パナソニック電工技報

【6月号】JUNE 2011 Vol.59 No.2の概要

特集:住宅設備・建材技術

特集「住宅設備・建材技術」によせて

執行役員  住建綜合技術・商品開発センター センター長 山田 昌司

特集論文

加圧溶解方式による微細気泡の生成メカニズム

前田 康成 ,細川 茂雄 ,伊藤 良泰 ,柴田 尚紀

加圧溶解方式による微細気泡発生装置において,気泡径と気泡数密度を位相ドップラ法(Phase Doppler Anemometry)を用いて測定するとともに,減圧ノズル内の流れを高速度カメラで可視化した結果,以下の3点から微細気泡の直径と数密度はキャビテーション状態と密接に関係していることが明らかになった。(1)キャビテーションが発生しない条件では,微細気泡がほとんど発生しない。(2)キャビテーションが発生する条件においては,ザウター平均気泡径がキャビテーションの成長とともに単調に増加する。(3)気泡数密度は,キャビテーションの発生からシートキャビテーション状態になるまでの過程で急増し,シートキャビテーション状態になると一定値に漸近する。
以上の結果は,加圧溶解方式による微細気泡の直径およびその数密度を効率的に設計するために有用である。

高濃度酸素湯による肌保湿性向上メカニズム

勝山 美紗 ,奥本 佐登志 ,堤 恭子 ,関 太輔

高濃度酸素湯による肌保湿性向上効果のメカニズムを解明するため,セラミド2試薬の水分吸着率の経時変化をカールフィッシャー法で水分量を測定した結果,肌の保湿性は角質層の細胞間脂質に存在しているセラミドの水分吸着率と相関があることを明らかにした。さらに,フーリエ変換赤外分光分析と顕微レーザラマン分光分析を行った結果から,酸素微細気泡がセラミド分子間水素結合を緩めて水分を吸着しやすくすることで保湿性を向上させているものと推定される。

高濃度酸素水の種子発芽・切り花延命効果

堤 恭子 ,中野 智彦 ・ 山口 重行 ,松村 浩一

家庭用気泡浴装置で生成される水道水の約1.2倍となる高濃度酸素水(溶存酸素濃度10mg/L程度)が植物に及ぼす影響を調べるため,植物が水中の酸素を必要とする状況で評価を行った結果,ホウレンソウおよびパンジーの発芽速度の向上,トルコギキョウ切り花の延命,水耕栽培ドラセナ・サンデリアーナの枯死枝率の抑制効果が確認された。
この装置は酸素ボンベを必要とせず低コストであり,小型で使用性が良いため,園芸用高濃度酸素水供給装置としての応用が期待される。

ディジタルヒューマンシミュレーションによる身体負荷予測法

齋藤 あかね ,木村 猛 ,ハリーシュP. V. ,柴野 伸之

住宅設備機器の使用性評価において,ディジタルヒューマンシミュレーションによる身体負荷予測を行うため,無理のない力を日常発揮力と定義するとともに,最大発揮力および日常発揮力の測定から,性差,年代差に関係なく適用できる日常発揮力比率を導出した。さらに,日本人約1000人分の最大発揮力データベースから定義した最大発揮力予測式に,日常発揮力比率を適用して日常発揮力を算出し,この値を基準に身体負荷の度合を予測する方法を考案した。
この身体負荷予測法を組み込んだディジタルヒューマンシミュレーションを用いることにより,性別,年齢,体型等の人間の特性を考慮した住宅設備機器の使用性評価が短期間で実現でき,開発初期段階から想定ユーザに対して適合性の高い仕様設定が可能となる。

