パナソニック電工技報

【9月号】SEPTEMBER 2010 Vol.58 No.3の概要

特集:環境対応技術

特集:「環境対応技術」によせて

品質・ 環境革新統括部  全社地球保全管理者 センター長 桑田 亨

特集論文

複数系統対応可能な省エネルギー支援用電力量測定システム

永利 英昭 ,一村 省互 ,西川 誠

電子式の電力量測定システムである「多回路エネルギーモニタ」において,本体ユニットの入力とは別個に系統測定と電源供給が可能でユニット単位での拡張も可能な異種系統ユニットと,SDカードへのデータ保存機能を開発することによって,ビルディングや工場等における電灯回路(単相3線)と動力回路(三相3線)の一括測定,三相4線式系統の測定,複数系統測定時の電源多重化による高可用,SDカードによる簡単なデータ記録を実現した。
これらの技術により,本体ユニットに異種系統ユニットを最大3台追加接続することで,「多回路エネルギーモニタ」は4系統16回路まで簡単に測定が可能となる。

エネルギー可視化のための統合型運用支援ツール

岸田 浩一 ,秋森 睦郎

省エネルギー用監視システムにおいて,個々の簡易電力計「エコパワーメータ」で測定したデータを統合して全体の電力使用状況が把握できる運用支援ツール「KW Watcher」を開発することによって,無駄な電力の発見や改善前後の確認が容易になり,効果的な省エネルギー活動が可能になった。
これを活用した省エネルギー活動として,照明関連では器具のHf化,空調関連ではエアコンディショナを水冷式から空冷インバータ式に更新,設備関連では成形機のヒータに断熱材取付けや材料乾燥機の排熱回収等を行った結果,2007年10月から2009年9月の間において,年換算で112万kWhの消費電力削減と約1100tのCO2削減を達成している。

高Tg・ハロゲンフリーの高周波対応多層基板材料

山口 真魚 ,垣内 秀隆 ,有沢 達也 ,中村 善彦

高速伝送と高耐熱性を両立し,ハロゲンフリーでありながら難燃性を有する環境対応型電子回路基板材料を実現するため,誘電率の低い新規分子骨格をエポキシ樹脂中に加え,特殊な反応を行うことによって,高Tgで電気特性に優れ,硬化物の硬化度と均一性や耐薬品性も向上させた多層基板材料を開発した。
従来のハロゲンフリー材料がTg148℃,誘電率4.6であるのに対し,開発品ではTg170℃,誘電率4.1と性能が向上している。またGHz帯での伝送損失の評価でも,従来品に比べて優れた伝送特性を示している。さらに40層の高多層テスト基板は,260℃のリフロー試験でも従来品に比べて優れた耐熱性を示し,鉛フリーはんだ実装に対応可能である。

ハロゲンフリー電子回路基板材料における燐系難燃剤の作用

柏原 圭子 ,齋藤 宏典

燐系難燃剤を含むハロゲンフリー電子回路基板材料において,燃焼試験中の発熱量測定,樹脂の熱分解挙動測定,加熱残渣の構造解析を行うことによって,その作用を推定する方法を見いだした。
燐系難燃剤を用いた材料は,燃焼試験中の発熱量測定からは燐系難燃剤を添加しない材料に比べて燃焼する際の発熱が減少すること,熱分解挙動測定からは燃焼温度付近の分解生成物発生が抑制されていることが観測されている。また加熱残渣の構造解析から,これらの現象は燐系難燃剤が燃焼温度付近の揮発分発生を抑制することで可燃物を減少させ,これにより発熱量が低減して難燃化に結び付いているものと推定される。

DC配線システム用マルチコンバータの高機能化

田舎片 悟 ,田村 秀樹 ,木寺 和憲 ,香川 卓也 ,松田 康弘 ,湯浅 裕明

DC配線システム用マルチコンバータにおいて,各コンバータの出力に優先順位となる電圧差を設け,より電圧設定の低いコンバータへ出力の主流が移った場合にはそのコンバータの出力設定電圧を上昇させ,より上位の電力源が復活した場合にはそのコンバータの出力設定電圧を下降させ,規定電圧を出力させる独自のマルチソース連携制御法を考案した。これにより,AC/DCコンバータ,太陽電池コンバータ,電池充放電コンバータをそれぞれ効果的に動作させ,太陽電池出力の積極的な使用による省エネルギーの向上や,商用電源停電時の無瞬断電源バックアップ供給を実現した。
また,DC系統の出力側にメカニカルリレーと半導体素子から成るハイブリッドプロテクタを設置することにより,出力分岐先で発生した短絡等の事故点の拡大を防止できる機能を実現している。

静電霧化装置の小型・省エネルギー化

平井 康一 ,裏谷 豊 ,辻本 豊彦

ペルチェ式静電霧化装置において,冷却効率が高くなるように封止構造の改善をすることで素子数を減らし,ペルチェモジュールの駆動電力を約70%削減して発熱を大幅に抑えることで,ヒートシンク容積を約25%まで小型化した。併せて,対向電極形状の改善により印加電圧を低減して絶縁距離を短縮することで,装置全体として2005年モデル比で約27%に小型化した。
また制御回路については,制御用ICの開発により大幅に部品点数を削減し,回路全体として2005年モデル比で約50%に小型化した。

