パナソニック電工技報

【9月号】SEPTEMBER 2011 Vol.59 No.3の概要

特集:情報機器関連技術

特集:「情報機器関連技術」によせて

情報機器R&Dセンター センター長  竹山 博昭

特集論文

AC/DCパワーステーションの高効率化

田舎片 悟 ,小林 晋 ,馬場 朗 ,松尾 博文 ,末富 正之

家庭用配電システムのAC/DC電力を制御するパワーステーションの基幹モジュールである絶縁型双方向AC/DCコンバータにおいて,非絶縁型双方向AC/DCコンバータと高周波絶縁型双方向DC/DCコンバータを直列に接続した構成とするとともに,DC/DCコンバータに共振型スイッチング方式を採用することで,高効率化と小型化を実現した。
開発品は変換効率94%と従来品比20%の小型化を達成しており,これを使用したパワーステーションでは,従来品に比較して商用電力使用量を9.5%削減できることをシミュレーションで確認している。

ワイアレス通信機能付き多回路電力計測ユニット

塩川 明実 ,笠井 秀樹 ,茂住 厳 ,水野 洋二 ,湯浅 裕明

一般家庭における主幹回路や太陽光発電等の電力を計測し,無線接続した別場所のモニタに表示可能な多回路電力計測システムを開発した。
このシステムの多回路電力計測ユニットにおいては,計測に用いる各電流センサで生じる固有な位相ずれをソフトウェアで処理することで移相フィルタ回路を不要とし,その構成部品個体差による影響を低減している。また,住宅用分電盤に接続されている電線等による受信感度の低下に対しては,アンテナにダイバーシティー方式を採用することで信頼性の高い通信を実現している。

大規模ネットワーク対応のスマートメータ用マルチホップ通信

岡田 幸夫 ,梅田 直樹 ,土橋 和生 ,山本 心司

スマートメータ用通信において,ルート探索トラフィック負荷がきわめて小さく伝送環境の変動追随性に優れるルーティングプロトコルの開発により,親機1台当り端末1000台のネットワーク構築が可能で,電力線通信(PLC)と無線通信の両方に対応したマルチホップ通信システムを実現した。
また,適応型マルチホップ仮想セル形成法の開発によって,親機と端末の位置関係や端末密度など,さまざまな設置環境に適応して論理ネットワークを形成でき,設置設計や運用管理の省力化を可能にしている。

小型・薄型のワイアレス連動型住宅用火災警報器

栗田 昌典 ,松本 一弘 ,干場 圭太郎

ワイアレス連動型住宅用火災警報器において,電池寿命10年を確保したまま小型・薄型化を実現するため,高精度同期間欠受信による超低消費電力の無線通信方式と,煙流入性を阻害しない高性能内蔵小型アンテナを開発した。
これにより,従来の性能を維持しながら容量が1/3となる電池の小型化とアンテナ突起をなくすことが可能となり,従来品比60%となる厚み26mmを実現した。

話速変換機能付きハンズフリーインタホン

吉田 恵一 ,鷲 哲平 ,福島 実

早口の受話音声をゆっくりとした口調にする話速変換技術において,従来の音声区間の信号を伸長する処理に加え,騒音区間の信号を圧縮する独自の音声/非音声判別制御アルゴリズムの開発により,音声/騒音レベル比(S/N比)0dBの周囲騒音環境下での聞き取りやすさを実現した。
さらに,ハンズフリー通話処理において,音声スイッチの状態に応じて話速変換メモリーデータの消去を行う音声スイッチ連動型話速変換処理法の開発により,通話中の話速変換によるエコー,不自然な音の途切れ,ハウリングの発生を抑制し,自然な交互通話を可能にする話速変換機能を搭載したハンズフリーインタホンを実現した。

携帯電話とリアルタイム通話可能なインタホン転送アダプタ

岡田 幸夫 ,土橋 和生 ,福島 実 ,佐々木 貴之

ビデオインタホンにおいて,来訪者の呼出しを携帯電話に通知し,リアルタイムで画像確認や通話が可能なインタホン転送アダプタを開発した。インタネット経由での安定した通話品質を実現するため,ジッタバッファの適応制御により音声遅延を最小化するとともに,パケットロス補償処理により音声劣化を大幅に抑制している。また,当社サーバでイベント通知や呼制御の認証,接続管理を行うことにより,セキュリティー性を確保している。

面積復調方式による高感度距離画像センサ

橋本 裕介 ,今井 憲次 ,栗原 史和 ,常定 扶美 ,村上 憲一 ,原野 良彦

TOF(Time-Of-Flight)方式の距離画像センサにおいて,信号光を受光する受光領域と信号光の位相シフトを検出する復調領域とを一体にすることで,画素面積を有効活用して高感度なセンシングを実現した。このセンサは,各画素の受光領域上に配置されたフォトゲートに印加する電圧を信号光の強度変調周期と同期して切り替えることで受光領域の面積を変調するものである。
開発した技術により,小さいLEDパワーで小型の距離画像センサを実現でき,種々の分野への応用が期待される。

