ユニバーサルデザインを通じて、より多くの人が生き生きと暮らせる生活の実現を目指すパナソニック。「いきいきライフデザインマガジン」では、様々な専門家の知見から人生をさらに豊かにするヒントをお届けしてまいります。

いきいきライフデザインマガジン

第3回(後編):家事や日常の動作を快適に行うためのヒント 第3回(後編):家事や日常の動作を快適に行うためのヒント

新潟医療福祉大学 健康科学部健康スポーツ学科教授

大森豪 先生

年齢と共に少しずつ衰えていく筋力を維持するための運動は、日常の家事の中でもできます。ただし、無理な動作は腰痛や五十肩などの痛みを引き起こす原因になります。いくつになっても快適な毎日を過ごすためには、ちょっとした注意が必要です。
整形外科医として長年介護予防に取り組んでこられ、『中高年の「ひざ」の痛み』の著者でもある大森豪先生(新潟医療福祉大学 健康科学部教授)に、家事や日常の動作を快適に行うためのヒントを伺いました。

家事や日常の動作を快適に行うための5つのポイント

日常生活の中で体に負担をかけないコツ Point 1:目線の高さで作業する、Point 2:中腰に限らず、同じ姿勢を長く続けない、Point 3:小さな段差はあっていい、大きな段差には手すりも活用、Point 4:キッチン収納は縦型の取っ手やスライド式を選ぶ、Point 5:ちょっとした家事でも、運動量を増やす心がけを

Point 1:目線の高さで作業する Point 1:目線の高さで作業する

年齢を重ねると、肩周辺の筋肉や腱(スジ)が弱っているので、高い位置に手を伸ばす、体から離れたところで重たいものを持つなど、肩に負担のかかるような動作をすると、ピッと痛みが出ることがあります。これが、いわゆる「五十肩(肩関節周囲炎)」です。関節というのは、普通に動かせる範囲であれば負担がかからないのですが、ラクに動かせる範囲を超えた動きを何度も強要されると、若い人でも関節を痛めてしまいます。

五十肩になってしまうと、服の脱ぎ着をはじめ日常生活にも大きな支障が出てしまいますから、日頃から肩に負担のない範囲で腕を動かすようにしたいものです。
そのためには、目線の高さで作業することが基本です。

たとえば洗濯物を高いところに干したり、取り込んだりするのは、肩に負担がかかります。その負担を解消するひとつの方法として、電動式で物干し竿の高さを変えられるものがあります。実は我が家でも使っているのですが、竿を目線の高さまで下げてから干せるので、肩に負担がかからず、ラクに作業ができます。

左:目線より高いものを取る動作は肩に負担がかかる
右:目線の高さで作業できると肩への負担が減る
※電動式で高さを変えられる室内物干しユニット『ホシ姫さま』(CWFT21LA他)で撮影

Point 2:中腰に限らず、同じ姿勢を長く続けない Point 2:中腰に限らず、同じ姿勢を長く続けない

高いところだけでなく、低いところでの作業も非常につらいものです。中腰の姿勢というのは、腰の筋肉を伸ばした状態で、なおかつ筋肉を収縮させています。ちょうど肉離れを起こす時と同じ原理で腰の筋肉がダメージを受けるのです。若い人でも重たいものを急に持ち上げたり、長いあいだ中腰でいたりすると、ギックリ腰になります。これが中高年になると、筋肉そのものが弱ってきているために、ちょっと無理をしただけでも「イタタ・・・」となってしまうのです。

とはいえ、気をつけたいのは中腰だけではありません。どんなにラクそうに見える姿勢でも、同じ姿勢を長く続けることは体によくないということを忘れないでください。

Point 3:小さな段差はあっていい、大きな段差には手すりも活用 Point 3:小さな段差はあっていい、大きな段差には手すりも活用

高齢になって、股関節が硬くなり、足を上げる筋肉が弱ってくると、大きな段差を乗り越えるのが難しくなります。ただ、家中をバリアフリーにすると、ますます足を上げる筋肉が弱くなってすり足になってしまうので、多少の高低はあっていいと思います。

気をつけたいのは、高齢者の転倒事故が多い浴室です。浴槽への出入りは滑りやすく、段差も大きいので、ふらつきやすくなります。年齢を重ね、浴槽内の出入りに負担が大きくなるようであれば、浴槽内のステップや手すりを活用するのも有効ですね。

