パナソニック技報

【7月号】JULY 2011 Vol.57 No.2の概要

特集1:実装技術

実装技術特集によせて

生産革新本部 生産技術研究所 所長 安平 宣夫

招待論文

実装が拓く新しいもの作りの世界

東京大学 大学院工学系研究科 教授 須賀 唯知

技術論文

合金強化設計による車載用・長寿命鉛フリーはんだの開発

北浦 秀敏,日根 清裕,中村 太一,森 将人,酒谷 茂昭,日高 将人

自動車のエンジン補機類を制御するための電子機器を車室内からエンジンルーム内に搭載することで,配線類が削減され軽量化が可能である.しかし,一般的なSnAgCuの鉛フリーはんだ合金は,エンジンルーム内の高温環境下で信頼性を確保することが困難であった.この課題を解決するために,はんだ合金のSn結晶格子中にInを置換することで,強度が向上する固溶強化に着目し合金設計を行った.その結果,車載の信頼性基準であるヒートサイクル試験?40/150 ℃,1000サイクル後においても,はんだ接合部にクラックの発生を抑制可能なはんだ合金を開発した.

次世代車載機器向け実装信頼性評価手法の開発

佐藤 正昭,高橋 佳子,本田 直弥,濱野 誠司

車載機器は,エンジンルームや車室内での温度差が大きい過酷な使用環境で用いられ,熱に対する高い実装信頼性が必要である.しかし,リフロー時の温度による多層配線基板の熱変形の増大により,接合不良が発生し信頼性の低下を招く.そのため,加熱時の基板の挙動を詳細に把握する計測技術と予測・対策に向けたシミュレーション技術を組み合わせた信頼性評価手法が求められている.今回,車載機器を対象に加熱時の熱変形を詳細に分析可能な三次元熱変形計測技術の構築と高精度・高速なシミュレーション手法を開発したので報告する.

誘導結合型大気圧マイクロプラズマジェットによる酸化膜の高速還元

松森 正史,中塚 茂樹,小塩 哲平,光嶋 隆敏,森迫 勇

波線形状の平板アンテナ,定在波調整回路,整合回路を熱伝導率に優れたセラミック基板上に構成することにより,小型軽量のため移動可能で,低電力,少ガス流量ながら必要な領域を高速に還元することが可能な,環境に優しい誘導結合型大気圧マイクロプラズマジェットを開発した.銅酸化膜のφ12 mmの領域を,低電力40 W,少ガス流量260 cm3/minで,14 nm/sの高速で還元でき,良好なはんだ濡れ性が得られた.さらに,はんだの酸化膜についても高速還元が可能であり,チップのはんだバンプと銅電極の接合において,フラックスレスでの良好な接合を実現した.

電子部品実装設備用グリースの開発

大野 英明,城戸 一夫,小坂 和明,猪俣 彰男,前畑 健吾

電子部品実装設備は,生産性向上に対応して小型化・高速化している.使用されるグリースの性状は一般的にちょう度(硬さ)のみ表示され,転がり要素の寿命に必要な使用温度での基油粘度が明記されたものがない.本稿では,実装設備用グリースを開発するにあたり,直動ガイド走行中の油膜形成状態を電気導通にて計測し,最適な基油粘度を決定した.併せて,従来のグリースで発生していた飛散・垂れ落ちを防ぎ,さらに異種グリースとの混合でも性状変化が少ないリチウムコンプレックス系増ちょう剤の採用と,高湿度クリーンルームでの使用も想定し防錆(ぼうせい)性,低発塵性も向上させた実装設備専用のグリースを開発した.

ツインリニア駆動技術の確立

金井 一憲,佐野 達哉,浜 知朗

今日では,実装機は多種多様な生産形態に対応する必要があり,フレキシブルな装着ヘッドを高速高精度に位置決めすることが求められている.今回,新XYプラットフォームとして,ツインリニア駆動技術の開発を行った.本開発によってCFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastics)プレートを採用した熱変形し難いX軸ビームによる高精度位置決め,ツイン駆動における左右モータの残留推力低減による耐久寿命の信頼性向上が図れた.また,新制御システムであるコンデンサバンクを用いることで,減速時の回生電力の有効活用が可能となり設備の省電力化も図れることを実証した.

技術解説

160℃低温接合材料

大橋 直倫,岸 新

160 ℃低温接合材料は,低融点のSn-Biはんだ(融点139 ℃)と,補強用の熱硬化性樹脂から構成される部品実装用の接合材料である.本材料は,160 ℃の加熱工程ではんだ接合と樹脂補強が同時にでき,またリペアも可能である.今回,160 ℃低温接合材料の設計コンセプトと実用性の評価結果について述べる.

