パナソニック電工技報

【12月号】DECEMBER 2009 Vol.57 No.4の概要

特集:照明技術

特集:「照明技術」によせて

照明R&Dセンター  センター長 所長 鎌田 策雄

特集論文

照明用の高演色有機ELデバイス

辻 博也,伊藤 宜弘,井出 伸弘

照明用有機ELにおいて,高演色性化に必須である短波長青色発光ユニットを開発し,これと緑赤色燐光発光ユニットとの積層に光学設計性に優れた省積層型マルチユニット構造を採用することによって,平均演色評価数(Ra)93,電力効率32lm/W,輝度半減寿命3万時間以上の白色有機ELデバイスを実現した。
このデバイスは,発光色の変化が小さく,また特性再現性や生産性にも優れていることから,照明用途に適するものである。

超低消費電力のLED誘導灯

西岡 伸介,小出 晋司,齊藤 功,森田 幹雄,立野 洋司,山下 浩司

誘導灯において,光源を冷陰極蛍光灯からLEDに変更するとともに,点光源であるLEDから面発光する表示面に変換する光学系として,ランプ部分では点光源を線光源に変換するサイド入射導光ロッド方式を,表示面部分では従来よりもさらに効率を改善したV溝の反射面を有する導光板を考案し,表示面の輝度むら抑制と50%の省エネルギーを実現した。
また独立した2枚の表示面を有する両面型では,並列接続された2組のLEDの順電圧を検出してその高い側の電圧を電源回路にフィードバックする定電流回路により,おのおのの電流を一定にすることで明るさのばらつきを抑制している。

段調光型無電極蛍光ランプシステム

都築 佳典,浦 竜介,山本 正平

段調光型無電極蛍光ランプシステムの開発において,低出力まで調光可能な間欠発振方式の調光回路の採用によって,毎回の再点弧時の高い再点弧電圧がもたらすパワーカプラの誘導コイルとフェライトコアの磁束変化による振動で発生する騒音の問題を解決するため,バッファガスにクリプトンを混合して再点弧電圧を下げ,調光周波数の高調波とパワーカプラの固有振動周波数を異なるように設定するとともに,誘導コイルとフェライトコアからの振動伝播経路にダンパを設定することで,対策前に比べて18dBの騒音低減を実現した。
さらに,封入ガス圧および水銀蒸気圧の最適化により,全点灯時83lm/Wの高いシステム効率を達成している。

明るさセンサ連動型自動調光機能付き照明器具

由田 宏史,万波 寛明

住宅用蛍光灯シーリングライトにおいて,明るさセンサを用いて周囲の明るさの変化に対してつねに設定した明るさを保つように蛍光灯の光出力を変化させる自動調光機能を付加することにより,快適性を保ちながら自然光を利用して省エネルギーが可能となる照明器具を開発した。
本製品は,さまざまな室内環境に対応して明るさセンサ検出値のずれの補正や明るさの設定変更がリモートコントロール送信器で容易に行え,操作性と利便性にも配慮している。

調光待機移行による省エネルギー型人体センサ付き照明

三枝 浩和,菅原 洋,加藤 潤一,笹川 知宏,山本 真史

施設バックヤード用の人体センサ付き照明システムにおいて,高出力で高効率な「FHF63高周波点灯専用形蛍光ランプ」の採用と,従来フル点灯していた人検知後の点灯保持時間内を2分割して,前半は人検知時と同じ明るさで点灯し,後半は調光待機させることにより,明るさが同等の従来品と比較して35%の省エネルギーを実現した。
また,ON/OFFタイプと段調光タイプとの切替や明るさ切替機能を付加することで,利便性と快適性も向上している。

空間の明るさ感指標Feuを用いた屋外照明設計法

森 星豪,松井 俊成,岩井 彌,茨 薫,蓮尾 真

屋内空間の明るさ感評価値と高い相関を示す空間の明るさ感指標Feuの屋外空間への適用において,幾何平均輝度の算出範囲を視角で垂直20度(視点上側8度+下側12度),水平30度の有効視野と呼ばれる範囲に設定することで,屋外空間の視環境でも明るさ感評価値と高い相関を示すことを実証した。また,これを用いることにより,屋外空間の明るさ感を定量的に評価できるとともに,安心感との相関も高いことを確認した。
このFeuと従来からの水平面照度を用いることで,屋外照明の設計品質の向上や照明方法の見直しによる省エネルギーの実現,設計期間の短縮,良好な視環境を実現する器具開発への適用など多くの効果が期待できる。