左:ミラーの手前に設置した『おきラク手すり』を活用した浴槽への出入り
右:浴槽横にも手すりを付けると、より出入りしやすくなる
※写真は『リフォムス おきラク手すり』(GKK64WRBM1R他)

Point 4:キッチン収納は縦型の取っ手やスライド式を選ぶ Point 4:キッチン収納は縦型の取っ手やスライド式を選ぶ

高齢になると、握力が弱まるので、収納扉を開ける際に手首や肘に負担がかかるようになります。ですから、取っ手の向きは重要。胸より高い位置にある収納扉の取っ手は縦型を選びましょう。縦型の取っ手なら、力を入れる方向と引っ張る方向が同じなので、ラクに開けられます。

さらに目線より高い位置に手を伸ばすのは肩に大きな負担をかけるので、中身を目線の高さに下げられるスライド式の収納を使うと、出し入れがラクにできます。

縦型の取っ手を使用したウォールユニット
※写真はハンドル取っ手(HEE)

目線の高さまでスライド式に降ろせる収納
※写真は『ソフトダウンウォールユニット』(VJ075SD5AT2他)

Point 5:ちょっとした家事でも、運動量を増やす心がけを Point 5:ちょっとした家事でも、運動量を増やす心がけを

掃除は家事の中でも運動量が多いので、筋力維持には最適です。掃除機をかけるときは、腕を伸ばすのではなく、掃除機と体が離れないようにこまめに動くと、運動量が増やせると同時に腕・肘への負担を減らせます。また腰に負担がかからないように、なるべく前屈みの姿勢は避けてください。

左:腰への負担が大きい掃除機のかけ方(腕が伸び、体が前に傾いている)
右:腰への負担が少ない掃除機のかけ方(掃除機を身体から離さず、こまめに移動しながら掃除機をかける)

掃除機が重いと、掃除をすることそのものが億劫になってしまうので、軽量で持ち歩きやすく、軽く押すだけでスイスイ動くアシスト機能がついたものがいいと思います。ちなみにロコモ*の診断基準のひとつに「2kg程度の買い物をして持ち帰るのが困難である」という項目があります。掃除機には2kgのものもあるそうですから、それが持ち歩けるうちは大丈夫ということです。

コードレスで使えるスティック式掃除機もいいですね。充電器から外したり、スイッチを入れたりするときに、かがまなくていいので、膝や腰への負担が減らせます。

左:本体重量2kgの掃除機
※写真は『Jコンセプト掃除機』(MC-JP510G他)
右:かがまなくて良いコードレススティック掃除機
※写真の商品はMC-BU100J

今のコンセントの位置は低くて、抜き差しするのに負担になりますね。体の負担を減らす意味で、照明スイッチくらいの高さにコンセントがあれば体の負担を減らせると思います。

壁スイッチとコンセントが一体化した照明スイッチ
※写真は『あけたらコンセント』(WTC5221W/WTC7101W他)

*ロコモ … ロコモティブ・シンドローム(運動器症候群)。骨、関節、筋肉などの機能が衰えて、そのまま進行すると介護が必要になるリスクが高い状態として、日本整形外科学会が予防を呼びかけている。

大森豪(おおもりごう)先生プロフィール

1958年生まれ。1985年新潟大学医学部卒業。
新潟大学助教授を経て2004年より新潟大学超域研究機構教授に就任。
2013年より新潟医療福祉大学健康科学部健康スポーツ学科教授。
アルビレックス新潟FCチームドクター。
専門領域は整形外科、スポーツ医学、生体工学。

著書:『図解 中高年の「ひざ」の痛み―変形性膝関節症の予防と治療』

編集後記 編集後記

中尾洋子 パナソニック(株) デザイン戦略室 課長 / 全社UD担当

ついついその場で、あまり動かずに様々な作業をしてしまい、その結果、腰などに痛みを感じて「しまった!」と思ったことがあります。今のところ大事には至っていませんが、今回教えて頂いた、からだに負担をかけないコツを、日々の生活の中で取り入れて予防していきたいと思います。また、からだに負担の少ない家電や設備がお役に立てることも分かりました。これからも色々とご紹介してまいります。