Universal Design ユニバーサルデザインを通じて、より多くの人が生き生きと暮らせる生活の実現を目指すパナソニック。 「いきいきライフデザインマガジン」では、様々な専門家から人生をさらに豊かにするヒントをお届けしてまいります。

いきいきライフデザインマガジン

第7回(後編)料理療法の専門家、湯川先生と学ぶ「ココロとからだ、いきいき料理教室レポート」 第7回(後編)料理療法の専門家、湯川先生と学ぶ「ココロとからだ、いきいき料理教室レポート」
写真:湯川夏子(ゆかわなつこ)先生肖像 写真:湯川夏子(ゆかわなつこ)先生肖像

京都教育大学家政科教授

湯川夏子(ゆかわなつこ)先生

料理には、心身の健康を増進し、生活の質を上げる効果があり、認知症のケアや予防に役立つということから、グループホームなどで「料理療法」[※詳しくは、いきいきライフデザインマガジン第7回(前編)「いつまでも料理を楽しんで、いきいき暮らす!」をご参照ください。]が拡がっています。みんなで一緒に料理をつくって食べるのですが、単なるレクリエーションではありません。参加される方がどの程度料理ができるかを観察し、何をつくるのがいいか、またどんな支援が必要かを考慮し、実施後の効果を評価するなど、音楽療法や園芸療法と同じように科学的な根拠に基づく「療法」として実施されているのです。
論より証拠。「料理療法」の提唱者であり、高齢者を対象とした「料理療法」の普及活動を進めておられる湯川夏子先生をお招きして開催した「ココロとからだ いきいき料理教室」の模様をレポートさせていただきます。

写真:実施にご協力いただいたFujisawaサスティナブル・スマートタウン(Fujisawa SST)内にあるサービス付き高齢者住宅「ココファン藤沢SST」(神奈川県藤沢市)
写真:峯野都史子(パナソニック㈱アプライアンス社)、湯川夏子先生、上原孝介さん(ココファン藤沢SST事業所長)、中尾洋子(パナソニック㈱ デザイン戦略室)

(左) 実施にご協力いただいたFujisawaサスティナブル・スマートタウン(Fujisawa SST)内にあるサービス付き高齢者住宅
「ココファン藤沢SST」(神奈川県藤沢市)
(右) 峯野都史子(パナソニック(株)アプライアンス社)、湯川夏子先生、上原孝介さん(ココファン藤沢SST事業所長)、
中尾洋子(パナソニック(株)デザイン戦略室)

料理をすることが人をいきいきさせる!

2017年3月4日(土)、神奈川県藤沢市のFujisawaサスティナブル・スマートタウン(Fujisawa SST)内にあるサービス付き高齢者住宅「ココファン藤沢SST」のご協力により、「ココロとからだ いきいき料理教室」を開催しました。参加者はココファン藤沢SSTやFujisawa SSTほか近隣に在住のご夫婦2組と母娘2組に、お孫さんも加わった3世代のご家族も交えた5組の方々です。
料理教室を始めるにあたって、湯川先生が「料理を食べて元気になるのはもちろんですが、料理をすることでいきいきする。認知症の予防にもいいし、認知症になった人も料理ができる。毎日でなくても、ちょっとした機会に料理をすることが大事です」と話されました。
「80歳の母は『毎日毎日お料理つくっているから、もういややわ~。めんどくさい。あんたが帰ってくるから、しゃあない、つくるけどな』と言うんですが、私が『ああおいしい』『助かるわ~』と言うと、『しゃあないな』とつくってくれる。それが母を元気にいきいきさせていると思っています(笑)。そういう風に、人のためにつくる、人と一緒につくるということが、家庭での役割を失わないことにつながる。そんな料理の効果を実証していくのが、料理療法です。
料理療法のポイントは、お母さまができることはやっていただくということ。苦手なことがあれば、娘さんやご主人にサポートしていただき、娘さんはあくまで支援する、お母さんに教えていただくというスタンスでお願いしたいと思います。お母さんの役割を奪ってはダメ。つくってもらった料理を食べて『おいしいわ~』と伝えることが一番大事な役目です」(湯川先生)