照明によるメラトニン分泌抑制効果を低減するフィルタ

戸田 直宏,野口 公喜,安河内 朗,小崎 智照

良質な睡眠を得るための重要な要因の一つである光の概日リズムへの生理的作用の知見に基づき,ランプ光源の主に青緑領域の短波長光をカットして夜間の照明による概日リズムへの影響を低減する樹脂製フィルタを開発した。さらに,本フィルタを電球色蛍光灯に取り付けて夜間の照明として用いることで,概日リズムと強い関連をもつホルモンであるメラトニンの分泌抑制効果を低減できることも生理評価実験によって確認している。
本フィルタを利用した照明は,概日リズムへの好ましくない影響を与えることのない就寝前の光環境を提供するものである。

光波長の特性を応用した農業用照明

石渡 正紀,山田 真,内田 達清,大市 明伸

農業用システムへの光エネルギー利用技術において,植物や昆虫が本来備えている光の波長・強度・周期などに対する生理的な応答特性を見極め,これらを応用することによって,農薬の使用が低減できる照明器具等を開発してきた。室内において人工光を用いた基礎実験を行い,植物病害防除メカニズム,害虫防除メカニズム,および植物育成に必要な光照射要件を明らかにするとともに,この光照射要件を満たす器具を実際の農業現場に設置してその有効性を検証した。

視覚障害者歩行支援の蛍光灯通信位置情報システム

伏見 竜,牧野 秀夫,長添 和史

蛍光灯による位置情報システムの開発において,蛍光灯照明器具の調光機能と4値PPM(Pulse Position Modulation)による伝送信号の符号化により,送信ディジタル信号0と1の出現率に依存せずにつねに照明器具の平均輝度を一定にすることで,照明器具としての基本性能を確保しながら情報伝送機能の付加を実現した。
さらに,視覚障害者専用の受光端末のインタフェイスおよび音声ナビゲーションアルゴリズムを開発し,視覚障害者を対象とした位置認識および目的地への誘導性を評価することにより,実用化に向けた基本仕様を明らかにするとともに本システムは視覚障害者の歩行支援に有効であることを確認している。

撥水撥油コーティングによる工場用ベースライトの防汚性向上

渡辺 加津己,野間 真二郎,山内 哲,福澤 成晴,佐古 利治

水溶性切削油のオイルミストが付着しやすい金属加工工場のベースライトにおいて,反射板に独自の撥水撥油コーティングによる防汚機能層を形成し,オイルミストの付着抑制と付着汚れの簡単なふき取りを可能にした。
この防汚機能層は,静的接触角および後退接触角がともに大きい値を有するポリシロキサンを結合したアクリルユニットと,表面エネルギーが低く,表面への配向性を高める性質をもつフッ素ユニットを共重合させることにより,オイルミストを弾く成分を表面に緻密に局在化させ,3次元的に高密度で架橋させたフッ素-ポリシロキサン系コーティングを反射板表面に形成したものである。
本技術開発により,初期の高い器具効率を長期間維持することが可能となり,工場における作業環境を向上させるとともに省エネルギーを実現している。

照明昇降装置における耐震性の向上

桐ヶ谷 昌広,鶴田 亘,林 健一郎,吉田 雅彦,岩間 博哉

昇降式照明器具の落下防止機構において,昇降用駆動源とは別の電磁ソレノイドでシャッタを回転させて昇降体をロックする回転式シャッタ機構を開発した。照明器具の荷重を受けるシャッタは,上下・左右・前後の3方向に振動してもロックが解除されないカウンタバランス構造となっており,強い耐震性を実現している。さらに昇降時の動作フローを考案することで,手元スイッチにより自動でロックが解除・降下し,再設置の際は上昇後定位置で停止・ロックする動作が可能となり,メンテナンス性を向上させている。