パナソニック電工技報

【6月号】JUNE 2010 Vol.58 No.2の概要

特集:美容・健康技術

特集:「美容・健康技術」によせて

電器事業本部  電器R&Dセンター センター長 田坂 勲

特集論文

白金微粒子による毛髪の紫外線ダメージ抑制効果

町 昌治 ,須田 洋 ,松井 康訓 ,山内 俊幸

白金溶液処理で毛髪に白金微粒子を付着させた後に紫外線ダメージの加速試験をするためにUVランプ光を照射後,FT-IR分析によるスルホン酸基量測定,SEMによる表面観察,摩擦係数測定を行った結果,いずれの場合においても白金微粒子を付着させた毛髪では,紫外線によるダメージが抑制されていることが確認できた。
また,コロナ放電式の白金微粒子発生装置を開発し,同様のサンプルを作製して摩擦係数の測定を行った結果,白金微粒子を付着させた毛髪には摩擦係数増加の抑制がみられ,同様の効果があることが確認できた。

帯電微粒子水を含むミストによる肌バリア機能の改善

立田 茂 ,尼木 実知子 ,長田 光司

ミスト中でコロナ放電を行うことで生成される帯電微粒子水を含んだミストが生体に及ぼす作用を評価するため,3次元表皮モデルに対してこのミストを施術した結果,肌バリア機能が改善するとともにセラミドや遊離脂肪酸などの細胞間脂質が増加することを見いだした。
また,肌バリア機能の改善に関与する遺伝子発現の解析を行った結果,セラミド生成にかかわる一連の遺伝子発現量の増加が確認され,肌バリア機能の改善効果を裏づけることができた。

低出力キセノンフラッシュによる肌質改善・毛成長抑制法

木下 雅登 ,山崎 雅子 ,永沼 香織 ,奥野 要 ,松崎 貴 ,乃木田 俊辰

光を用いた美容法において,波長400~1200nm,エネルギー密度0.3J/cm2の低出力キセノンフラッシュを機械的脱毛後に照射することで,毛の成長抑制と肌質改善の効果を確認した。この光をわきに照射することにより,わき毛を処置する時間間隔が約2倍に延びるとともに,皮膚のターンオーバが加速されて全体の明度のばらつきが小さくなり肌の色調は明るくなる。また毛穴の凹凸形状は小さくなり,高さ100μmを越える凸形状が減少する。さらに組織学的検討の結果は,これらが毛根部の壊死性変化によるものではなく,毛包のアポトーシス誘導によって毛の成長が抑制されている可能性を示唆している。

垂直振動ヘッドを備えた深剃シェーバ

中村 成良 ,成田 憲二 ,実松 渉 ,佐近 茂俊 ,中山 敏 ,亀岡 浩幸

男性用往復式シェーバにおいて,バイブレータを搭載した刃ヘッドブロックが肌面に対して垂直方向に振動し,ひげの周りの肌を押し下げてひげを絞り出す方式の開発によって,従来品比で平均46μmの深剃りを実現した。
これにより,従来は昼ごろにひげのざらつきがみられたものが,夕方までざらつかないレベルに向上している。

力制御機能を有する個対応の椅子式マッサージ機

谷口 祥平 ,谷澤 孝欣 ,梶山 聡 ,池部 宗清 ,小川 哲史

椅子式マッサージ機において,力制御技術を応用し,もみ玉が身体から受ける力を3次元駆動のもみ機構にフィードバックしてリアルタイムでマッサージ力を制御することで,使用者個々の体型に合わせてもみ加減を瞬時に調整する機構を開発した。
本技術により,従来のもみ玉の位置制御によるマッサージ機で発生していた身体部位ごとのマッサージ力のばらつきを改善するとともに個対応も可能としている。

局部加温刺激を実現するマッサージ用デバイス

長野 正樹 ,湯川 隆志 ,小川 哲史 ,西尾 文宏 ,中村 潤二 ,池部 宗清

椅子式マッサージ機において,円筒形弾性体を回転支持する二つの金属ディスクの間に熱源を内蔵したデバイスを開発することにより,身体背部の任意な部位に対して機械的刺激と加温刺激を同時に,かつ局部的に与えることを実現した。この熱源にはPTCヒータを採用しており,伝熱部であるディスク温度が自然収束するため,温度制御用のコントローラを用いることなく目標温度を維持できる。
また提案するマッサージ法は,ディスク温度を65℃に,昇温時間を120秒に設定しているが,従来の機械的刺激のみの場合と比較して官能的に優位であるとの効果が得られている。

騎乗型訓練機による活性化と認知課題の学習脳促進

中野 紀夫 ,三原 泉 ,乾 景太 ,今井 文吾 ,道盛 章弘 ,萩原 啓

騎乗型訓練機による運動中は脳活動が前頭部や頭頂部で活性化することを,赤外線スペクトロスコピィ法(fNIRS)を用いて明らかにした。さらに,1日30分,週3回,12週間の運動強度を増やす訓練群と運動スキルを要求する訓練群とを分けて高齢者の敏捷性や認知学習に対する促進効果を比較検討した結果,敏捷性は運動強度を増やす訓練でのみ向上がみられた。一方,認知課題のうち,ストループとN-バックは両群で向上し,数字記憶は運動スキルを要求する訓練でのみ向上がみられた。