写真:湯川夏子先生 写真:湯川夏子先生
開会挨拶の様子
写真:中尾洋子(パナソニック㈱ デザイン戦略室)
写真:上原孝介さん(ココファン藤沢SST事業所長)
写真:峯野都史子(パナソニック㈱アプライアンス社)
中尾洋子(パナソニック㈱デザイン戦略室)

「パナソニックでは、『いきいきライフデザインマガジン』をはじめとして、さまざまな人が、いきいきと暮らせる社会にするための取り組みをしています。その一環として、料理を続けることが高齢者の心にも体にも良いということで、料理教室を開催させていただけることになりました。
今日は、さまざまな家電を使って、楽しい料理の時間を過ごしていただければと思っています。」

上原孝介さん(ココファン藤沢SST事業所長)

「本日はご参加いただきありがとうございます。限られた時間ではありますが、ご家族、そして参加者みんなで、ぜひ料理を楽しんでください。」

峯野都史子(パナソニック㈱アプライアンス社)

「今日は、IHを使ってビーフカレー、オーブンレンジを使って、簡単に焼き野菜をつくります。オーブンレンジを使うと簡単に、とても美味しく焼き野菜がつくれます。また、ファイバーミキサーを使って、鉄分の多い小松菜で、スムージーをつくっていきます。最後の試食をぜひお楽しみに!」

料理をつくりながら思い出話を共有する

「料理にはやり方の正解はないので、ご自分のやりたいようにご家庭の味を楽しくつくっていただき、その過程を楽しんでいただければと思います」という湯川先生のご挨拶が終わって、いよいよ料理づくりがスタートです。各テーブルにはそれぞれ卓上IH調理器と鍋、包丁、まな板と食材が揃っています。この日のメインは、各ご家庭の味や思い出が詰っているだろう「カレー」。湯川先生によると、料理療法のメニューはつくり慣れた料理が効果的なのだそうです。

写真:各テーブルに用意された食材と調理器具
写真:料理をされる80代のご主人

2年前に奥様が交通事故に遭われたのをきっかけに、たまに料理をするようになったという80代のご主人は「カレーをつくるのは初めて」と少し緊張した面持ちで丁寧に野菜を切っていかれます。「手つきがなかなかいいじゃない」と目を細める奥様。普段の仲の良さが伝わってきます。
「カレーはいいわね。つくり方がわかっているから」と手慣れた様子で野菜を切る90代の女性は、じつは「料理をするのは24年ぶり」。「あら、できるんだ~」と娘さんも驚いていました。「昔は小麦粉とカレー粉でつくっていたのよ」とおっしゃるお母様に、「そうだったの?知らなかった!」と驚く娘さん。

湯川先生によれば、料理療法のポイントは「一緒に料理をつくりながら思い出話を共有すること」だそうです。その点、誰もが好きで、家庭ごとにさまざまなこだわりのあるカレーはエピソードの宝庫かもしれません。「うちではタマネギはすりおろして入れるんですよ」とおっしゃるのは60代のご夫婦。ご主人が九州に出張したときに食べたカレーがとてもおいしかったので、お店の人につくり方を聞いて、奥様に伝授されたのだそうです。「肉も、牛肉より豚の三枚肉をジュッと焼いて入れるのがおいしい」とご主人。バーベキューや焼肉以外の料理はすべて奥様におまかせだそうですが、カレーに載せる焼き野菜をつくるためにグリル皿に彩りよく整然と野菜を並べるシーンでは、丁寧な仕事ぶりが際立っていました。元設計技師さんだけに「曲がったことが大嫌い」なのだそうです。

写真:娘さんと料理を楽しまれるシーン

新しい調理器具にも挑戦!