PIRモーションセンサのディジタル信号処理法

畑谷 光輝 ,福井 卓

PIRモーションセンサにおいて,コンデンサを用いて電流/電圧変換を行う当社独自の技術を活かしつつ,この出力をA/D変換してディジタル信号処理を行う方式の開発により,電源投入時の起動時間の短縮を実現した。A/D変換ではΣ⊿変調方式を用いており,ディジタル回路からA/D変換部へフィードバックを行うことにより,低周波数領域のゆらぎを抑制すると同時に人の検出に必要なハイパスフィルタを構成して外部部品を不要としている。
また,センサの出力をアナログ出力からディジタル出力とすることで外乱ノイズの影響を低減するとともに,BMC(Bi-phase Mark Code)方式を採用することでセンサ内部における影響を低減している。

低消費電力無線受信器を搭載した2線式電子スイッチ

植田 真介 ,東浜 弘忠 ,笠井 秀樹 ,谷利 陽子 ,豊田 一郎 ,上原 健太郎

無線で照明制御を行う2線式電子スイッチにおいて,2線式電源回路ではAC/DCコンバータにDC/DCコンバータを直列に接続して2段階の電力変換を行うとともにDC/DCコンバータ部にPFM制御を導入することで,受信回路では周波数逓倍方式を採用することで低消費電力化を図り,待機時の消費電流1mA以下を実現した。また受信回路においては,PWM信号による自動周波数制御方式を採用することで動作温度80℃でも安定した受信性能を確保し,通信エリア20mを達成している。
この2線式電子スイッチと人体センサを備えた発信器を組み合わせることにより,電波式のワイアレス照明自動制御システムを簡単な工事で構築することが可能となり,照明の省エネルギーを促進する効果が期待できる。

液晶タッチパネル方式の小型・多回路対応照明制御スイッチ

吉川 啓介 ,木村 克 ,廣石 昭彦 ,直井 祐一郎 ,佐々木 知明 ,三浦 啓

照明制御スイッチにおいて,2個用スイッチボックスに適合するモジュールに液晶タッチパネルを搭載し,画面を多重化することで,従来品比最大3倍の24回路まで細分化可能な小型・多回路対応を実現した。
また,液晶タッチパネル等の表示機能を有する露出パネル部と,伝送機能を有する埋込部を分離する構造により,薄型化を図りつつSDカードスロットの内蔵が可能としている。これにより,SDカードでパーソナルコンピュータを用いたスイッチの設定やデータコピーなどが可能となり,施工の簡素化を実現している。

最適運用機能搭載の店舗用省エネルギーコントローラ

十河 知也 ,中尾 敏章 ,高橋 賢 ,數野 浩基 ,中埜 進 ,杭 耕一郎

店舗の省エネルギーマネージメントにおいて,専門的な知識をもたないユーザでも簡単に,建物で発生するエネルギー使用の無駄を判別して最適な設備スケジュールが設定可能な「タイムマネージメント機能」を考案し,店舗用省エネルギーコントローラを開発した。
開発品を複数の店舗に適用した結果,「タイムマネージメント機能」の効果として平均4.1%の省エネルギー化を確認している。また,ユーザビリティーテストの結果から,専門的な知識をもたないユーザでも店舗運用の問題点が把握でき,簡単なマウス操作でスケジュール変更できることを確認している。

米国市場向け店舗用エネルギーマネージメントシステム

村上 昌史 ,下間 徹 ,仲野 章生 ,中尾 敏章 ,數野 浩基 ,佐藤 康仁

店舗用エネルギーマネージメントシステムにおいて,国内の店舗用として開発されたシステムを米国の店舗運営に適するように改良し,実際に運用することにより,快適性を維持しつつも10%以上の省エネルギー効果が得られることを検証した。
本システムは,大規模な設備更新が伴わない制御システムをベースに,時刻・季節変動の大きい店舗運用に対して既存設備を適切に運転する機能を付加し,導入の際の投資を抑えるとともに高い省エネルギーを実現するものである。

二重管トロリー式の省施工型非接触給電搬送システム

二畠 康 ,前田 裕史 ,寺裏 浩一 ,原 信次 ,太田 智浩

非接触給電方式の搬送システムにおいて,給電線を断面が二重管構造となるトロリー線にするとともに,ワンタッチ接続可能なジョイナと組み合わせることで,従来のリッツ線に比べて施工時間1/2を実現した。併せて,電源周波数を従来品の2倍となる40kHzまで高周波化することで,ピックアップ体積を従来品に比べて同容量で30%小型化している。
電源の高周波化による弊害を抑制するため,トロリー線においては二重管構造により交流抵抗増加率を従来のリッツ線よりも18%小さくして給電性能を向上させている。またピックアップにおいては,コイル間ギャップを巻線径よりも大きくすることにより負荷接続時の誘起電圧性能低下を抑えている。

中国の電源事情に対する課題と対策

松田 純一 ,田上 直樹 ,澤田 知行 ,齊藤 宏]

中国の一般家庭における商用電源の配線方式は三相4線のL(活線)-N(接地側)間を使用しており,N相欠相は商用電源の管理幅を超える電圧発生の原因となることから,電気製品と電源による影響で発生している8種類の不具合に対する共通の原因が電源配線のN線とE(アース)線の誤配線によるN相欠相であると仮定すると,これら不具合の発生メカニズムを説明できることを示した。
また,北京の一般家庭のコンセント回路を調査した結果,N-E誤配線と判断できるデータも得られている。そして,このN線とE線の誤配線防止のためには,分電盤への漏電ブレーカ設置が有効である。