近赤外光を用いた皮下脂肪厚みの測定法

井出 和宏 ,上林 正 ,水内 明広

近赤外光の生体内での散乱・吸収特性に基づいて,波長800nm程度の近赤外光を皮膚表面から照射し,筋肉上部の脂肪層内で散乱されて皮膚表面からでてきた光を検出することによって,皮下脂肪厚みの非侵襲かつ簡便な測定法を開発した。
この測定法は,測定板の生体接触側に突起を設け,その内部に発光素子と二つの受光素子を配置することを特徴とし,突起の押付力が所定値に達した時点で発光素子を発光させることで遮光を確実に行うとともに,二つの受光素子の受光量を考慮したパラメータを用いることで皮膚の個人差による影響を軽減している。開発した方法での測定値と超音波断層装置による測定値の間には,二の腕,太もも,腹部でいずれも有意な正の相関がある。

ミネラル添加量の調節可能なポット型浄水器

平井 利明 ,小玉 誠 ,西川 壽一 ,田中 喜典 ,小関 正道

ポット型浄水器において,カートリッジ上部に配置した添加剤層,そこへ水を導入するための添加部給水口,および両者の外周を覆うカバーから成り,カバーの高さを上下に切り替えて水と添加剤の接触量を変化させることにより,添加するミネラル量を容易に制御できる機構を開発した。
また,ミネラル成分の濃度指標である硬度と水の味との相関関係を明らかにし,開発品である浄水器においては増加する硬度を3段階に設定できるとともに,精度良く制御可能であることを確認している。

アルカリイオン整水器用電解槽の長寿命・省電力化

山本 泰士 ,白水 久徳 ,田中 喜典 ,才原 康弘

アルカリイオン整水器において,電解槽内の電極のめっき材料を従来の白金から酸化イリジウムを40~80%混合したものに変更することにより,4~7倍の長寿命化と約10%の電極コスト低減を達成した。
また,流路出口幅を広げて水道水電解で問題となるカルシウムスケール付着による閉塞の抑制と,電極間距離を15%狭めたことによる電圧低減で15%の省電力化を実現している。
さらに,電源や筐体の小型化の効果等も合わせて,開発した整水器は従来品に比べて15%小型化を達成している。

帯電微粒子水によるウイルス・細菌抑制効果

浅野 幸康 ,須田 洋 ,大江 純平 ,前川 哲也 ,山内 俊幸

帯電微粒子水によるウイルスと病原性細菌の抑制効果について検証した。その結果,新型インフルエンザウイルス(A/H1N1pdm)に対しては6時間暴露で99%,季節性インフルエンザウイルス(A/H1N1)および鳥インフルエンザウイルス(A/H5N1,A/H9N2)に対しては4時間暴露でいずれも99.9%,犬ジステンバーウイルスに対しては4時間暴露で98.2%の抑制効果がそれぞれ確認された。また,腸管出血大腸菌およびメチシリン耐性黄色ブドウ球菌に対しては1時間暴露でいずれも99.99%の抑制効果が確認された。これらは,帯電微粒子水に含まれる種々のラジカル種によりウイルスや細菌の表面たんぱく質が変異することによって抑制されるものと考えているが,その詳細メカニズムの解明は今後の課題である。
帯電微粒子水によるこれらの抑制効果は,静電霧化装置の応用機器を開発するうえで大いに期待される。

薄型・高効率のポンプ用単相・圧粉鉄心型クローポールモータ

橋本 俊治 ,末松 真二 ,関 孝文

給湯機器等に搭載されるポンプ用モータにおいて,圧粉鉄心型クローポールモータに単相方式を採用するとともに,圧粉鉄心材料の比較的低密度成形で低コスト化を図りながらも,モータ特性が確保できる鉄心形状とその成形条件を開発することによって,従来の三相ブラシレスモータと同等の性能を有する薄型で単純な構造のモータを考案した。
これによりポンプ本体の薄型化が可能となり,組込機器である給湯機器等の小型化にもつながる。

低出力非接触充電器の待機電力低減法

北村 浩康 ,加田 恭平

低出力非接触充電器において,充電器に本体機器が搭載されていないことを専用のコイルや変調復調回路を用いることなく充電器側コイルインダクタンスの変化で検出し,充電器の高周波発振用スイッチング素子のオン時間を短くする待機電力低減法を開発した。
これにより,1W以下の低出力非接触充電器における待機電力を,従来の0.95Wから0.35W低減する0.6Wを実現している。

充電式インパクト電動工具の締付トルク制御法

有村 直 ,渥美 将利 ,清水 秀規 ,宮崎 博 ,沢野 史明 ,河合 啓

インパクト機構による打撃力でねじ締め作業を行う充電式電動工具において,打撃速度と1打撃当りのねじの回転量から推定した締付トルクでねじの着座を判定するとともに,着座後は打撃回数で管理する制御アルゴリズムを開発することによって,設定した締付力に対して±25%の精度を実現した。締付トルクと着座後の回転量の推定は,打撃タイミングを検出する衝撃センサの情報とブラシレスモータの回転子位置検出情報から導出している。
これにより,工場等での組立作業における締付トルクのばらつきを低減する充電式インパクト電動工具を実現した。

CAEによる落下強度を考慮した樹脂製筐体の軽量化

稲垣 賢一郎 ,山田 穣 ,田中 尚武 ,竹山 敦 ,山中 芳昭 ,川口 保

電動工具の開発において,強度解析では落下方向ごとに解析上の破壊応力の基準値を設定するとともに現実に即した境界条件を実測値で与えることで解析精度を高め,成形性では流動解析の結果を開発初期の段階で筐体形状に反映させて金型内での樹脂流動性を改善することにより,軽量で耐落下強度に優れた樹脂製筐体を実現した。
これにより筐体は約20%軽量化でき,軽くて使いやすく,また省資源で環境負荷も低減できる。