カレーの材料を煮込んでいる間に、オーブンレンジで「焼き野菜」をつくります。オーブンレンジの操作に慣れていない方にとっては少し緊張する場面ですが、切った野菜を並べたグリル皿に塩とオリーブオイルをまわしかけ、オーブンレンジに入れてグリルモードにセットしさえすれば、後は機械におまかせで、手軽にヘルシーな焼き野菜が完成。色鮮やかな野菜をカレーにトッピングすることで、ごくオーソドックスなカレーがパッと華やかになるところも、とてもウケていました。
カレーを煮込むのに使ったのはIH調理器。卓上IH調理器は、座ったまま調理ができるので、長い間立っているのがつらい高齢者の方にも向いているようです。
ミキサーを使って「小松菜とバナナのスムージー」もつくりました。機械を扱うのに慣れている男性は、女性よりも、初めてのミキサーも上手に使いこなしていました。

使った調理器具とその様子
写真リスト:包丁使いのシーン、卓上IH調理器を使った料理シーン、ビルトイントリプルワイドIH を使った料理シーン、スチームオーブンレンジを使った料理シーン、炊飯器 を使った料理シーン、ファイバーミキサーを使った料理シーン

一緒につくるからハッピーになれる!

調理を始めてから1時間ちょっとですべてのメニューができあがり、いよいよ試食の時間です。同じ材料でつくったカレーを同じ器によそっても、テーブルごとに野菜の切り方や盛りつけ方が違うのが興味深いところです。そして、どのテーブルも本当に幸せそう。誰かと一緒につくる楽しさ、「おいしいね」と言いながら食べることのよろこびが伝わってくるのです。
調理中、各テーブルを回って参加者の方からお話をうかがっていた湯川先生から、最後にこんな挨拶がありました。

写真:できあがった料理(ビーフカレー、焼き野菜、小松菜とバナナのスムージー)
写真:できあがった料理を前にして、いただきます。

「それぞれのテーブルでにこやかな笑顔で楽しそうに料理されているのを見て、幸せな気持ちになりました。ありがとうございました。
いつも娘さんがつくってくださるので、24年ぶりに料理をされたというお母様が、パパッと包丁を使って、昔のお母様の姿に戻っておられたのが印象的でした。娘さんもビックリされていましたが、やっぱり料理にはそういうところがあって、10年20年やってなくて、『私は何もできないわ』とおっしゃっていても、包丁を持てばパッとできる。料理をしたことがなかったご主人も、体調を壊された奥様のために料理をするようになったら、だんだん上手になっていく。それも料理の楽しみだと思います。

また、一緒に食事をして、『おいしいわ、お母さんの味やわ』と料理をほめることが家族の役割で、お互いがハッピーになれる秘訣だと思います。みなさんも少しずつでいいので一緒に料理をつくる生活を続けていただければなと思います。本当に今日はありがとうございました。おつかれさまでした。」

写真:できあがった料理を食べる参加者

この日、最初は緊張気味だった参加者の方々が、料理を始めると急にいきいきと楽しい様子になっていくのが本当に印象的でした。長い間料理をしていなかった人も「あら、私まだまだできるじゃない」と元気になるし、今までほとんど料理をしていなかった男性も「もっとできる料理を増やしたくなった」と意欲的に。本格中華やタイ料理が得意で、カレーはスパイスからつくるという料理好きの60代の女性も、「今日は娘と一緒に料理ができて本当に楽しかった!次はいつですか。また参加したいわ」とおっしゃっていました。90代の女性と娘さんは、今回の料理教室の参加をきっかけに、なつかしの味の「お好み焼き」をつくる約束をしたそうです。
みなさんも、ぜひご家族で一緒に料理をつくる機会を増やしていただき、料理療法のめざましい効果を実感していただければ幸いです。