高輝度LEDを用いた省エネルギー・小型ダウンライト

中川 有士 ,田島 裕亮 ,水川 宏光 ,増永 正文

LEDダウンライトにおいて,高輝度シングルチップLEDを採用するとともに,ロスを抑える配光制御が可能な反射板とLEDの温度上昇を抑える効率的な放熱体の開発によって,1/2ビーム角度40°と器具光束1715lmの光学性能と埋込穴径100mmに取り付け可能な小型化を実現した。これにより,従来の蛍光灯42形を搭載した埋込穴径125mmのダウンライトと同等の明るさで,約35%の電力削減を達成している。
また開発品の電源ユニットは,昇圧チョッパ回路の採用によりボルトフリーとするとともに,回路の短絡や開放などの異常状態を検知する出力電圧検出回路を設けて器具の安全性を高めている。。

洗面化粧台組込用の薄型LED照明ユニット

棚田 慎哉 ,田中 万亀 ,小泉 秀樹

洗面化粧台組込用の照明器具において,導光板の表面に光を拡散させてライン状の均一光を出射するプリズム機能を設けた,光量の損失が少ない導光バックライト方式を採用して光の取出効率を高めるとともに,導光板の光出射面とそのカバーにレンズ機構を設けて有効照射範囲へ集光させることによって,従来蛍光灯と同等以上の照度を有する薄型のLED照明ユニットを実現した。
その結果,厚み18mmと,従来の蛍光灯に比較して消費電力30%低減,寿命約4.7倍を達成している。

高効率・省エネルギー照明器具の導入支援サービス

仲田 和美 ,石原 政行 ,田部谷 幸男 ,小西 豊樹

LEDなどの高効率照明器具の導入による省エネルギー推進において,利用者の初期投資が不要で照明器具のリニューアルができる明かり機能提供型エコロジーサービス「あかりEサポート」を考しょう案した。これは,製品の長期貸出サービス以外に,契約期間中における製品故障時の追加費用なしでの修理,CO2削減認証,使用済み照明器具のリサイクルなどのサービスを複合化したもので,照明分野での省エネルギー推進への大きな貢献が期待できる。

開発事例

環境対応型のLED-UV印刷乾燥装置

田中 隆 ,乾 剛司 ,溝口 光則 ,福田 敦男

UVインクの乾燥装置において,光源に高出力の波長385nmのLED-UVチップを複数実装し,その照射光をレンズで比較的大きなスポット照射を行う水冷式LED-UVモジュールを開発した。これを基台にライン状に配置し,その配置間隔のバランスを取り,照射光を重ね合わせることにより照射強度4000mW/cm2以上で均一なライン状配光特性を実現するとともに,基台の冷却水の流路を並列式とすることで各LEDモジュールを均等に冷却して発光出力の安定化と長寿命を達成することによって,LED-UV方式による印刷インクの高速乾燥装置を開発した。
これにより,UVランプ方式に比べて消費電力が約1/5となり,年間2200時間稼動で約11.2万kWh(二酸化炭素換算約48t)削減できる。さらに15倍の寿命だけでなく,廃熱量やオゾン発生量も大幅に低減するため,空調や換気の負荷も削減可能となる。

環境配慮素材ケナフを使用した軽量引戸

藤原 俊介 ,大野 宗一郎 ,奥平 有三 ,梅岡 一哲 ,内藤 茂樹

住宅内装用木製引戸の表面材にケナフボードを使用するため,その表面にジアリルフタレート樹脂を含浸させたクラフト紙を貼り平滑性を向上させることによって,化粧シート貼りが可能となる方法を開発した。このケナフ表面材はMDFに比べて剛性が高いため厚みを薄くすることができ,これを採用した引戸は約20%の軽量化を達成している。
これにより,環境配慮素材ケナフの用途拡大が図れるとともに,物流および施工における負荷の軽減も期待できる。

特別寄稿

生物多様性への当社の取組み

長部 彰弘

当社は,生物多様性への取組みとして基本的考え方を2008年に定義し,以下の活動を行っている。
一つ目の「事業活動を通じて生物との共生や生態系ネットワークの保護に寄与する活動」としては,光の波長や配光制御により生物と共生する照明の開発,2010年制定の木材グリーン調達ガイドラインに基づいた適切に管理された森林からの木材調達,環境配慮型製品の創出や工場における省エネルギーや廃棄物を削減する環境負荷低減活動などが挙げられる。
二つ目の「社会貢献的活動」としては,和歌山県「ながきの森」おいて,2007年から10年間で45000本の植林をすることなどを行っている。
三つ目の「従業員意識啓発活動」としては,門真本社構内に2009年に設置したビオトープを活用し,従業員による管理・生物調査のボランティアなどを行っている。