熱発電チューブ

地熱を活用してエネルギー問題を解決

再生可能エネルギーとして現在開発が進められている太陽光や風力などは、時間帯や天候によって発電量が大きく増減するため、発電施設の利用効率が低くとどまるという課題があります。安定した利用が可能な再生エネルギーとして注目されているのが、地球内部の熱を熱源とする地熱・温泉熱発電技術です。特に、熱を電力に直接変換できる「熱電変換」は、二酸化炭素排出ゼロの、環境にやさしい発電技術のひとつとして注目されています。

配管そのものを発電素子にするアイデア

熱を電気に変える「熱電変換素子」は、物質の両端に温度差を生じさせることで電圧が生じる「ゼーベック効果」を利用しています。タービンのような可動部がなく、二酸化炭素などの排出もない発電技術として注目されています。

従来の熱電変換素子の構造は、図のようにP型とN型の熱電変換材料を並べて片側を金属でつなぎ、もう一方に取り付けた電極に導線をつないで電気を取り出すもので、その形状から「π(パイ)型構造」と呼ばれています。構造が複雑で熱を熱電変換素子に取り込むロスが大きく、大型化などには課題がありました。

<従来の熱発電デバイス>

パナソニックは、熱の流れにくい熱電変換材料と、熱の流れやすい金属を、熱の流れに対して傾斜させて交互に重ねると、素子内部で周期的な温度分布ができ、熱の流れに対して垂直な方向に電気が流れるという現象を発見しました。これを利用して効率的に電気を取り出すために、熱電変換材料と金属を交互に並べたチューブの内外の温度差を利用して発電する「熱発電チューブ」を考案したのです。

<熱発電チューブの仕組み>

冷水中に設置したチューブの中に温水を流すことで、チューブの内側から外側に向かって熱流が生じ、チューブの長さ方向に電流が流れるため、お湯を流す配管そのものを発電素子として利用できるようになります。長さ10 cmの熱発電チューブでは、2.7 Wの電力を取り出すことに成功しました。

熱流シミュレーション技術と製造方法を新たに開発

今回開発した熱発電チューブは、チューブの形状や熱流に対する材料の傾斜のつけ方によって、発電特性が大きく変わります。そこで、発電電力を最大化するために、チューブに流す温水・冷水の温度や流量に応じて、発電特性をシミュレーションできる技術を新たに構築しました。

チューブ作製にあたり課題となったのが、チューブ状に成型する技術でした。熱電変換材料として用いるビスマステルルは延ばしたり丸めたりする加工が難しいのですが、あらかじめ熱電変換材料と金属のカップをそれぞれ成型し、それらを重ねて接合することでチューブ状にする方法を編み出しました。これにより、熱電変換材料層と金属層の密着度が高い傾斜積層構造を実現し、シミュレーション結果とよく合致した発電特性を得ることができるようになりました。
この熱発電チューブは、配管自体で熱発電が可能となるため、地球内部の熱を効率的に利用する、熱発電システムの実現に大きく近づきました。

最新動向

パナソニックは、熱発電チューブの開発をさらに進め、200℃以下の比較的低温の熱源も効率的に電気に変換することに成功しました。

100度以下の低温熱で発電 余剰排熱を活用、熱発電チューブを開発

NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)のプロジェクト「省エネルギー革新技術開発事業/先導研究/自立型システムのための熱発電デバイスの研究開発」において、200時間を超える検証実験で96℃の温水排熱から、設置面積換算で太陽光発電の約4倍(※変換効率20%太陽光発電パネル(200W/m2)同面積あたりの発電性能との比較)に匹敵する発電性能を実証しました。この結果より、発電用熱源として活用が困難であった100℃以下の低温の未利用熱による発電が検証され、幅広い分野での未利用熱の活用が期待されます。

<京都市東北部クリーンセンターにて実施している発電検証実験の様子>

(左)3つの熱発電ユニットで構成された発電装置を組み込んだ実験現場
(右)熱発電ユニット内部の構成とその中に設置した熱発電チューブ

この熱発電チューブを複数本利用して熱発電ユニットを構成することにより、地熱・温泉熱利用だけでなく、身近に存在する工場排水などの利用されずに捨てられている熱源(未利用熱)も有効に活用することができます。