特集2:デジタル放送とともに

デジタル放送とともに特集によせて

AVCネットワークス社 副社長・CTO 今井 淨

招待論文

デジタル放送の歴史と今後の展望

日本放送協会 放送技術研究所 所長 久保田 啓一

特別寄稿

デジタル放送がもたらす「社会価値」

技術解説

デジタル放送標準化と実用化動向

下地 達也,青木 貴,川端 洋平

放送のデジタル化は,米・欧・日のグローバル標準規格を基本としつつも,実際の運用は各国向けにローカライズされて実施されている.さらにIP(Internet Protocol)網を利用した配信サービスや移動体向けサービス,3DTVなど新しい技術を導入したサービスが始まりつつある.このような世界各国の放送標準化,実運用化の動向を把握し,受信機の商品化につなげる取り組みが重要である.

デジタルTV用システムLSIとその要素技術

木村 浩三,後藤 昌一,田中 卓敏

デジタルTVは短期間で本格普及期を迎えたが,システムLSIとそれを支える要素技術がその発展と進化を牽引(けんいん)した重要な要因の1つと言える.特に,マスターごとに必要なメモリーバンド幅や処理単位ごとにプロセッサ性能の割り当てを実現するアーキテクチャは,複雑な同時動作時でも,高い実効性能と想定したユースケースの実時間処理を実現し,民生用AV機器の高い付加価値を生み出している.本稿では,そのアーキテクチャとそれを支える要素技術の解説を行う.

多様な受信端末を実現する技術開発(その1) (3Dテレビ受信機、車載受信機、ワンセグ受信機)

今井 雅,渡部 康,佐々木 亮

本稿では,多様なテレビ受信を実現する端末として,3Dテレビ受信機,車載受信機,ワンセグ受信機について述べる.3Dテレビ受信機では,3D映像視聴の原理,HDMI(High-Definition Multimedia Interface)規格,システム構成,3Dグラスなどに関する技術を,車載受信機では,MFN(Multi Frequency Network)環境下でのオート放送局サーチ技術を,ワンセグ受信機では,ダイバーシチ受信技術,なめらかな映像表示を実現するフレーム補完技術などを解説する.

多様な受信端末を実現する技術開発(その2) (CATV放送受信機,デジタル放送レコーダ)

木下 彰,中村 和彦

CATV放送受信機として日本の最新サービスであるCATVユニバーサルポータルシステムと米国OCAP(Open Cable Application Platform)対応STB(Set Top Box),中国向けのSTBの概要を解説する.併せて,デジタル放送のレコーダー(録画機)についても解説する.

デジタル放送用取材編集システム,および地上デジタル テレビ放送用データ放送システム

坂内 達司,中村 誠吾

デジタル放送用取材編集システムでは,ワークフローの高速化,トータル運用コストの低減などをねらいとして開発したP2システムの概要と,その核となる新記録メディアのP2カード,P2コンテンツ構造,MPEG-4 AVC/H.264ベースの新圧縮方式AVC-Intraを解説する.
また,地上デジタルテレビ放送用データ放送システムでは,その概要と,CM(コマーシャルメッセージ)連動データ放送制御技術,テレビ局間連携技術について解説する.

デジタルテレビにおけるネットワーク技術

庄田 明,吉浦 司,影本 英樹

当社は2003年に業界初となる「Tナビ」対応テレビを日本市場で発売した.「Tナビ」サービスは国内の共通テレビポータルサービスとしてアクトビラに統合し,技術仕様はデジタルテレビ情報化研究会・社団法人IPTV(Internet Protocol TeleVision)フォーラムにて業界標準仕様化を行った.その後,動画配信仕様(ストリーミング,ダウンロード)を追加し,テレビやBlu-ray Discレコーダーで商品化した.海外市場のネットワーク対応に際し,Ajax(Asynchronous JavaScript + XML)技術に基づくクラウド型サービスに対応するVIERA CASTシステムを開発,さらにVIERA Connectシステムへと拡張し,商品化した.

民生用ディスプレイデバイス技術の進歩

大前 秀樹,川原 功

アナログ放送からデジタル放送への移行に伴って,テレビのディスプレイはCRT(Cathode Ray Tube)からFPD(Flat Panel Display)にその道を譲ることとなった.FPDに用いられるディスプレイデバイスとして当社が主に開発を主導してきたPDP(Plasma Display Panel)に関して,DC型から現在主流のAC型への変遷,フルHD(HighDefinition),4K2Kへの高解像度化に至るまでの技術開発と,最近のLCD(Liquid Crystal Display)技術開発ならびに有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイ開発までを解説する.