをマスタバッチとして使用することにより,均一微細な気泡を内部に有し表面外観に優れた高品質な発泡プラスチック成形品を実現した。
この技術はプラスチック使用量の削減を可能にするもので,省資源化ものづくりの一手段として今後の用途展開が期待できる。

成形工程における生産在庫管理システム

平田 雅士,瀧本 芳実,筒井 健二

順序固定型生産を行う成形工程において,定点管理を適用する場合の在庫管理基準パラメータ算出アルゴリズム,販売・出荷に対する在庫バランスが一目で把握できる層別管理機能,および在庫管理基準パラメータ更新判定などの在庫管理基準パラメータ管理機能を開発し,これらを在庫管理システムに導入することによって在庫適正化を実現した。
開発した在庫管理システムを雨とい射出成形製品に適用した結果,パラメータ設定作業時間の50%短縮と在庫の20%削減効果を確認している。

ディジタルエンジニアリングによる製品開発期間の短縮

横道 正人,中澤 康行,山田 達也,中川 雅利,細田 篤志,角田 真規

製品開発プロセス革新に必要なディジタルエンジニアリング技術として,(1)製品設計データの共有化とシステム間連携の仕組みであるコンカレントシステム,(2)設計品質のより前段階での評価を可能にする仕組みであるフロントローディング,(3)より迅速に試作品や金型を製作するための仕組みであるラピッドプロダクションの3大重点機能を開発した。これらを活用することによって従来に比べて25%以上の製品開発期間短縮を実現した。

木質床材の多品種少量生産システム

前澤 正己,柴田 真治,牧野 滋,藤原 寛,中村 裕彦,伊藤 毅

品種ごとに生産量の変動が大きく多段階の工程から成る木質床材の製造工程において,製造工程の整流化と短サイクルでの業務処理を可能にする生産管理情報(生産計画・実績収集)システムの導入,および品種切替時間を短縮する多回数生産ラインの開発によって多品種少量生産システムを構築した。また,工程シミュレータで設計案を事前検証することによって,効率的にねらいの効果が得られるシステム導入を可能にした。これにより,月次単位の業務サイクルと大量生産型の生産ラインを有する既存の生産システムに対し,週次単位での生産計画作成と日々の多品種製品群の生産を実現している。このシステムの導入により納期遵守率向上と在庫削減が可能になる。

フロントローディング型原価企画支援システム

八木 克洋,荒木 宏嗣,秋山 勝則

企画段階で設定した目標原価を達成するため,加工費低減が主なねらいである独自の生産性設計技法「バラシズム」に各開発段階や各種工法に対応した総合的原価見積法と原価見積法を応用した原価改善のための再設計課題抽出法を組み合わせたフロントローディング型原価企画支援システムを開発した。とくに再設計課題抽出法においては部品の加工しやすさを示す加工性評価指数を新たに導入し,再設計対象部品の優先順位を付けることで効果的な原価改善を可能にしている。