使用家電一覧
使用家電一覧リスト:炊飯器、IH卓上調理器、トリプルワイドIH、スチームオーブンレンジ、ファイバーミキサー
今回作ったメニューとレシピ
ビーフカレーのレシピ:材料(4人分):・牛バラ角切肉(250g)・塩、こしょう 少々・サラダ油 大さじ1・しょうが、にんにく 各適量*それぞれみじん切り・玉ねぎ 中1 ½個(300g) ・にんじん ½本(100g)・じゃがいも 中1個(150g)*野菜は乱切り・市販のカレールー(120g)・水 約500ml / 作り方:① 肉と切った野菜を炒める、厚手のなべにバターを熱し、肉、しょうが、にんにく、玉ねぎ、にんじん、じゃがいもを強火で炒める。② 煮込み、①に水を加え沸騰したらあくを取る。材料が柔らかくなるまで弱火〜中火で約10分煮込む。③ ルーを入れてさらに煮込む、いったん火を止め、ルーを割り入れて溶かし、再び弱火でとろみがつくまで約10分煮込む。
ビーフカレーのレシピ:材料(4人分):・たまねぎ 中1個(100g)・パプリカ 小1個(160g)・エリンギ 2本(60g)・ズッキーニ 1本(150g)・かぼちゃ 160g /作り方:① 野菜を切って下ごしらえ、たまねぎ、パプリカは、8等分に切る。エリンギは縦に4等分に切る。ズッキーニは半分の長さに切り、さらに縦に4等分に切る。かぼちゃは、厚さ1cm厚さに切る。② ボールで味付け、ボールに野菜を入れ、オリーブ油、塩、こしょうをして漬け込む。③ オーブンレンジで焼く、グリル皿に野菜を並べ、庫内上段に入れる。手動グリル → 両面焼き → 約13〜16分 に設定して焼く。出来具合を見て加熱不足の場合、2分程度追加加熱する。※このレシピは上記レンジ用です。ご自宅で作られる場合は、お使いの商品の料理本を参考にして、様子を見ながら調理してください。
ビーフカレーのレシピ:材料(4人分):・小松菜 約1½株(35g)・りんご 約¼個(70g)・バナナ 中1本(90g) ・レモン汁 小さじ1・冷水 100ml /作り方:① 野菜を切って下ごしらえ、小松菜は、根に近い硬いところは取り、2〜3cm幅に切る。りんごは皮をむき、2〜3cm角に切る。② ミキサーで撹拌する、①を専用容器に入れ、撹拌する。
湯川夏子(ゆかわなつこ)先生プロフィール
写真:湯川夏子(ゆかわなつこ)先生肖像 写真:湯川夏子(ゆかわなつこ)先生肖像

1993年、奈良女子大学人間文化研究科修了、博士(学術)。
神戸学院女子短期大学講師および助教授を経て、2006年4月より京都教育大学家政科准教授、2017年4月より教授。研究分野は食生活学、調理学。
2003年より「料理療法」の確立をめざし、高齢者施設における実践活動をもとに、認知症高齢者を対象とした料理活動を支援する研究を行う。
14年に管理栄養士の前田佐江子さん、近畿大学講師の明神千穂さん(栄養教育)と共に、編著書『やる気と自信を呼びさます 認知症ケアと予防に役立つ料理療法』
(クリエイツかもがわ)を出版。
料理療法HP https://www.enjoy-cooking.org

編集後記 編集後記

人物イラスト:中尾洋子 パナソニック(株) デザイン戦略室 課長 / 全社UD担当

中尾洋子 パナソニック(株) デザイン戦略室 課長 / 全社UD担当

料理療法を体験してみて感じたのは、皆さん本当に楽しそうだったこと!何かを作る楽しみ、家族や同年代の人と一緒に作業する楽しみ、その料理の思い出やこだわりを話す楽しみ、食べる楽しみなど、料理にはたくさんの楽しみがありました。新しい調理家電を使って、安全に、簡単に、おいしいものが作れることを実感頂けたのも良かったと思います。皆さんも是非、ご家族やお友達と料理してみて下さいね。