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いきいきライフデザインマガジン

第6回(後編):快適な移動でより活発な社会参加を 第6回(後編):快適な移動でより活発な社会参加を

大阪大学大学院 工学研究科地球総合工学専攻 交通・地域計画学領域教授

土井健司 先生

高齢者が安全な運転を続けるためにカーナビができることは?持続可能な都市交通戦略の立案と実践を手がけておられる土井健司先生に、「ストラーダ CN-F1D」搭載のデモカーに試乗いただき、パナソニック株式会社 AVCネットワーク社デザインセンターの西田結城がお話を伺いました。

情報を要約してシンプルに伝えるナビ

西田:

弊社のカーナビ「Strada(以下、ストラーダ)」(写真1)の最新型をご覧いただきましたが、いかがでしたか?

土井先生:

ナビ画面が非常に見やすいですね。運転中にナビの地図を読み取るのは相当な認識力が必要です。高齢者になると、脳の中のワーキングメモリに余裕がなくなってくるので、運転をしながら同時に、文字情報を読み込む、地図を読み解くなど、時間のかかることを行うのが難しくなってくるのです。その点、ストラーダのナビ画面はストリートビューに近いリアルな3D映像なので、地図を読むというより、少し先の風景を見ている感じで、これなら地図情報を運転に変換するための時間がかからずに済みますね。

西田:

地図の配色や自車マークはお好みで選べるようになっているので、必要であれば、もう少し情報を単純化して道路がもっと目立つような配色にしたり、文字の大きさを選んだりとカスタマイズすることもできます(写真2)

写真1:ストラーダ CN-F1D

写真2:背景色、道路の色も4種類から選択できる

土井先生:

これからは道路情報をシンプルに見せてくれる、高齢者モードの地図がますます必要になってくるでしょうね。ストラーダの最新型は大型ディスプレイが手前にせり出しているので、画面が見やすいし、手を伸ばさなくても届くので、ラクに操作できるところもいいと思います。
指先を使ってスマートフォンやタブレットと同じ感覚で操作できるのも便利ですね。スマートフォンやタブレットを使ったことのない方は慣れるまで戸惑うかもしれませんが。

西田:

スマートフォンやタブレットを使ったことがない方のために、従来のカーナビと同じ方式でもお使いいただけるようにしています。

土井先生:

それなら安心ですね。
それから、目的地までのシミュレーションができるのもいいですね(写真3)。シミュレーション機能を使って出発前に予習しておけば、目的地の近くに行ってから「駐車場はどこにあるかな」とキョロキョロしなくてもいいので、事故防止に役立ちます。高齢者に限らず、すべての自動車交通事故の大多数は、自宅周りか目的地周りで起こるのです。

写真3:目的地までのルートを事前にシミュレーションできる

西田:

先生にぜひお聞きしたいのですが、ご高齢の方にとって走行中の音声によるお知らせはあまり良くないのでしょうか。視覚情報だけにしたほうがいいでしょうか。

土井先生:

メインは視覚で、音声はサブと考えた方がいいでしょうね。その点、運転席のすぐ前にある小さな横長のディスプレイは何というのですか?あそこに文字でお知らせが出るのは凄くいいと思います。

西田:

あれは、フロントインフォディスプレイです。(写真4)

土井先生:

ドライバーの目の前に、速度表示制限などの最小限の重要な情報だけを映すという発想がいいですね。視点をいちいちナビ画面に移さずに前を見たまま運転できるのがいいと思います。道のつくり方にも問題があるのですが、今、道路空間にはとにかく色々な情報があふれているので、大切な情報をつい見逃してしまい、それが事故につながってしまいます。多すぎる情報を整理して、重要な情報だけをシンプルに見せてくれる機能は、高齢者に限らず、すべてのドライバーにとって非常に意味があると思います。

写真4:フロントインフォディスプレイ

西田:

このカーナビには、初めての道を走る時にも安心な“安心運転サポート機能”がついています(写真5)。これは、走行している道路の制限速度をはじめ、一時停止やカーブ、踏切など注意が必要な場所を表示と音声で、分かりやすく案内する機能です。地図表示だけでなく、周囲が暗くなってもヘッドライトが点灯しない場合に注意を促すなど、さまざまな状況でドライバーをサポートしてくれるんですよ。

土井先生:

それは素晴らしい!