壁パネル型輻射暖房によるトイレットの温熱快適性向上

岡田 直樹 ,上田 滋之 ,野木 久義 ,田村 俊樹

トイレットの暖房装置において,薄型で大型の壁パネル型輻射暖房の開発によって,場所をとらず安全で気流感のない快適な暖房を効率的なエネルギー活用方法で実現した。本装置は,人体に近接した大面積の場所に設置し,生理学的に暖房感を感じやすい上半身から冷えを感じやすい末梢部まで全身に輻射熱を効率的に与えるものであり,心理評価によって温風方式や電熱線方式と比較して室温が低くても高い暖房感が得られ温熱快適性が高いことが明らかになった。さらに生理評価において,トイレット内で肌を露出する大腿部からの放熱量が着衣時と同等以下であることから,皮膚温度の低下が抑制されることが明らかになり,本装置によって高い暖房感が得られることが生理的側面からも検証された。

高低差を利用した壁パネル型空気循環システム

中島 聡 ,川田 宗一郎 ,佐久間 崇

室内用の空気循環装置を壁パネル化するとともに吸込口を床近傍に吹出口を天井近傍に配置し,その高低差を利用することにより,小さな風量でもショートパスせず,室内空間全体へ効率良く循環することが可能となった。これにより,場所をとらず騒音や不快なドラフト感を低減した安全で快適な空気循環システムを実現することができた。
また本システムの有効性は,流体解析による風速分布,および実空間における炭酸ガス濃度分布測定を用いて検証された。

境界壁のアクティブ遮音による隣室空間の静音化

佐久間 崇 ,水野 耕 ,橋本 裕之 ,門脇 信諭

住宅居室で発生する音の隣室への漏れを抑制するため,発生音と同振幅逆位相の制御音を放射して境界壁の手前で音を打ち消し合うようにするアクティブ遮音法を考案した。この機能を境界壁に付設するパネル化建材に付与するため,パネル内部をセル構造として各セルに制御音発生用スピーカを配置し,マイクロホンで検出した入射音をアクティブノイズコントロール(ANC)処理して生成した制御音をこれらのスピーカから放射する。
80~300Hz周波数帯の音が隣室へ漏れるのを抑制するためには,従来のパッシブ遮音方式では壁が厚くなる問題があるが,この方式では厚み70mmのパネル建材で最大20dB低減できる。

調湿・消臭機能パネルの高意匠化

大村 浩之 ,鍜治 良明 ,岡田 芳弘

調湿・消臭機能パネルにおいて,EVA樹脂に澱粉系材料を添加することで透湿性とタック性を向上させた接着剤と,水性塗料に水分散した吸放湿剤を混合して通気性を飛躍的に向上させた塗料を開発することによって突き板を貼り合わせることが可能となり,意匠性の高い機能パネルを実現した。
この技術は,突き板以外にも通気性のあるさまざまな化粧シートを基材表面に貼り合わせることも可能であり,意匠のバリエーションを広げることができる。

アレル物質の作用を抑制する木質床材

坂本 顕士 ,前田 直彦 ,大村 浩之 ,柴田 健一郎 ,山本 卓也

木質床材において,配合したアレル物質作用抑制ポリマの活性を阻害しない2官能直鎖モノマと3官能モノマ,および表面硬化性に寄与する光重合開始材を含む紫外線硬化型樹脂を開発し,表面に塗布して硬化させることで,アレル物質作用抑制効果と高耐久性の両立を実現した。
これにより,面積の大きい床材で効率的なアレル物質の作用の抑制が可能となり,室内環境に配慮した住まいづくりに貢献できる。

バイオマス素材を活用した熱硬化性樹脂の高耐熱・高強度化

生駒 善光 , 斉藤 英一郎 , 菅原 亮 ,小倉 智子

バイオマス素材を活用した熱硬化性樹脂において,バイオマス素材である加水分解型タンニンと極性の高いエポキシ樹脂を,それぞれ硬化剤および主剤に用いることにより,従来の石油由来エポキシ樹脂硬化物とほぼ同等の耐熱性と強度を達成した。
この熱硬化性樹脂は,加水分解型タンニンを極性の高い液状エポキシ樹脂に溶解させることを特徴としており,溶剤を使用しない利点がある。したがって,成形過程において揮発成分の発生がないため,幅広い分野での利用が期待される。