写真5:安心運転サポート機能(左)制限速度などのお知らせ

(右)ライト点灯のお知らせ

メンタルコントロールはハンドルを握る前に

西田:

私どもでは超高齢社会に向けた完全自動運転の超小型電気自動車の実現に取り組んでいますが、一般車の完全自動運転実用化はいつ頃になると思われますか?

土井先生:

自動車メーカーによる自動運転の実証実験は早くから始まっていますが、各社ごとに方式や規格が違っていますし、自動運転車の割合を一気に100%に持っていくことはできませんので、実際の道路に色々な車が混在したときにどのような交通状況になるかはまだわかっていません。自動運転の本格的な実用化までに、おそらくあと20~30年はかかるでしょう。それまでは運転の自由度をある程度抑制するなどの工夫も必要ですし、あとはカーナビなどのサポートによって事故を起こさないように頑張ってもらう必要がありますね。

西田:

事故防止には運転中にリラックスした状態を保つことも大事でしょうね。

土井先生:

高齢者に限らず若い人でもそうなのですが、怒りやイライラ、焦りなどの情動が、危険な運転を誘発し、事故につながりやすいのです。だいたい車に乗った時にすでにパンク状態になっているので、車に乗ってからでは遅いのです。車に乗る前に、今日は本当に車に乗ってもいい体調かどうか、朝起きたらバイタルデータを取るようにするなどが必要かもしれません。いずれにしても家を出る前、ハンドルを握る前になんらかの働きかけをすることが重要でしょうね。

快適な移動が、活動のレベルを高める

西田:

団塊世代は他の世代に比べ、運転することがお好きな方が多いとお聞きしました。それは何故でしょうか?

土井先生:

今の若い世代は車を持たない人が増えていて、車に乗っている人も車を移動の手段としか捉えていない人が多いですね。我々の世代も、ドライブが楽しいとは思っていません。その点、団塊世代はドライブをひとつの根源的な楽しみだと思っているようです。理由のひとつに、車に乗ることが有能感と結びついている世代だからかもしれませんね。車をめぐる価値観は社会の成熟度とともに変化します。たとえば、韓国では「車=ソーシャルステイタス」という捉え方が強く、昨年調査をしたところ、「車がないと結婚できない」「車がないとモテない」という声をよく聞きました。韓国の若い世代では、車を運転することが有能感と結びついているのですね。日本の団塊世代も同じではないでしょうか。

西田:

他に移動手段がないから無理してでも車に乗りたいのではなく、車を運転すること自体が楽しみなのですね。

土井先生:

そういう人たちは、自動運転車で移動するのでは自己効力感が得られないので、積極的に乗りたいとは思わないでしょうね。高齢になっても自分で運転できると思えることが大事。だから、カーナビが煩雑な道路情報を要約して、高齢ドライバーをサポートすることができれば、運転を続けられることで自己効力感を高めることができます。
そして、当事者の方々も、ご自身の運転の安全・安心について気になり始めたら、最近の情報技術の進化やカーナビの新たな役割に目を向けて、色々な製品の情報を仕入れて、ご自分の合ったものを選んでみてほしいですね。
運転中ハラハラドキドキの連続では、目的地に着く前にヘトヘトになってしまいますが、カーナビを使いこなして、移動が楽しく快適にできれば、目的地での活動もより活発にいきいきしてくるでしょう。移動の質が、活動のレベルを高めてくれるのです。

土井健司(どいけんじ)先生プロフィール

1960年 愛媛県生まれ。
名古屋大学大学院工学研究科博士後期課程修了。東京工業大学大学院情報理工学研究科助教授、香川大学工学部教授を経て、2012年より大阪大学大学院工学研究科地球総合工学専攻 交通・地域計画学領域教授。
専門は都市交通計画、モビリティデザイン、都市デザイン。持続可能な都市交通戦略の立案と実践をテーマに、「超高齢都市におけるスローモビリティ」「社会的ユーザビリティ概念に基づく道路空間の安全かつ包摂的な利活用」「アジアにおけるスマートライフを実現する知的統合交通」などの課題に向けて活躍中。

編集後記 編集後記

中尾洋子 パナソニック(株) デザイン戦略室 課長 / 全社UD担当

私は運転が苦手なので、車に乗った時に既にパンク状態、というのはよく分かります。だから、目的地までのシミュレーションができたり、迷ってしまう交差点などを最適なタイミングで分かりやすく教えてくれるカーナビの存在は非常にありがたいです。自動運転の実用化にはもう少し時間が必要なようなので、自分に合ったカーナビで移動を快適にして、活動的な生活を送りたいですね。